朝青龍問題も、本人のモンゴル帰国と共にやや沈静化した感があります。各ワイドショーは「横綱は部屋に籠もり、テレビを見ているだけで、誰の問いかけにも答えず何もしない」など、苦悩する横綱の姿を、あたかもダメ人間のごとく報道していました。立場こそ違いますが、このコラムの準備をしている時の僕の姿も、朝青龍とまったく同じでした。でも、誰に報道される心配もないので、変わらぬスタンスでドラマDVDを観まくります。
意外と早く帰って来ました
『帰って来た時効警察』を、まとめて観ました。前のシリーズから1年振りで早くも続編 登場です。このドラマ、まるで舞台やバラエティのコントのような、大げさなアクションとセリフ廻しが気になります。初めて『古畑任三郎』を観た時の違和感に似ています。バラエティ番組の放送作家としても有名な映画監督の三木聡。舞台演出で活躍しているケラリーノ・サンドロヴィッチ。こういった一線級のクリエーターたちが、脚本・監督でこのドラマに関わっていると知り納得しました。
ただ、同時間帯の『TRICK』でも見られた、一部の人しか笑えないくだらないギャグや設定なども満載なので、受け付けない人も多いかと思います。僕自身、まったく働かないでおしゃべりしてるだけの時効管理課のメンバーや、時効で逃れた殺人犯たちに対して、警官として何の感情も持たないオダギリジョーと麻生久美子の姿に疑問を感じてしまいました。でも、そう感じる事自体が、「お前、この斬新なお洒落さがわかってないな。こういう警察や事件の描き方が、きてるんだよ」などとトップクリエーターたちに断罪されているような気分です。
「どんなドラマなの?」と好きな女の子に訊かれたら、「うん。斬新でお洒落だよ」と答えるのが模範解答かもしれません。
帰ってきた時効警察 DVD-BOX |
毎回、色々と教訓があります
深夜枠ではないのですが、不思議なテイストのドラマをもう1本。『セクシーボイス アンド ロボ』を観ました。コミックが原作のスパイコメディという事でしたが、観てみるとまるで別物でした。七色の声色を自在に操り、超人的な聴覚を持つキュートな中学生ニコ(セクシーボイス)とロボットオタクのサラリーマン須藤威一郎(ロボ)が、次々と変な事件に巻き込まれて行くというお話です。でも、スパイという要素はとって付けただけという感じで、むしろ、「この世界でどう他人と関わっていくか」みたいな真面目な事が、事件に関わる中学生ニコの鋭い視点から語られます。くだらないギャグや、意味のないシーンも満載ですが、全編を通して「関わりないはずの他者へ対する優しさ」が溢れていて、毎回泣かせてくれます。
ただ、松山ケンイチ演じるロボが、『電車男』以来、ドラマ界では定番化している「オタクなんだけど、心優しくて超いいヤツ」というキャラクターに留まっていたのが残念です。あと、まったくジャンルは違うのに、なんかニコのセリフやドラマ全体の雰囲気が『すいか』に似ているなあと漠然と感じていたのですが、同じ木皿泉が脚本を手がけていました。
『すいか』のロケ地は世田谷区の三軒茶屋が多かったのですが、この作品ではやたらと杉並区の高円寺や阿佐ヶ谷が登場します。地元なのにロケ現場に遭遇しなかったのは、部屋でひたすらドラマDVDを観ていたためと思われます。残念です。
ちなみに、今回のDVD-BOXにはテレビ未放送のエピソードが1話収録されています。こういうのは、無駄だったり、よく意味が分からない映像特典とかよりも数倍嬉しいです。すべてのドラマDVD-BOXに未放送エピソードを追加して欲しいぐらいです。
セクシーボイス アンド ロボ DVD-BOX |
完璧な猿まわしを披露した坂口憲二の役者魂
誰もが知っている猿まわしの太郎と、反省ザル次郎の友情をドラマ化した『太郎と次郎』を観ました。太郎を演じる坂口憲二は、誰もが認めるイケメンなので、周囲の人々の「あいつはまるでサルじゃ」という発言にいまいち賛同できません。「あいつはもろにイケメンじゃ」では成立しないというのも、勿論わかるのですが……。むしろ、太郎と次郎のマネージャー役を熱演した次長課長の河本のほうが、太郎役にぴったりだったような気もします。
スターになり天狗になった太郎が、挫折を経験し、心を入れ替えて再起するという定番の感動物語も、人間とサルの交流混じりで語られると、かなりシュールです。大怪我をした二代目次郎が病院に担ぎこまれ、廊下で泣きながら太郎が待つというシーンも、医療物のような濃い演出でした。サルの手術中を示す赤いランプまで灯ってますし。
そういった気になるシーンもありますが、坂口憲二の猿まわしのシーンは完璧です。現実の太郎と次郎が身に着けた猿まわし芸のほとんどを、坂口憲二がちゃんと再現しています。これはかなりのトレーニングが必要なはずで、彼の役者魂を感じました。サーフィンだけでなく、猿まわしも習得した坂口憲二の今後の動向が気になります。
太郎と次郎 反省ザルと僕の夢 完全版 |
ウルトラマンの全てを短時間で学べます!
猿まわしの習得には時間がかかりますが、ウルトラマンの歴史なら短時間で学べるかも! そんな気持ちで、『ウルトラマン・ヒストリー 銀の章・赤の章』を見ました。この2本で生誕40周年を迎えたウルトラマンの歴史の全てが分かる、便利な作品です。
『赤の章』のほうでは、『ウルトラQ』から『ウルトラマンゼアス』までの作品が紹介されています。ウルトラマンの事なら詳しいつもりでしたが、『ウルトラマンUSA』や『ザ・ウルトラマン』といったアニメ作品まではノーチェックでした。『ウルトラマンUSA』の主人公の名前が、ウルトラマンスコットだったという事実には、かなりの衝撃を受けました。ど真ん中にアメリカンな感じです。その視点だと、ウルトラマンタロウも凄い名前ですよね……。
『銀の章』のほうでは『ウルトラマンティガ』から『ウルトラマンメビウス』までの、平成のウルトラマン作品が紹介されています。どんどん、ウルトラマンの配色が派手になってきていますが、やはり時代の流れなのでしょうか? ウルトラマンネクサスなんて、羽根のようなモノまで付いた姿に進化してましたし。
今回の作品は各作品のウルトラマンを中心とした構成でしたが、是非、怪獣やメカ、登場人物をクローズアップした作品も観てみたいと思いました。
ウルトラマンシリーズ誕生40周年記念DVD ウルトラマンヒストリー(赤の章・銀の章) |
舞台が大きく変わっても鬼嫁ぶりは変わりません
最初に紹介した『時効警察』がまったく前作と同じだったのに対して、大きく設定を変えたのが『鬼嫁日記 ~いい湯だな』です。このタイトルだけで加藤茶の登場が予想されましたが、その通り主人公の父親役で登場してました。
前作は人気ブログからのドラマ化でしたが、同局の『アットホーム・ダッド』と世界観が共通だったり、オリジナル要素が満載。鬼嫁というキーワードを残しつつ、原作とは別物の世界を構築していました。
本作ではさらに大きな変化が! 物語の舞台も、新興住宅地から主人公・一馬の実家の銭湯のある下町となり、加藤茶以外にも、エビちゃん演じるカリスマモデル、近所の尼僧、美人区議会議員などが新たに登場。もう、原作とも前作とも違い過ぎて、逆に爽快です。この変化に前作を観た人は驚くかもしれません。でも、鬼嫁ブログを書いた本人が一番驚いているのではないでしょうか。「え、ウチの鬼嫁、カリスマモデルと知り合いなの?」みたいな。
鬼嫁日記 いい湯だな DVD-BOX |
本当に変わったドラマやあり得ない設定のドラマが増えていますが、最近は逆にそれが当たり前に感じられます。感覚が麻痺しているのでしょうか? ドラマDVDを10時間とか普通に観続けて「あれ、何か眼が痛い。どうして?」などと感じてしまう僕も、感覚が麻痺しているのかもしれません。