投資の初心者が知っておくべきこと、勘違いしやすいことを、できるだけ平易に解説しようと思います。今回は日本の国債相場の歴史です。
日本で国債が自由に売買できるようになって流通市場が発展したのは、1970年代終盤以降です。それまでは、金融機関がシンジケート団を組んで、発行された国債を全額引き受けていました。そして、一部例外を除いて保有国債の売却は禁じられていました。
さて、日本の長期金利(10年物国債利回り)をみると、2度のオイルショックでインフレが高騰した1970年代~1980年代初頭をピークに低下トレンドが続いています。唯一の例外と言えるのが、1980年代末~1990年代初頭で、バブル景気によってインフレ率が一時4%まで上昇した局面でした。
資金運用部ショックとVaRショック
その他にも、1998-1999年の「資金運用部ショック」、2003年の「VaRショック」などもありました。前者は、大蔵省(当時)の資金運用部が国債買入れの減額・停止を発表したことが引き金に。後者は、多くの金融機関がVaR(バリューアットリスク)というほぼ同じリスク管理手法を採用していたことで、国債の「売り」が「売り」を呼ぶ展開となりました。
これらの「ショック」では、短期間で国債相場が下落し、市場金利は急騰しました。ただ、そうした状況は長続きせず、長い目でみれば、一瞬の「シャックリ」のようなものだったと言えます。
日本の長期金利は米国の長期金利を下回る
1980年以降、日本の長期金利は常に米国の長期金利を下回ってきました。これは主に両国のインフレ率の格差(日本<米国)を反映したものです。2018年春には、米国の長期金利は低下トレンドから上放れしたようにみえましたが、当時でも日本の長期金利の低位安定は続いていました。それどころか日本の長期金利は2018年を通じてほぼゼロ%で推移し、2019年に入るとマイナスが定着しています。
米国では、中央銀行に当たるFRB(連邦準備制度理事会)が2014年にQE(国債等の購入による量的緩和)を終了。2015年から利上げを継続して金融政策の正常化を進めてきました。一方で、日本銀行は現在もQEを続けており、そうした金融政策の方向性の差が長期金利の動きの差にも表れているのでしょう。
国債暴落懸念は絵空事か
日本の長期金利が低位で安定しており、米国の長期金利を下回っている点に鑑みれば、財政破たんによって日本の国債が暴落して金利が急騰するとの懸念は絵空事のようにみえます。日本の国債がいつまでも安全だと楽観視してよいのでしょうか<以下の議論の詳細は、第9回「日本国債は大丈夫か、オオカミ少年の教訓」をご参照ください>。
日本国債が安全な理由とは
日本国債が安全な理由として主に、(1)日本は世界最大の対外純債権を保有していること、(2)国債のほとんどが国内で消化されていること、(3)政府の債務残高を超える個人金融資産があることなどが挙げられます。
これからも安全であり続ける保証はない
もっとも、日本国債が安全なのは、あくまで投資家が安全だと信じている限りにおいてです。何かのキッカケで投資家が「国債は危ない」と感じて出口(国債の売却)に向かえば、その他の投資家も一斉に出口に殺到するかもしれません。国債を保有する金融機関の財務状況は大きく悪化し、また国債利回りの上昇によって財政赤字は拡大するでしょう。キッカケは、政府が財政健全化の努力を放棄する、国の経常収支が赤字に転じる、日本銀行がQE(量的緩和≒国債購入)を終了する、など色々と考えられます。
日米長期金利は逆転するか
仮にそうした事態になれば、日本と米国の長期金利は1977年以降で初めて逆転することになるかもしれません。