投資の初心者が知っておくべきこと、勘違いしやすいことを、できるだけ平易に解説しようと思います。今年のゴールデンウイークは10連休です。日本以外の市場は暦通りなので、その間の相場変動に翻弄されないように注意しましょう。

  • ゴールデンウイークの相場変動は?

    ゴールデンウイークの相場変動は?

海外の市場は通常取引

ゴールデンウイーク中は、日本の金融市場は基本的にお休みです。この間に、土日を除いた6日間は、海外の市場は例年通り取引を行います。言い換えれば、海外の市場が開いている6営業日連続で日本の市場は閉まることになります。

例年のゴールデンウイークや年末年始であれば、海外市場が開いていて日本の市場が閉まっているのは、せいぜい3営業日連続です。今回はその倍の長さであり、少なくとも私の記憶では過去にそんな例はありません。

では、10連休中にどういったことが起こりうるのでしょうか。

市場関係者は相場急変を警戒

東京証券取引所を含む日本取引所グループは、HPトップに「GW10連休の対応について」と題するお知らせを掲載しています。そこでは「これまでにない長期の連休となることから、10連休前後においては市場の動向を注視するとともに、売買監視を徹底するなど、市場の信頼性確保に向けて努めてまいります」と宣言しています。

市場関係者が相場変動に対して非常に警戒している様をうかがい知ることができます。

10連休中に世界の景色が一変するかも

10連休中には、米国だけでも、金融政策を決定するFOMC(連邦公開市場委員会)が開催され(結果判明は日本時間5月2日午前3時過ぎ)、4月分の雇用統計(同5月3日午後9時30分)をはじめ月末や月初の重要な経済指標が発表されます。

欧米の株式相場は、そうした相場材料に逐次反応して水準が大きく変化するかもしれません。5月7日に東京証券取引所が再開された時点で、世界の景色が10日前と全く異なっている可能性があるわけです。そして、日本の株式相場が「新しい現実」を一気に織り込めば、大幅な相場変動は避けられないかもしれません。

なお、東京金融取引所が提供する株価指数証拠金取引「くりっく株365」では、10連休中も土日以外は日経平均に模した「日経225」を取引することが可能です。ただ、同取引所も10連休中は流動性が大きく低下する(※)可能性があるため、取引およびポジション管理に十分に気を付けるよう注意喚起を行っています。

(※)取引参加者が少なく取引量が減少すること。流動性が低下すると、金融商品を売りたい時に売りたい価格で売ることが難しくなります。売れるまでに時間がかかったり、値段を下げないと売れなかったりします(おそらくその両方)。

10連休中の為替取引は可能だが・・

日本の債券市場も、おおむね株式市場と同様の注意が必要でしょう。他方、為替市場では状況がやや異なります。10連休中も基本的に為替取引を行うことができるからです。

もっとも、アジア時間は、欧米時間と比べてただでさえ流動性が低下します。為替取引高が一日のうちでピークに達するのは通常、ニューヨーク市場が開いて、ロンドン市場が閉まる直前です。ある調査によれば、アジア時間の取引が最も活発な時間帯でも、ピーク時の1/4程度とのことです。 10連休中でも、東京だけでなく、シンガポールや香港、欧州など多くの市場が休みとなる5月1日は、とりわけ注意が必要かもしれません。

「フラッシュクラッシュ」に要注意

記憶に新しいと思いますが、日本時間の今年1月3日午前7時30分前後のわずか数分の間に、米ドル円が1ドル=108円台後半から同105円割れまで急落しました。ドル以外の通貨も多くが対円で急落しました。こうした短時間での急落を「フラッシュクラッシュ」と呼びます。 「フラッシュクラッシュ」の背景は定かではありません。ただ、流動性の低い正月休み中に、欧米の投機筋が日本の個人投資家の外貨ポジションを狙い撃ちしたとの説もまことしやかに囁(ささや)かれました。

ゴールデンウィークの10連休中に同じような相場の急変が起こるかもしれません。もちろん、何も起こらないかもしれませんが、備えておくに越したことはありません。

執筆者プロフィール : 西田 明弘(にしだ あきひろ)

マネースクエア 市場調査部 チーフエコノミスト。1984年、日興リサーチセンターに入社。米ブルッキングス研究所客員研究員などを経て、三菱UFJモルガン・スタンレー証券入社。チーフエコノミスト、シニア債券ストラテジストとして活躍。 2012年、マネースクウェア・ジャパン(現マネースクエア)入社。「投資家教育(アカデミア)」に力を入れている同社のWEBサイトで「市場調査部レポート」「スポットコメント」「今月の特集」など多数のレポートを配信する他、動画サイト「M2TV」でマーケットを日々解説。