ドイツ発の電動歯ブラシブランド「Oral-B By Braun」から、2020年秋に発売された「オーラルB iO9 ブラック オニキス」(以下、オーラルB iO)。オーラルB iOではリニアモーターカーと同じ原理を再現した「リニアマグネティックシステム」の採用をはじめ、製品の根幹となる機構・設計から見直し、約20年ぶりのフルモデルチェンジが図られた。
製品のこだわりやデザイン哲学について、日本の発売元でマーケティングを担当する、P&Gジャパンのシニアブランドマネージャー・大亀美桜氏に解説してもらった。
充電台にも工夫をこらし、歯みがき「体験」を向上
2019年のモデルで初めて搭載された「人工知能ブラッシング認知機能」もアップデート。ユーザーが磨いている場所をリアルタイムで認識し、口の中を6分割して磨き残しを通知する機能だったが、オーラルB iOでは口内の区分けを16カ所に細分化。内側・外側のかみ合わせ部分までガイドできるようになった。この機能向上で、ユーザーを正しいブラッシング習慣に導くことを目指したという。
ブラッシング体験を向上させるため、充電器も改良。従来モデルでは12時間だった充電時間が、3時間の急速充電に対応した。それに加えて、構造をわずかに変更。スタンドに置くだけの仕様は従来から引き継ぐが、突起に差し込む方式から、マグネットで固定してそのまま立てる構造になった。大亀氏によれば、「清潔さを保つのも使いやすさにおいて重要な要素で、掃除がしやすくかつエレガントなデザインを目指した」というのが変更の理由だ。
ただし、新しい機構の採用は技術的には乗り越えるべきハードルが少なくなかった。なぜなら、「わずかに傾斜した面でも製品をきちんと立たせておけるように磁力を強くしなければならない一方で、ハンドルを持ち上げたとき充電器がくっついてこないように調整する必要があった」(大亀氏)からだ。充電器の設計変更を成し遂げるまでの試行錯誤について、大亀氏はこう続けた。
「想定していた仕様にするためには、充電器にある程度の重量が必要でした。他方では、可能な限りコンパクトにする必要があり、相反する要素をいかに両立させるかに苦心しました。もちろん、磁力が身体や充電機能に悪影響を与えないよう、安全な範囲の磁力にしなければなりません。充電器の重量と寸法によって磁石の強度を最適化した結果、マグネット式充電器に置いたときの心地よいクリック感とハンドルの安定性、ハンドルを持ち上げたときの充電器の安定性が実現しました」と明かした。
大亀氏は「オーラルB iOは、単なる歯ブラシではありません」と強調する。「スマート押しつけ防止センサーやブラッシングのフィードバックをする笑顔のアイコンといった機能は、iOのブラッシングをさらに良くするためのもの。iOはユーザーとの感情的なつながりを構築しながら、ユーザーが口腔ケアの習慣を改善するようにやる気を起こさせる、相棒のような存在を目指しました」と話す。
多くの人に使われる「美しいデザイン」をめざして
オーラルB iOは、近未来的でありながらも、どこか優しさを感じさせるデザインだ。今回のような大幅なハードウェアの変更や改良を、物理的な制約の多い小さな本体内で行うのは容易ではなかっただろう。
iOシリーズがこれほどまでこだわって開発されたのは、「美しい製品であることは、それだけでもより多くの人に使われるようになる」とのデザイン哲学が貫かれているためだ。全体の外観デザインで意識したのは、「優しく普遍的で人に愛されやすいデザイン」。その他の部分もぬかりなく取り組んだという。
「高い歯垢除去力をいかに実現するか。技術力をアップしていくのはもちろんですが、消費者からのフィードバックを頻繁に採り入れ、歯科専門家の知識も多く採用しています。耐久性も非常に重視している点で、長持ちする品質になるように、細部に至るまでこだわり抜き、ドイツで設計、製造しています。ほかにもグリップの握りやすさや、清潔に保ちやすい素材など、ブラッシング体験を高める上では重要なすべてのファクターに全力投球しています」と、大亀氏は自信をのぞかせる。
最後に大亀氏は、約20年ぶりにフルモデルチェンジされたオーラルB iOの意義を次のように総括した。
「刷新したオーラルB iOは『毎日のブラッシング体験の質を向上させる』という理想のもと、全く新しい駆動方式の採用から、ブラッシングガイドの向上に至るまですべてを一新して、オーラルB史上最高の歯垢除去力を実現しました。さらに毎日のブラッシングを『楽しい体験』とすることにも注力し、手に自然とフィットする形や、ユーザーのパートナーになれるような仕掛け、優しく親しみあるデザインを採用しています。オーラルB iOは我々にとって、すべてをゼロにして再考された、全く新しい電動歯ブラシの「プラットフォーム」なのです」