近年注目が高まる「ダイバーシティ&インクルージョン」。この言葉を耳にする機会は増えてきているが、実際にどのような意味で、企業では取り組みがされているのだろうか。

本稿では、ファッション通販サイト「ZOZOTOWN」の運営などを行うZOZOでダイバーシティ推進の担当を務めている林田常平氏に、「ダイバーシティ&インクルージョン」について伺っていく。

みなさんこんにちは!(見る人によっては「おはようございます」かもしれないですし、「こんばんは」かもしれないですが……)

先日公開された本連載第1稿について、多くの方から反響をいただいて、とても嬉しい気持ちと「もっと学びになるコンテンツを用意しなければ……!」というありがたいプレッシャーの狭間に立っている今日この頃、みなさまはいかがお過ごしでしょうか?

改めまして、以前申し上げました自己紹介を簡単にもう一度、私はZOZOTOWNやWEARなどを運営する株式会社ZOZOで働いている林田常平(はやしだ つねひら)と申します。下の名前が武士のように渋いので、「おつね」と読んでいただけると幸いです。

「ジェンダー」って結局なんなの?

今回は何をメインテーマにしようかなと考えていた時に、前回の記事を読んだ同僚から「ジェンダーなどの言葉がいまいち理解できていないから、解説してほしい!」と相談があったので、早速ネタにさせてもらって、今回のテーマにしてみようと思います。

「ジェンダー(Gender)」という言葉についてお話しする時には、「セックス(Sex)」という言葉もセットで押さえておいた方が理解しやすいと思います。「どちらの言葉も、どシンプルに『性』という意味である!(Q.E.D)」といわれたら確かにその通りでぐうの音も出なくなってしまいますが……

少し詳しくお話しさせていただくと、「セックス」という言葉は、パスポートなどにも記載されているように生物学的な意味での「性」を表す言葉、つまりは「オス・メス」のように身体的特徴として性差をするための言葉として多く使用されています。

それに対して「ジェンダー」はより文化的・社会的な意味での「性」を表す言葉として多く使用されています。つまり、「セックス」は先天的な性・性差、「ジェンダー」は後天的な性・性差を表す言葉として、広く使用されています。

しかし、現在はジェンダーとセックスは分断されたものではなく、「身体的特徴によって、男・女というたった2つのカテゴリに分けられることはおかしい!」という考え方が広まっています。性には女性と男性だけでない多様な種類があり、それは生殖器や骨格、ひげ、身長などの身体的な特徴だけに囚われるものではありません。身体的特徴がどうであるかよりも、「本人がどう思うか」「本人が快適なのはどうあることなのか」を重視する考え方に徐々に変わりつつあります。

このようにジェンダーやセックスの概念は日々変わりゆくものです。自分の知識や経験だけで、自分の知っている「性」に当てはめて考えるのではなく、相手の話に耳を傾け勝手に判断しないことが、ダイバーシティのある社会に向けての第一歩なのかもしれません。

……と真面目に語ってしまうと、「なんだか難しい!」と思われてしまいそうですが、頭の片隅に置いておいてもらえると嬉しく思います。

  • 「男の子」の定義がまだそんなに広くなかった子供時代、ランドセルの選択肢は黒か紺色でその他の色を考えるという発想自体が自分にも周りにもなかった

「らしさ」ってどうして生まれるの?

さて、後天的な性……? と思われた方々、これについては、皆さんも一度は見聞きしたことがあるであろう「男らしさ・女らしさ」という言葉を思い出していただくと分かりやすいかもしれません。

例えば「オスらしさ・メスらしさ」という言葉は、あまりなじみがないと思います。これは前述の通り身体的特徴を表す特性であり、育むことのできない先天性のものであることから「らしさ」という言葉がマッチしにくくなっています。

反対に「男らしさ・女らしさ」は、生まれた後に、その先天性の身体的特徴を見て「教育」や「しつけ」「風習」などによって形成・強化されていく後天性の特性です。分かりやすい例でいうと、「男の子だからスカートではなくズボンを与える」「女の子だから青じゃなくピンクのものを与える」といったようなことです。その人の身体的特徴を元に周りがどう接するかを決定していくことで「らしさ」という言葉のもと、後天的に育まれていきます。

画一された「らしさ」から「その人らしさ」を育む社会へ

現代ではこのような、主に幼少期から思春期の経験をもとに育まれてきた「らしさ」などの考え方が問題視されることが多くなってきており、多くの先進国では男らしさ・女らしさではなく「その人らしさ」、つまり「個性」を育もうという考え方や姿勢が広まってきています。

  • 自分なりの「らしさ」を見つけたことでファッションや髪型などを、より自由に楽しめるようになりました!

その結果として、少しずつではありますが、男女の性別による格差を見直そうとする動きが活発になってきており、日本でも男女共同参画社会基本法をベースに、女性の社会進出率や、企業における男性の育児休暇取得率も徐々に上がってきています。

しかし、世界にはまだ、就学率、就職率、識字率などに男女で大きな差があるなど性別によって受けられる教育や雇用機会が大きく異なっている国が実際に存在しているという現実もあります。

日本においても「らしさ」の見直しのもと徐々にそうした差異は改善されており、例えば女性活躍推進法のもと「女性の管理職(課長相当職以上)を30%以上とする」などの目標値が定められていますが、2021年段階でこの比率をクリアしている企業は僅か8.9%(※)と未達であったり、男性の育児休暇取得率13%という政府の定める目標値に関しても未達であったりとまだまだ「らしさ」に関しての課題があるようにも感じています。※引用元:帝国データバンク 女性登用に対する企業の意識調査(2021年)

まとめ

今回は「ジェンダー」という言葉の簡単な解説と共に「らしさ」について書かせていただきました。

なんとなくニュアンスは掴んでいるけど説明ができない、似た言葉が多すぎて使い方や理解があっているのか分からないというテーマだと思うので、今後も「この言葉って何だっけ……??」と困ったときなどは、私のように積極的に発信している人に聞いてみるのもいいんじゃないかな? って思います!私自身もカタカナ名称が多すぎて、以前は良く混乱していました……(笑)

まだまだ連載は続きますので、もし今後聞いてみたいお話や「こんなテーマも読んでみたい~!」といったご要望がありましたら、お気軽にTwitterのDMからお問い合わせくださいませー!(著者プロフィールにTwitter IDを載せてますので、そちらからどうぞー!)

それではまた次回、日々のなんでもない時間のお供にでもご一読いただければ幸いです!