「職場の飲み会が嫌だ」という気持ち、とてもよくわかります。会社員をしていたころ、僕も職場の飲み会が苦手でした。飲み会は本来であれば「余暇活動」だと思うのですが、日本の職場の飲み会に関して言えば「仕事の一種」だとしか思えません。上司や先輩にお酌をしながら彼らの武勇伝・仕事観を延々と聞かされるよりも、早く家に帰ってゆっくりしたいと思うのは当然の感覚だと言えるのではないでしょうか。

僕は別に、職場で開催されるあらゆる飲み会に「意味がない」と言いたいわけではありません。メンバー次第では、とても楽しく意義のある会になることもあるでしょう。大事なのは、出欠の自由が確保されていることです。気の進まない飲み会への参加をうまく断るテクニックを身に付ければ、会社での働きやすさは格段に増すことになります。

相手に応じた断り方を考える

飲み会を欠席する際には、できるだけカドが立たないように断りたいと誰もが思うはずです。

「別の約束がある」「体調が悪い」「仕事が忙しい」など、断り方はいくつか考えられますが、大事なことは相手に応じてこれらの理由をきちんと使い分けることです。例えば、誘ってきた相手が自分の上司である場合「仕事が忙しい」という断り方はあまりうまい断り方ではありません。上司には、部下の仕事をストップさせる権限があります。上司に「いいよいいよ、その仕事は明日で! それよりも飲みに行くぞ!」と言われてしまったら、もはや「仕事の忙しさ」を理由にして断ることはできなくなります。

逆に、誘ってきた相手が上司ではなくただの同僚だったとすれば、「仕事が忙しい」というのはとてもよい断りの理由になるでしょう。

「今ちょっと仕事が立て込んでいてすぐには行けないけど、もし行けそうだったらあとで連絡するよ」

といった感じで断れば、「つきあいの悪いやつ」だとはまず思われません。

時には「つきあいの悪さ」をアピールすることも重要

もっとも、「つきあいの悪いやつ」だと思われることは必ずしもマイナスではありません。職場の飲み会が苦手なら、むしろ積極的に「つきあいの悪いやつ」になるのもひとつの戦略です。

飲み会の誘いを断り続けていると、いつしか誘われること自体が少なくなってきます。これはある意味では「好都合」です。最初から誘われないのであれば、どんな断り方をしようかと悩む必要すらありません。会社員をしていた頃、僕は率先してこの「飲み会に行かないキャラ」になるように心がけていました。

もしかしたら、このような「割り切り」をすることに不安を感じる人がいるかもしれませんが、僕自身の経験では飲み会に参加しないことで業務に差し障りがでたことはありません。「ノミニケーション」なんて時代錯誤な言葉を使って飲み会の有用性を説く人がいますが、飲み会はあくまで飲み会に過ぎず、それ以上に大事なのは業務時間内にしっかりとコミュニケーションを取ることです。それさえできていれば、別に飲み会に参加しなくても仕事に悪影響はありません。

どうしても飲み会に参加しなくてはいけない時は

会社によっては、どうしても飲み会に参加しなくてはいけない時があるかもしれません。「忘年会」や「新年会」のような飲み会は全員出席が暗黙の前提になっていて、断ることができないという場合もあるでしょう。

こういう「全員出席」を強制する文化自体いかがなものかという気持ちはありますが、どうしても出なくてはならないのであれば、「どの席に座るか」だけは気をつけたいところです。お酒が入ると説教モードになってしまう人や、無理に他人にお酒を飲ませる人の近くには絶対に座ってはいけません。できるだけ平和な席に着けるように、全神経を集中させましょう。ハズレの席に座ってしまった場合は、一度トイレに行くなどしてそのまま他の席に移動してしまうというのもひとつのテクニックです。

また、帰りの振る舞いも重要です。ボーっとしていると、そのまま巻き込まれて二次会に行かざるをえなくなる場合があります。一次会が終わったら、そのまま直帰しそうな人の近くをキープするようにしましょう。ほとんどの人が二次会に行くので帰りづらいというのであれば、一次会が終わった時点で(一丁締めなどには参加せず)こっそり消えてしまうという方法もあります。帰り際に突然いなくなったとしても、それを詮索するような人はまずいません。

飲み会に行くにせよ行かないにせよ、大事なことは主体的に行動することです。場の空気に流され、そのせいであとで嫌な気持ちになるのだけは避けなければいけません。


日野瑛太郎
ブロガー、ソフトウェアエンジニア。経営者と従業員の両方を経験したことで日本の労働の矛盾に気づき、「脱社畜ブログ」を開設。現在も日本人の働き方に関する意見を発信し続けている。著書に『脱社畜の働き方』(技術評論社)、『あ、「やりがい」とかいらないんで、とりあえず残業代ください。』(東洋経済新報社)がある。

(タイトルイラスト:womi)

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