世間を騒がせた大手飲食チェーンでの迷惑動画事件では、投稿者だけでなく企業側も重大な損失を被ったことは記憶に新しいところ。採用においても、企業は候補者の人間性やネットリテラシーに、よりセンシティブになっています。この連載では現役の調査員が、採用調査や問題社員のリスク調査といった「企業調査のリアル」をお伝えします。
企業が就活生のSNSアカウントを調査するワケは?
今年も3月1日より2024年度新卒採用に向け就活がスタートしました。コロナ禍におけるWeb面接の広がりと、企業がコンプライアンスへの意識の高まりなどを背景に、新卒採用におけるSNS調査を導入する企業が増えています。
多くの企業がSNSアカウントの調査を導入するきっかけは、「入社後の職務態度や人柄に、当初思っていたイメージとのギャップを感じたことある」というのが一番多い理由です。ギャップを感じたことのある企業では、面接や応募書類から候補者の人柄をすべて見抜くことは難しいことを感じており、将来性も含めその人のことを50%程度でも知ることができれば良い、あとは実際に働いてみないとわからないと考えていました。
しかし、従来の採用工程に加え、より詳しく知る手段はないかと模索していたときに、誰もが気軽に情報の取得や意見の発信ができるSNSには個人の趣味・嗜好や日常の過ごし方、考え方などが反映されていることに着目し、面接での発言に加えて、SNSの投稿内容を、候補者の人物像を知る上で参考情報として取得する企業が増加しました。
採用企業は候補者の“素の人柄”を見たがっている
企業が面接やSNSで知りたいと考えているポイントは、候補者の将来性と人間性です。多くの企業では、面接でもSNSにおいても「自社にマッチする人物かどうか」という点と、「会社の発展に貢献できる人物かどうか」の見極めを重要視しています。そのためには候補者の人間性をより詳しく知る必要があり、この部分を採用工程における重要ポイントと考えています。そこから採用候補者の内面に見え隠れする“素の人柄”を知るためSNSを確認していると、本来知りたいと考えるポイント以外に、入社した後に問題を起こす可能性があるという「副産物」として懸念事項が見つかってきます。
SNSでいくつものアカウントを作成し、同級生や仲の良い友人、趣味が一緒の人同士など、それぞれのネットワークごとにアカウントを使い分けている人は多いと思いますが、なかでも、あるアカウントで日常的に他人を傷つける執拗に攻撃を繰り返す内容や、面接時の印象と全く違う人物像が見えてきた場合、企業は入社後に問題行動を引き起こす可能性を警戒します。
SNSへの投稿は、不特定多数の人に自身の言いたいことを自由に発信できる一方、不適切な投稿をすると、非公開設定であっても、つながっている人物に拡散されてしまえば、いつまでも「デジタルタトゥー」として残ってしまう。このことを考えずに発信をしてしまうような候補者のネットリテラシーの低さを見抜かなければ、重大な損失に繋がる危険性が高まります。「ネットリテラシーがある=コンプライアンスを守れる人物」。企業はこの部分を調査対象にしている、というのが現状です。
次回は、調査員が見た、新卒候補者のSNSのサブ垢に書かれていた“ヤバイ中身”をご紹介します。