A-Stageが2022年12月に発売した「Re・De Hairdry」。ヒットした電気圧力鍋「Re・De Pot」(2020年発売)をはじめとしたウェルネスブランド「Re・De(リデ)」第3弾となるヘアドライヤーで、軽量ながら大風量を実現したことで注目を集めた。
また、国際的なデザイン賞である「iFデザインアワード 2023」金賞に続き、「レッド・ドット・デザイン賞」、「IDEA 2023」のブロンズ賞も受賞し、世界三大デザイン賞を制覇するなど、デザイン性の高さでも評価されている。
Re・De Hairdryの企画・開発にまつわる経緯や、デザイン面のこだわりについて、A-Stage 代表取締役社長の藤岡毅氏に伺った。
新ジャンルへの挑戦でブランド力を強化
A-Stageが2019年から展開する「Re・De」ブランドは「生活の中のあらゆる瞬間で、ユーザーの生活だけでなく人生をもより豊かに、心地よく導いていくこと」をコンセプトに掲げている。電気圧力鍋に続く第2弾製品は電気ケトル「Re・De Kettle」で、これまでは調理家電が続いていた。
調理家電のイメージがついていたRe・Deブランドから理美容分野の製品を発売したことについて、藤岡氏はその狙いについて次のように語った。
「メディアなどで広く取り上げていただいた第1弾の電気圧力鍋も、第2弾の電気ケトルも、レシピを中心としたコミュニケーションを図ることで、ユーザーに手に取ってもらいやすいジャンルだったと思います。(Re・Deブランドは)調理家電のイメージが定着してきましたが、今後の事業展開を考えると、もう一段上のレベルで、より強くブランドを認知していただきたかったんです。
そのためには、体験価値を訴求するブランドイメージを打ち出し、皆さんの心に残るような製品を出したいと考えました。そこで第3弾は、事業的にも伸びしろがあるウェルネス・ヘルスケア分野を狙った製品を作ろうということになりました」(藤岡氏)
ひと言でウェルネス・ヘルスケア分野の家電と言っても、さまざまな選択肢がある。その中でも今回ドライヤーを選択した理由について次のように説明した。
「ブランド第1弾の電気圧力鍋も、今回のドライヤーも、『便利なのに、その価値が世の中で十分には知られていない家電』に該当すると考えています。
いわゆる高級ドライヤーと呼ばれる製品は機能が優れている反面、重くて使いづらい、あるいは機能が複雑といったユーザーの声もありました。弊社としては作り手とユーザーの認識のギャップを埋めるようなものを生み出せたらと思いました。
理美容の家電としては、近年人気と注目度が増している美顔器なども検討しました。ですがユーザー層が限られているため、新ジャンルでの一発目の製品としては、需要も印象もやや弱いかなと。そこで選択したのが、より一般的で大衆的な家電であるドライヤーです」(藤岡氏)
ドライヤーを選んだもうひとつの理由として、藤岡氏自身が以前から感じていた、不満感や課題感もあった。
「僕自身が使っていたドライヤーが古くて、重くて大きく、風の温度も120℃ぐらいあって、髪や頭皮へのダメージも大きかったんです。デザイン性もあまり良くありません。ここ何年かでハイエンドドライヤーの流れが来ていることもあり、新しいチャレンジを仕掛けたいと思いました」(藤岡氏)
Re・Deブランド初のヘアドライヤーとして開発がスタートした「Re・De Hairdry」。コンセプトや仕様を策定する中で、軸となったのは“風”の追求だった。
「着目したのは風です。ドライヤーは風がすべてですから、それをいかに良くするか。風速・風量、温度を最適な状態にするところからスタートしました」と藤岡氏。
Re・De Hairdryは、風の流れを最適化する独自テクノロジー「Airflow Optimization Technology(エアフロー オプティミゼーション テクノロジー)」を採用している。
ドライヤーの筐体断面積の最小化と内部構造の最適化を図ることで、業界トップクラスの風量約3.6m3/分、風速約53m/秒というスペックを実現。風が髪の根元まですぐに届き、熱による負担を最低限に抑えることで、髪へのダメージを防ぎつつ、スピーディーに乾かせる。
最近のドライヤーの傾向として、風量以外にも、風速や風圧もドライヤーの性能を左右する要素として着目されている。藤岡氏は「風速を足し合わせたものが風量になるのでどちらも関係している要素ですが、最初の切り口は風速を最大化するにはどうしたらよいのかを考えることでした」と説明した。
さらに、Re・De Hairdryがドライヤーとしては珍しい「細い筒型」になった理由も次のように語った。
「流体力学を突き詰めていくと、細型の形状がもっとも風速が出やすく、風量を出しやすいとわかってきました。その結果、生み出されたデザインがこの形です。外側の形状だけでなく、風速を出す上で、ドライヤーの内部構造は直線的であるほうが優位です。中身の設計もモーターの威力を最大限に生かすような設計にしています。表面的にデザインだけを整えるといったアプローチでなく、機能性から形を生み出すことを従来から意識しています」(藤岡氏)
大風量や多機能なドライヤーは重量が重くなりがちなのが定説だ。しかし、Re・De Hairdryでは軽いボディ(255g)も実現している。藤岡氏によると、最初から目標値を定めていたわけではなく、「スリムな形状にするために、余計なものを省き、内部構造を最適化した結果、副次的にこの重さになりました」という。
「この形状で余計な物を入れる余地はありません。マイナスイオンを発生させるイオナイザーこそ搭載していますが、それ以外のヘアケア用の機能を入れてしまうと、中の障害物によって風のロスが出てしまいます。
風量・風速への影響はもちろん、デザイン面でも本体が太くなるリスクがあり、極力余計なものを減らしていきました。完成した段階で重量を測ってみたら、必然的に業界最軽量ぐらいの重さになっていました」(藤岡氏)
プロ監修の乾燥モードとスタンドの意味
Re・De Hairdryのもう1つのこだわりは、温度設定にもある。試作段階からヘアメイクアップアーティストの菊池美香氏に試用と監修を依頼。美しい髪に仕上げるために温度と風量を組み合わせた「BASIC 1」「BASIC 2」「GROW」「DESIGN」「STAND」といった5つのモードを搭載する。
「ドライヤーはお子さんも含む家族で共用する家電ですから、いろいろなお客様に対応できるように設計しました。
風量があるに越したことはありませんが、ただ強くするだけではいけません。まず出力を最大まで持っていって、その中でベストなモードや設定を用意する発想で、風の出し方などの微妙なコントロールを検討しました」(藤岡氏)
Re・De Hairdryは、そのたたずまいにも強いこだわりがある。洗面台やドレッサーなど、置いた空間を心地よく整えてくれるデザインを意識している。
5つの送風モードの中に「STAND」が含まれているのもユニーク。これは付属のスタンドに置いた状態で髪を乾かすための専用モードだ。スタンドは手が空いて乾かしやすい利便性もあるが、大切なのは「空間に置かれた状態」と語る。
「ブランドの基本的なコンセプトで、『どうやったら製品を使いたくなるか』といった点を共通して意識しています。例えば、弊社の電気圧力鍋だと、昔ながらの鍋のような2つの持ち手など、ちょっと触ってみたくなるようなデザインがあります。
ドライヤーでは何が手に取るときネックになっているだろう?と考えると、収納時にコードを持ち手あたりにぐるぐる巻いておくのが一般的ですが、次に使うときほどくのが面倒ですし、寝かせて置くのもあまり美しくありません。そういう部分を解決する一つのアイディアとして、スタンドを採用しました」(藤岡氏)
製品が空間に調和するためには、カラー展開も重要だ。Re・De Hairdryでは、ホワイト・ブラックに加え、ヒュッゲグレーというカラーを用意している。Re・Deブランドの電気圧力鍋や電気ケトルでも好評を得ている飽きの来ないカラーで、絶妙な色味にもこだわっていると話す。
また、いずれのカラーも、吸気口やヒンジ、ハンドルのコードとの付け根部分、スタンドの台座など一部のパーツは、カラーや素材感を変えて仕上げた。
「空間になじむかどうかはやはり一番大切なので、少しくすませた、優しい色味を意識しています。例えば白でいうとブランド独自の白の概念があって、真っ白な白ではなくて、少しグレーっぽいニュアンスカラーを用いています。一色だと少し味気なくなってしまいますが、一部パーツの色や素材を変えることでアクセントにしています」(藤岡氏)
成長著しいドライヤー市場に、“使い心地” という新たな付加価値で新規参入した「Re・De Hairdry」。長時間持っても疲れない圧倒的な軽さとシンプルなユーザーインタフェース、インテリア性の高いデザイン性を魅力に感じるユーザーも多いが、業界トップクラスの風速をかなえた密かな実力派でもある。
調理家電での定評に満足せず、理美容ジャンルにも飛び込んだRe・Deブランド。その次の一手にも期待したい。