私はかれこれ20年近く、家計のやりくりの取材をしてきました。その中には、貯蓄が1000万円以上ある人も、少なくありませんでした。その人たちが、とりわけ収入が多いというわけではありません。年収300万円台(手取り)というケースもたくさんありました。また、お金を使わないケチケチ生活をして、ギスギス暮らしているわけでもありません。要するに、お金のやりくりが上手なのです。ということは、そのやりくりの仕方を真似すれば、誰でも1000万円貯めることが可能というわけです。ぜひ今日から真似してみてください。
"貯めどき"を逃すとその後の貯蓄額に大きな差が出る
家計のやりくりの取材をしていると、「あのとき、もっと貯めておけばよかった」というセリフをよく耳にします。そう思うのは、今になってみると、貯められたはずの"あのとき"が思い当たるということです。そうなんです、人生のうちには、お金が貯められるチャンスの時期="貯めどき"があります。その貯めどきを逃さずにガッチリ貯めた人と、なんとな~く過ごして見逃してしまった人とでは、その後の貯蓄額に大きな差が出ます。
さらに、それは単に"貯蓄額"の差だけではなく、"貯める習慣"を人生の早いうちに身につけることができたか否かということでもあります。私としては、金額よりもこちらの差の方が大きいと思っています。
「後悔先に立たず」と昔からよく言います。その一方で「過去は変えられないけど、未来は変えることができる」とも言います。過ぎてしまった貯めどきをクヨクヨ悔やむよりも、この先にある貯めどきを逃さないことが大切です。
人生に訪れる貯めどきについて解説します。
独身時代の給与天引き貯蓄は大きい
学生時代にアルバイトをして自分で稼ぐ経験をしていた人でも、卒業後、就職して手にした給料には重みがあるものです。会社員になれば、バイト代のように時給で働くのではなく、毎月決まった金額を給料として受け取ることができます。毎月の収入が確保されるということは、毎月決まった金額を貯蓄できるということでもあります。つまり、貯まる習慣の王道の先取り貯蓄ができるということです。
欲しいモノ、やりたいこと、行きたい所など誘惑が多いからこそ、先取り貯蓄で貯蓄分をしっかり確保しましょう。特に自宅住まいの人は、家賃や水道光熱費など生活にかかる費用の負担が小さいのですから、「ここで貯めないで、人生いつ貯める」と肝に銘じましょう。
共稼ぎ時代は妻の給料はなかったものとする
実は、この時期が人生のいちばんの貯めどき。独身時代は自分の収入だけでしたが、結婚するとダブルになります。若い夫婦で、夫の収入だけでは家計が苦しいこともあるでしょうが、そこが頑張りどころ。生活費は夫の収入でやりくりし、妻の収入はなかったものとして、全額貯蓄するくらいの意気込みで。
夕飯を作るのが面倒だから外食三昧、週末はレジャーに明け暮れ、欲しいモノは買いたい放題ではお金は貯まりません。実は「あのとき、もっと貯めておけばよかった」という"あのとき"で、いちばん多いのがこの時期なのです。
小学校までは子どもにかけるお金はほどほどに
子どもが生まれて、妻が育休に入ったり、退職すると今までのようには貯められなくなります。収入が減ったら、貯蓄のペースが多少落ちるのは仕方ないと割り切ることも大事。でも、この時期に大切なのは、子どもにお金をかけすぎないこと。「○○ちゃんが英語を習い始めたから、うちの子も」とか「子どもの可能性を広げるために」と習い事を増やすのは考えものです。子どもの習い事を増やすか、習い事を限定して、その分を貯めて子どもの将来の教育費に回すかで、貯蓄額に差が出てきます。
また幼児時代は幼稚園代がかかりますが、小学生になるとその負担がなくなるので、幼稚園代を貯蓄に回せば、貯蓄スピードが加速。中学、高校になれば塾代や部活などにかかる費用が発生します。子どもが小学生のうちまでが貯めどきで、ここを逃すと、この先、教育費の負担が大きくなり、貯蓄にまで回らなくなります。
「人生には貯めどきがある」と書きましたが、考えようによっては、収入があればいつだって貯めどき。貯められるチャンスを逃してしまう誘惑に気をつければ、それぞれの時期によって貯められる額は違っても、確実に貯めることができるのです。
(※写真画像は本文とは関係ありません)
<著者プロフィール>
村越克子
フリーランスライター。学習院大学文学部心理学科卒業。編集会社を経て、フリーに。主婦を読者対象とした生活情報誌を中心に執筆。家計のやりくりに奮闘する全国の主婦を取材し、節約に関する記事を数多く手がける。執筆協力に『綱渡り生活から抜けられない人のための絶対! 貯める方法』永岡書店など。