前回は社債について説明いたしました。今回は第4回で紹介した制度融資について、令和元年度(2019年度)に利用可能なものを起業家向けのプランを中心にピックアップして紹介します。
税理士・公認会計士をはじめとした認定経営革新等支援機関から勧められる機会が多い日本政策金融公庫の各種制度については、拙著『~事業拡大・設備投資・運転資金の着実な調達~ベンチャー企業が融資を受けるための法務と実務』にまとめておりますので本稿では割愛します。
制度融資は地方自治体(公官庁)と信用保証協会と金融機関の三者が協力する形態をとります。取扱金融機関は、各自治体内に所在する銀行・信用金庫・信用組合・商工組合中央金庫の本支店になります。融資の取引条件はあらかじめ定められており、自治体毎に差異があります。実例を見ていきましょう。
都道府県単位の制度融資
関東圏の制度融資について、2019年11月時点で確認できる情報を表にまとめました。順不同です。特徴としては3,000万円から5,000万円の金額帯のプランが存在し、個人では借りにくい金額の制度が準備されていることです。
【参照した資料のリスト】
市区町村単位の制度融資
東京都内の自治体の制度融資について、2019年11月時点で確認できる情報をすべてではないですが列挙します。都道府県単位の制度融資と比較した場合、金額は半分程度と小さくなる代わりに利子補給があり、調達コストを軽減できることがポイントです。
【参照した資料のリスト】
・千代田区役所Webサイト内「千代田区商工融資あっせん制度資金一覧表」
・渋谷区役所Webサイト内「区の中小企業事業資金融資あっせん制度」
令和元年度の制度融資についての説明は以上です。次回は金融機関側の貸倒引当金について解説します。
執筆者プロフィール:千保 理(せんぼ ただし)
株式会社情報基盤開発CFO(最高財務責任者)
ロンドン日本人学校中学部、東京学芸大学教育学部附属高等学校、東京大学経済学部経済学科を経て、東京大学大学院経済学研究科修士課程企業・市場専攻修了。専門は企業金融(コーポレート・ファイナンス)。生命保険会社のシステム子会社にて勤務した後、東京大学発IT系ベンチャー企業である株式会社情報基盤開発にCFOとして参画。財務と広報を兼務し、融資を受けた金融機関向けに経営状況を伝えるデットIR(Investor Relations)と、報道機関を介して社会全体へ情報発信するPR(Public Relations)を担う。Microsoft Innovation Award 2015にて、株式会社情報基盤開発のデータ入力業務支援ソフトウェアAltPaperが優秀賞を受賞した際のプレゼンター。未上場企業の融資による資金調達を得意としており、弥生株式会社やベンチャーキャピタルが主催する起業家向けの財務経理セミナーの講師を務めている。著書(共著)に千保理・滝琢磨・辻岡将基『~事業拡大・設備投資・運転資金の着実な調達~ベンチャー企業が融資を受けるための法務と実務』(第一法規、2019)がある。