世間を騒がせた大手飲食チェーンでの迷惑動画事件では、投稿者だけでなく企業側も重大な損失を被ったことは記憶に新しいところ。採用においても、企業は候補者の人間性やネットリテラシーに、よりセンシティブになっています。この連載では現役の調査員が、採用調査や問題社員のリスク調査といった「企業調査のリアル」をお伝えします。

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メンタルヘルスの問題への社会的な理解が進んだことで、メンタルヘルスの不調を理由に休職する社員の数が増えました。労働法を順守する企業としては、社員の健康のためにも休職希望を受け入れ、休職中にゆっくりと心身を休めてケアし、健康を取り戻すことにまい進して欲しいと考えます。もちろん、休まないように上司が社員を説得したり、休ませないことはパワハラにもあたります。

いっぽうで、長期にわたる重度の症状や通院歴がなくても、比較的あっさりと「診断名〇〇 〇ヶ月程度、休職し休養する必要あり」といった診断書を書いてくれる心療内科やメンタルクリニックも存在し、なかには残念ながら休職期間中に、“やらかす”社員がいるのも事実です。

「病気で休職」した社員が、毎日遊びまわる姿をSNSに公開

ありがちなのは、今にもダウンしそうな様子で、とるものもとりあえず周りに全て任せて休職した社員が、翌日から遊びまわっているケースです。飲み会、旅行、ライブ、マリンスポーツと毎日がイベント。平日の昼間から、あるいは深夜まで、楽しく盛り上がっている元気な様子をインスタやLINEのタイムライン、TikTokなどに公開すれば、職場の誰かしらの目に止まります。なかには、同僚などがフォローしている「本アカ」でこれをやる猛者も。休職に限らず、「病欠または身内のやむを得ない事情のため欠勤」したはずの同僚や部下が、恋人とクリスマスデートなどいうのも、一気に周りの反感を買うパターンですが、これも同じです。

長期の休職期間に外出して遊ぶなとは言いませんが、自分の業務を代わってくれている上司や同僚が働いているのを尻目に、リア充ぶりをアピールするのは配慮に欠けますし、「病気を治す」という本来の目的からもかけ離れています。メンタルヘルスの問題では、「好きなことをしている時は症状が出にくい」といった特性のある病気も存在するので、どこまでが療養でどこまでがサボりかの線引きは難しい。ですが、やはり見た人が反感を抱くような派手な投稿を頻繁に行うことは、社会人としての誠実さに欠けていると言わざるを得ません。

会社の悪口を言っていることがバレると困るのは、退職後も同じ

SNSでバレるとマズいのは、サボって(?)遊んでいることだけではありません。同じくらい致命傷になるのが、会社の悪口です。企業全体、所属部門、あるいは上司、先輩、同僚、そして取引先など、働いていると不満もあるでしょう。特にTwitterのように匿名で自分の感情を吐露するタイプのSNSでは、過激な発言、ショッキングな情報ほど「いいね」が沢山付いてバズるので、自分が所属する職場、団体、コミュニティの愚痴や悪口はよく見られます。昔は赤提灯で吞みながら愚痴、今はネットで愚痴、これはビジネスパーソンの性であり、否定するのは野暮というものですが、見つかれば大きな失点になることは覚悟しておかなければなりません。

特に、社名、人名が特定できるような書き込みや、社内の機密情報に関わる内容の漏洩は、社会人マナーとして望ましくないというレベルに留まらず、社内規則や場合によっては法律に反する恐れがあります。そうなると、怒りや不満の理由はそれなりに理がある正しいものであったとしても、誰でも見ることができるSNSでこのような行為をしたことによって、本人の主張の正当性までが失われかねません。

就活時から始まり、在職中、そして退職後も、「どこの誰が」「どこの誰について」書いているか、見る人が見れば一発でわかるような投稿はリスクが高過ぎます。そのような投稿は、退職後や、何年も前のものであっても、内容によっては会社のイメージを悪くする、会社に損害を与えるものと見なされます。採用時にSNS調査をする企業は増えているので、前職や過去の勤務先について過激な言葉で非難していたり、人間関係などに激しく不満を抱え休職したことを怒りに任せて書いていると、「危険な人物」「アンガーコントロールができない人物の可能性」「また同じことを繰り返すのではないか」といったネガティブな心証を採用担当者に与えかねません。

我々が調査したなかには、このような怒りに任せた中傷を大量に書き込んでいたことが、社内および取引先にまで知られることになり、大問題となった休職中の社員のケースがありました。後編でその一部始終を紹介します。