FacebookなどのSNSの普及は、僕たちのコミュニケーションのあり方を大きく変えました。SNSがなければおそらく知ることもなかった友人の近況が、毎晩のようにタイムラインには流れてきます。「◯◯さんが昨日友人と焼き肉に行った」とか「同僚の××さんが通販で本棚を買った」なんていう(ホンネを言うと、どうでもいい)情報は、SNSが普及する以前だったらまず目にすることもなかったでしょう。SNSは、ある意味では、僕たちが他人の存在を意識する機会を増やしたとも言えそうです。
会社の人とSNSでつながっている場合、どうするのか
SNSの普及によって便利なことが増えたと同時に、いろいろと気を使わなければならないことも増えました。他人がしてくれたコメントにどう返せばいいか悩んだり、苦手な人から友達申請が来て承認すべきかどうか困ってしまうなど、SNSをやっていると「疲れる」のも事実です。こういった「SNS疲れ」のせいで、結局はSNSをやめてしまう人も少なくないと聞きます。
特に、プライベートの友人とではなく、会社の人とSNSでつながっている場合にどのようにふるまえばよいのかは非常に難しい問題です。最初からつながらないで済むならそれが一番いいのですが、つながりたくない相手から申請が来てしまって頭を抱えたという人も少なくないでしょう。今やSNSは、会社内での人間関係にまで影響を与えうるツールになってしまっています。
SNSがつくる人物イメージはバカにできない
本来であれば、SNSから伝わってくる人物イメージは、実際の人物のほんの一部分を反映したものでしかありません。SNS上で活発な人が必ずしも現実で活発な人だとは限りませんし、その逆もまたしかりです。マイナビニュースの「気になるひと」という連載で、過去に「普段はおとなしいタイプなのに、SNSでは人が変わったような同僚」が取り上げられたことがありますが、このようにSNSと現実とで人物イメージが一致しないケースは割とよく見かけます。
もっとも、多くの人はその差異をあまり念頭には置かず、「SNSでつくられた人物イメージ」をそのまま「その人の現実での人物イメージ」に結びつけます。特に、職場の同僚のような実際に関わる機会が限定されている相手の場合、SNSでつくられた人物イメージがほとんどそのままその人の人物イメージになります。それゆえ、SNS上でヘンなイメージが形成されてしまうと、職場でもそのイメージどおりに扱われてしまいます。
特に、SNSの投稿がきっかけで「あの人は仕事が大好きなんだろうなぁ」とか、「あの人は趣味よりも仕事を優先する人なんだろうなぁ」というイメージがつくられてしまうと最悪です。これは言うなれば「社畜キャラ」と周囲から認定されたのと同じです。このような社畜キャラ認定を受けると、職場でもそのイメージどおりの働き方を期待され、いつしか本当の社畜になってしまいます。
「社畜」と思われないためにSNSに書くべきではないこと
「社畜キャラ」だと思われないためにも、基本的にSNSには仕事のことは書かないほうがよいでしょう。特に「今日も残業だ」「今日は休日出勤だ」と言ったような「普通の人よりも働いているアピール」をSNSでやるのはやめるべきです。こういった「社畜自慢」的な投稿は、ただちにあなたを社畜キャラに仕立て上げます。
また、たまに自社の広報アカウントが出すプレスリリースを積極的にシェアしている人を見ることがありますが、これもやらないほうがいいでしょう。SNSはあくまでプライベートのツールです。それなのに仕事の広報活動のようなことをしていると、「この人は、本当に会社が好きなんだなぁ」と思われかねません。
逆に、会社にまったく関係のない自分の趣味に関するニュースや週末の活動をシェアするのは、社畜キャラを脱するためには効果的です。「この人は会社以外に自分の世界を持っている人なんだな」という印象を周囲に与えることができれば、「仕事だけの人」といった社畜キャラから遠ざかることができます。
時にはつながらない勇気も必要
また、SNSでつくられる人物イメージの話以前に、そもそもつながるべきではない相手も存在します。取引先や上司とつながってしまって後悔するぐらいだったら、後悔する前に「つながらない勇気」を発揮することも必要です。
つながりたくない相手から申請が来てしまったら、とりあえず保留にしてそのままうやむやになるまで放置するのがおすすめです。それでもしつこく承認を迫られたら「プライベート専用なんで」と言ってきっぱり断ることも時には必要かもしれません。
SNSは、あくまでコミュニケーションを便利にするための道具です。道具に振り回されないように、上手に活用したいものです。
日野瑛太郎
ブロガー、ソフトウェアエンジニア。経営者と従業員の両方を経験したことで日本の労働の矛盾に気づき、「脱社畜ブログ」を開設。現在も日本人の働き方に関する意見を発信し続けている。著書に『脱社畜の働き方』(技術評論社)、『あ、「やりがい」とかいらないんで、とりあえず残業代ください。』(東洋経済新報社)がある。
(タイトルイラスト:womi)
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