投資の初心者が知っておくべきこと、勘違いしやすいことを、できるだけ平易に解説しようと思います。
今回は、年末ですので、今年1年を「淡々と」振り返っておきましょう。投資家の皆さんのパフォーマンスはいかがだったでしょうか。
2018年の振り返り
トランプ米大統領は「内向き姿勢」を一段と強めた
2018年も米国のトランプ大統領の言動に振り回された1年でした。
「アメリカをもう一度偉大に(MAGA)」を標榜するトランプ大統領は、貿易相手国からの譲歩を求めて、鉄鋼・アルミ関税や対中国関税を課し、NAFTA(北米自由協定)を再交渉しました。
また、トランプ大統領は反移民的な政策を進め、内向きの姿勢を一段と強めました。ただ、6月に米朝首脳会談が実現し、朝鮮半島非核化の動きが出たことは、その後の交渉は停滞気味とはいえ世界経済にとっても好ましい出来事でした。
米国景気は、17年末に成立したトランプ減税の効果もあって堅調を持続、失業率は49年ぶりの水準まで低下しました。
一方で、賃金の伸びは緩やかでインフレ圧力に乏しく、FRBは緩やかな利上げを継続したものの、それは金融政策の正常化の範囲を超えないものでした。
それでも、米国の政策金利は年央にNZを抜き、主要国中で最高となりました。利上げの継続に加えて、財政赤字が拡大したことで米長期金利は上昇、10月に約7年ぶりの高値をつけました。そうした金利の上昇は、米ドルの支援材料となりました。
「適温相場」のなかで米株は10月まで上昇
米国のNYダウは、年初に長期金利(10年物国債利回り)の上昇を嫌気して下落する局面はあったものの、その後は景気の堅調とインフレ圧力の不在という「適温相場」の中で上昇を続け、10月3日に最高値をつけました。
ただし、10月以降状況に変化がみられました。関税によるコスト上昇などの悪影響が見えはじめ、利上げの累積効果や長期金利の上昇、人手不足などから企業の景況感は悪化。利上げ観測が後退して、長期金利は低下しました。
そして、経験的に長短金利差の縮小が景気後退の前兆となってきたこともあり、株価は本格的な調整局面を迎えました。
年末にかけて、メキシコ国境の壁の予算を巡って、トランプ政権と議会の民主党が対立して、シャットダウン(政府機関の一部閉鎖)が発生したこと、トランプ大統領が利上げを続けるFRBを強く批判したこと、中国景気の減速懸念や原油価格の急落なども、投資家マインドの悪化につながりました。
日本はスポットライトの外
トランプ政権が中国やカナダ、メキシコとの通商交渉を優先したことで、日本は良い意味でも悪い意味でも、スポットライトを浴びることはありませんでした。
国内的には、モリ・カケといった政治問題に注目が集まるなか、安倍首相は自民党総裁選で三選を果たしました。ただ、日銀が続ける大胆な金融緩和も効果に乏しいことが鮮明になるなど、アベノミクスは色褪せ、市場における「日本」の存在感は一段と失われたようでした。
ただ、企業業績は好調で、米株の上昇に牽引されたこともあり、日経平均は10月にバブル崩壊直後の91年11月以来の高値をつけました。一方、円は米中貿易摩擦の激化などリスクオフ局面で買われ、年間では対米ドルで上昇した唯一の主要通貨となりました(12月25日時点)。
欧州ではポピュリズム再び
欧州では、政治の不透明が強まった1年でした。EU(欧州連合)あるいはユーロ圏の結束は大きく揺れました。通貨ユーロやポンド、株価は総じて軟調でした。
17年4月のフランス大統領選で、新党「前進!」のマクロン候補が、国民戦線(FN)のルペン候補を破ったことで、ポピュリズムの波はやや下火になったかに見えました。
しかし、18年3月のイタリア総選挙では、「五つ星運動」と「同盟」によるポピュリスト政権が誕生。イタリアの新政権はポピュリスト的選挙公約の実現に力を入れ、EU(欧州連合)の財政ルール抵触が懸念されました。
ドイツのメルケル首相は、17年9月の総選挙で自党が議席を減らし、また難民問題への対応で批判を浴びたことなどから、求心力が急速に低下。21年の任期をもって引退する意向を表明しました。
マクロン大統領にしても、燃料税引き上げに抗議する「黄色いベスト」運動が拡大、燃料税引き上げの中止や減税を約束する事態に追い込まれました。
英国とEUのブレグジット交渉はドロ沼に
英国は、ブレグジット(EUからの離脱)の条件に関するEUとの交渉が難航しました。メイ首相が長い交渉の末に合意に至った協定案は、英国議会が承認する見通しが立っていません。
19年3月29日の期日に、新たな協定や移行期間なしで英国がEUから離脱する、いわゆる「合意なき離脱」の悪影響は大きいと懸念されており、それを回避できるかどうかは予断を許しません。
資源・新興国への資金フローが停滞!?
日本を除く先進国の中央銀行が金融政策の正常化を進めるなかで、グローバルな資金の流れが細るとの警戒感から、資源・新興国の株価や通貨は軟調に推移しました。
中国と緊密な貿易関係を持つ豪州やニュージーランドでは、米中貿易摩擦の激化が景気の懸念材料となりました。10月以降に原油価格が急落すると、カナダ経済に対する懸念が強まりました。
南アフリカでは、2月にズマ大統領からラマポーザ大統領に交代したことが一時好感されましたが、通貨ランドは他の新興国通貨と類似の動きでした。
トルコでは、インフレ高進や、経常赤字、中央銀行の独立性に関する疑念などの自国の材料に加えて、米国との関係が悪化したことが8月のリラ急落を招きました。
その後、中央銀行による大幅な利上げや、米国との関係改善の兆候など明るい材料が散見され、リラは反発しました。
仮想通貨の価値判断基準は?
最後に筆者が苦手な仮想通貨にも触れておきましょう。ビットコインは17年12月に高値をつけた後に急落。18年半ば以降は比較的狭いレンジで推移しましたが、年末にかけて再び下落。12月下旬時点で、ピークから約8割の価値を失いました。
仮想通貨には様々な長所があるのでしょうが、その価値をどうやって計ればよいのか筆者には皆目わかりません。
投資家は、「上がっているから買う」だけのようにみえます。そうであれば、上がらないなら買わない、あるいは売るという判断にならざるを得ないのではないでしょうか。
価格を監視したり、価値を維持したりしようとする政府や中央銀行が存在しないことも、下落局面ではマイナス材料にしか見えません。それとも、19年以降、ビットコインなどの仮想通貨は見事に復活を果たすのでしょうか。