累計5000億円を運用してきた元ファンド・マネージャーが、その膨大な知識と経験を生かし、これまでになかったマネー小説を、Web上で執筆します。


「5秒前、4、3、…、…」スイス国営放送、第2スタジオに柏木真男はいた。夜のニュースで流されるインタビューの収録の為だった。女性インタビュアーがアップになった。

「今晩は。経済・イブニング・インタビューの時間です。今夜は世界的なヘッジ・ファンド『エンタープライズ・K』のCEO、マサオ・カシワギ氏をお招きしました。ミスター・カシワギ、お忙しい中、ようこそご出演下さいました」

「お招きいただき、光栄です」

TV画面の下には柏木の経歴がテロップで流されていた。日本の都市銀行を振り出しに、米国の資産運用会社でのファンド・マネージャーとしての活躍、独立しヘッジ・ファンドを立ち上げてからの成功……柏木が運用する資産の額は5000億円を超えると言われていることなどが紹介されていった。

「早速ですが、世界経済についてお伺いしたいと思います。まず、今から1年乃至3年の短期の見通しですが、どのようにお考えでしょうか?」柏木は少し暗い表情になった。

(イラスト : ミサイ彩生)

執筆者プロフィール : 波多野 聖(はたの しょう)

本名、藤原敬之。一橋大学法学部卒業後、農林中央金庫に入庫、国内及び米国株式を運用。野村投資顧問(現野村アセット・マネジメント)に移り米国・英国年金の日本株式運用を担当。クレディ・スイス信託銀行で、日本株式運用部のマネージング・ディレクターを経て、日興アセット・マネジメント社内に、業界史上初の個人名を冠した「藤原オフィス」で運用を担当。その後独立。累計5000億円を運用してきた。デビュー小説『銭の戦争~魔王誕生~』(角川春樹事務所・ハルキ文庫)を第2巻まで刊行している。