前回は2019年の資金調達環境について考察いたしました。今回は令和2年度(2020年度)の制度融資について情報を整理します。

今年の制度融資の代表例は、経済産業省のパンフレットで紹介されている、日本政策金融公庫の新型コロナウイルス感染症特別貸付をはじめとした国主導の諸制度です。国の制度について解説している記事は多いので本稿では扱わず、報道されることが少ない地方自治体独自の新型コロナ対応制度融資の内容を紹介しながら、契約条件の特徴について考えます。

例として東京23区の新型コロナ対応制度融資について、2020年9月24日時点で確認できる情報を表にまとめました。市区町村コード順に並べております。

  • 令和2年度(2020年度)の制度融資

    表(1) 資金使途・融資額・融資期間・据置期間の比較

国の新型コロナ対応制度融資では融資期間が10年もしくは15年まで、据置期間が5年までのプランが用意されているので、地方自治体独自の新型コロナ対応制度融資は相対的に融資期間と据置期間が短いです。融資金額についても、国の制度では億単位の限度額が設定されているものがありますが、地方自治体独自の制度では500万円から数千万円の範囲となっています。

  • 表(2) 金利・利子補給・受付期間

先述の通り、金額面と期間面では国の制度の方が地方自治体独自の制度よりも優れているように見えますが、金利面を検討すると地方自治体独自の制度の方が国の制度よりも優れているケースも出てまいります。ほとんどの自治体で利子補給の期間に制限を設けていないため、利子補給を3年までとする国の制度よりも長く支援を受けることができます。

表には記載しておりませんが信用保証料も全額区が負担するパターンが大半なので、1,000万円前後の調達金額であれば、国の制度融資よりも利子補給の面で有利な地方自治体が多いと言えるでしょう。

申し込みの受付期限については注意が必要で、延長される可能性もありますが〆切が迫っている自治体があります。今からでは制度の利用が間に合わないケースがありそうで、情報発信が遅くなり申し訳なく思います。将来再び信用不安が訪れたときには、国だけではなく地方自治体の制度融資の情報も集めることが望ましいです。

【参照した資料のリスト】

令和2年度(2020年度)の制度融資に関する説明は以上です。次回は融資の概要(2)と題しまして、保証と担保について第2回の内容を補足いたします。