投資の初心者が知っておくべきこと、勘違いしやすいことを、できるだけ平易に解説しようと思います。改めて「投資の自己責任原則」について考えてみたいと思います。
「騙されない投資家になるために」シリーズを開始したのは、ネット上で誤解を招いてもおかしくない表現の記事があまりにも多かったからです。
ここで重要なのは、投資家を意図的に騙そうとする金融商品を見分けることだけではありません。それと同等に、いやそれ以上に、金融商品の性質や投資のルールを誤解しない、正しく理解することが重要なのです。それこそが投資の自己責任原則です。
ディスクレイマーとは
金融商品のパンフレットやアナリストのレポートの最後には、必ず「投資判断はお客様ご自身にて行っていただきますようお願いいたします」という類の文言が記載されています。 いわゆるディスクレイマー(免責事項)です。文字通り、金融商品の販売業者が責任を免れるための注意書きなのですが、それは「損をしても文句は言うな」という結果責任の意味もあるものの、もちろんそれだけではありません。
日本証券業協会の自主規制規則にある「自己責任原則」の項には、以下の記述があります。
「有価証券の取り引き等の投資は投資者自身の判断と責任において行うべきであるとの考え方のこと。自主規制規則において、投資勧誘に当たっては、顧客に対し、投資は投資者自身の判断と責任において行うべきものであることを理解させることを求めている」
投資の運用責任者は自分
当たり前のことですが、投資に際してご自身の資産の運用責任者は最初から最後まで「あなた」であり、あなた以外にはありえないのです。運用する資産がどういう性質のもので、何を目的としてどの程度の期間運用すべきで、どの程度の損失までなら耐えられるのか、どれぐらいのリスクを取るべきなのか、あなた以上に知りうる立場の人間はいません。
中長期の資産運用を外国の港を目指す船にたとえることもできるでしょう。船長、一等航海士、機関長はいずれもあなたです。海図が読めない、海流が見えない、風向きも知らない、星の位置も把握できない、船の最高速度や航続距離といった性能すら知らないでは、目的の港に入港できないでしょう。そればかりか出航直後に座礁するかもしれません。
投資家の自己責任
第7回「アナリストの予想を鵜呑みにしてはいけない理由」でも書きましたが、アナリストの予想は、極端にいえばそれが出た瞬間から陳腐化する宿命にあります。アナリストの予想、とりわけその根拠を参考にするとしても、それを自身の投資スタイルに合わせた使い方をすることに加えて、日々刻々変化する状況や新しく出てくる相場材料に合わせて、投資のファインチューニングを行う必要があるでしょう。
さもなければ、気付いた時には自分だけ「置いてけぼり」になっているかもしれません。そうした事態を避けるためにも、様々なことを経験して学び、知識や知恵を身に付けておく必要があります。それこそが投資家の自己責任なのではないでしょうか。