投資の初心者が知っておくべきこと、勘違いしやすいことを、できるだけ平易に解説しようと思います。今回は9月18日に行われたFOMC(連邦準備制度理事会)も絡めながら、アメリカのFOMCについて取り上げます。
アメリカの金融政策については、第28回「アメリカの金融政策を理解する」で仕組みを解説しました。また、第29回「アメリカの金融政策は利下げに転じるか」で当時の最新情勢として中央銀行であるFRB(連邦準備制度理事会)がそれまでの利上げから利下げへと方向転換する可能性を指摘しました。
実際、FRBは今年7月31日に利下げに転じ、さらに9月18日に追加利下げを実施しました。この利下げを決定したのがFOMC(連邦公開市場委員会)です。FOMCは、アメリカの金融当局のスタンスを知るために金融市場が最も注目するイベントの1つです。そこでFOMCについて詳しく解説しましょう。
FOMCの結果判明
FOMCは定例のものが約1カ月半おきに年8回開催。通常、火・水の2日間にわたって行われ、2日目の午後2時に声明文の形で結果が発表されます。アメリカが夏時間の場合は日本時間の翌日午前3時に、冬時間の場合は翌日午前4時に結果が判明します。そして、その30分後から議長(現在はパウエル氏)が記者会見を行って、決定の経緯や背景、今後について追加説明を行います。
「参加者」と「メンバー」
FOMCには、議長や副議長を含むワシントン本部の7人の理事(現在空席2)と地区連銀の総裁全12人の19人が参加します。そして、7人の理事(同上)と、12人の地区連銀総裁のうちニューヨーク連銀総裁と、毎年輪番で決まる4人の計12人(現在10人)が投票権を持って金融政策を決定します。後述する議事録では、参加者全員を「参加者」、投票権を持つ参加者を「メンバー」として区別しています。
9月18日に行われたFOMCでは0.25%の利下げが決定されました。投票結果は7対3で、2名が政策金利の据え置きを望んで反対、1名が0.50%の大幅な利下げを望んで反対しました。
議事録の公表は3週間後
通常、投票結果は全会一致であるか、せいぜい1、2名の反対が出る程度です。なぜなら、ある程度のコンセンサスができてから投票しているためです。そのため9月18日の投票結果(反対票3)はレアケースと言えるでしょう。FOMCでの議論が相当に白熱したのではないかと想像されます。投票メンバーだけでなく、参加者がどんな意見を持っており、投票に至るまでにどんな議論がなされたかを知るためには、3週間後に発表されるFOMCの議事録をチェックする必要があります(ただし、人物を特定することはできません)。
ドット・プロット
2回に1回、つまり3カ月に1回のFOMCでは、参加者全員の経済・政策金利見通しが集計されて公表されます。これをみれば、参加者がどのような経済見通しを持っており、どう金融政策を運営しようと考えているのか、ある程度知ることができます。
なかでも最近注目されているのが、参加者一人一人の政策金利見通しをドット(点)で表した「ドット・プロット」と呼ばれるものです。参加者によって大きなバラツキがあり、その中央値をとってFOMCの想定する今後の金融政策と市場は勝手に解釈します。ただし、「ドット・プロット」はFOMC直前の参加者の個人的な見解を寄せ集めただけなので、コンセンサスというわけではありません。
トランプ大統領とFRBの冷たい戦い
もっとも、同日に公表された「ドット・プロット」によれば、利下げはせいぜいあと1回。政策金利を1.50%より引き下げることを想定した参加者は皆無だったことが分かります。
他方、トランプ大統領はツイッターで頻繁に大幅な利下げを要求しており、最近では「政策金利をゼロか、それ以下(=マイナス)にせよ」と圧力をかけています。FRBがトランプ大統領の不当とも言える要求をどこまではねつけることができるか。今後の経済情勢や貿易摩擦の行方と合わせて目が離せません。