サンスターが今年4月に発売した「G・U・M PLAY(ガムプレイ)」。歯ブラシにBluetoothと加速度センサーを内蔵したシリコン製のアタッチメントを取り付けることでスマホと接続し、検知したデータをもとにアプリ上でブラッシングの採点やゲームなどが楽しめるというガジェットだ。
古くから存在している身近でアナログな製品をIoT(モノのインターネット)化することにより新たな価値を付与した代表的な例として、「2016年度グッドデザイン賞」をはじめ、「コードアワード2016」のベスト・イノベーション賞などに選出されている。
そんな画期的な本製品が生み出されることになった経緯や狙いについて、商品開発担当者であるサンスターグループ オーラルケアカンパニー 日本ブロックマーケティング部の松富信治氏に話を聞いた。
オーラルケアの向上を「デジタル」で実現
「G・U・M PLAY」の開発には、消費者のオーラルケア全般の質の向上という目標が前提にあったという。1980年代から30年あまり続くオーラルケアブランドとして、歯周病ケアや正しいブラッシングの啓発活動と、ユーザーの新たなブランド体験の提供をデジタルテクノロジーで何かできないだろうかと考え、たどり着いたのが本製品とのことだ。
松富氏によると、このプロジェクトが始まったのは2014年。クリエイティブ・ラボ「PARTY」と共同で、オーラルケアに対する意識が上がる新しい体験の提供を目指してアイデアを出し合った。
「歯科業界で推奨している歯磨きのブラッシング時間は3分以上ですが、実際に調査をしてみると、多くの人が3分以下であることがわかりました。正しいブラッシングの習慣化や、磨き残しというのが長年の課題。そのような課題に関して、デジタルを活用しながら、これをどうにかできないだろうかということでプロジェクトが立ち上がりました」(松富氏)
電動歯ブラシではなく、「手磨き+アタッチメント」にした理由
時代のトレンドに合わせて、デジタル化を意識してプロジェクトがスタートしたというG・U・M PLAYだが、実際に商品化されたのはマニュアルの歯ブラシにアドオンするかたちのアタッチメントだ。その理由を松富氏は次のように明かした。
「デジタル化するなら、はじめから電化されている電動歯ブラシのほうが簡単なのですが、市場全体で言うと85%が手磨き派なんです。電動歯ブラシはどうしても価格が高くなってしまいますし、広く普及することを考え、このようなかたちになりました」
また、歯ブラシは同社のものを使う想定だがあくまで推奨となっており、シリコン製の伸びる素材を使っているため、本体の穴よりも大きければどんなブラシでも使用できる。「消費者それぞれにお気に入りの歯ブラシがあると思いますので、広く使えるようなかたちを採用しました」と松富氏。消費者の利便を第一に考えた仕様を語った。
アタッチメントは歯ブラシの持ち手の下側を挿し込んで装着。カバーは伸縮性のあるシリコンのゴムでできているため、穴の大きさより大きければどんな歯ブラシにも取り付けられる。防水性能も備え、松富氏によれば「水深1メートルに沈めて、24時間経過しても浸水がないというレベルで評価しています。現在の形は、ほとんど完全防水に近い仕様ですね」という |
さらに、ハードウェアとしてのアタッチメントの開発においては「常にデザインと機能性のせめぎ合いだった」と振り返る。
「G・U・M PLAYは、普通の歯ブラシで使えるようにシリコンゴムを採用しているのですが、高いレベルでの防水性をクリアするというのが大きな壁のひとつでした。本体をコンパクトにしながら水の浸入を抑え、歯ブラシが外れないようにするため、数十回やり直しをしました。なおかつG・U・M PLAYは歯ブラシ立てとしても使えるものなので、持ち手の長さやブラシの重さ、重量など異なるさまざまな歯ブラシで共通して使うことができる上、洗面所に置いたときに違和感のないデザインなど機能美をいかに追求するかで、ミリ単位でプロトタイプを多数つくって検討しました」
次回は、「G・U・M PLAY」のソフト面であるゲームなど、歯磨きを義務的な行為から楽しい遊びに変えるための試行錯誤について語っていただいた。こうご期待。