私はかれこれ20年近く、家計のやりくりの取材をしてきました。その中には、貯蓄が1,000万円以上ある人も、少なくありませんでした。その人たちが、とりわけ収入が多いというわけではありません。年収300万円台(手取り)というケースもたくさんありました。
また、お金を使わないケチケチ生活をして、ギスギス暮らしているわけでもありません。要するに、お金のやりくりが上手なのです。ということは、そのやりくりの仕方をまねすれば、誰でも1,000万円貯めることが可能というわけです。是非今日からまねしてみてください。
「老後資金は5,000万円必要」って、ホント?
最近、「老後のお金」をテーマとした仕事をいくつか担当させていただきました。そのせいもあって、老後にかかるお金について考えるようになりました。
「老後資金は5,000万円必要」などという話を耳にすると不安になります。やみくもに不安になるのではなく、実際、老後にかかるお金はいくらくらいなのか? いくら用意しておけば生活に不自由しないのか? マジで考えてみることにしました。
老後にかかる生活費を計算する
まずは、現在、1カ月生活するためにかかっているお金をもとに、老後の生活費をザックリと計算してみます。このときに役に立つのがやっぱり家計簿。日頃から毎月の出費を管理しておくと何かと役立ちます。
住宅ローンや自動車ローンが完済予定の場合は、現在の1カ月の支出合計からその分を差し引きます。賃貸の場合は老後も家賃を払い続けることになりますが、通勤する必要がないので都心から離れた場所に引っ越すことにすれば、住居費が今よりも抑えられます。洋服代や美容代など、今よりも少なめで済みそうな費目も減額して試算します。一般的に、老後の生活は今よりもコンパクトになるので、現在の生活費の7~8割が目安です。
1カ月の生活費がわかったら、次に、老後=リタイア後の期間全体の生活費の総額を算出します。計算式は下記の通りです。
毎月の生活費×12カ月×老後の期間=老後にかかる生活費の総額
例えば、毎月の生活費が20万円、65歳まで働いて収入があり、平均寿命(※)の80歳(男性)、87歳(女性)まで生きると仮定してシミュレーションしてみましょう。
男性の場合……20万円×12カ月×15年=4,700万円
女性の場合……20万円×12カ月×22年=5,280万円
(※)出典:厚生労働省「平成27年簡易生命表」より
生活費以外にかかるお金とは?
老後の生活には、生活費以外にもお金がかかります。例えば、趣味・レジャー費家電の買い替え費、車の買い替え費、家の修繕費、医療・介護費など。自分の場合はいくらくらい必要か、費目ごとにリストアップして、生活費にプラスします。
生活費+生活費以外にかかるお金=老後にかかるお金
ここまで算出すると、大半の人は、「やっぱり、5,000万以上かかるんだ!」と不安でいっぱいになるかもしれませんが、大丈夫です。「年金」という強い味方があります。この金額から年金額を差し引いた分が、リアルな「老後にかかるお金」というわけです。
自分の年金見込み額を知る
年金見込み額を調べるための大切な資料が、「ねんきん定期便」。毎年1回、誕生月に国民年金及び厚生年金保険の加入者に日本年金機構から送られてくるものです。
年金見込み額は、日本年金機構のホームページの「ねんきんネット」からも調べられます。新規登録(無料)すると、最新の年金記録や年金見込み額などをパソコンやスマホで、24時間いつでも確認できて便利です。
また、年金見込み額は、おおよその金額を自力でも算出することができます。
老齢基礎年金(年額)=1.95×加入年数( )年※=( )万円…a
老齢厚生年金(年額)=平均年収×0.005481×加入年数( )年=( )万円…b
a+b=( )万円…年金見込み額(年額)
※この先も年金保険料を払い続けた場合の年数。例えば20~60歳まで加入すると40年
年金見込み額がわかったら、「老後にかかるお金」からその分を差し引きます。
老後にかかるお金―年金見込み額=( )万円
年金見込み額を差し引いたとしても、大金には違いありませんが、これがリアルな金額。この金額を仕事をリタイアするまでに貯める必要があるというわけです。
自分の老後のお金を実際に考えてみると、いかに貯蓄が大切なのかがわかるはずです。“アリとキリギリス”の物語のキリギリスのようにならないためにも、チリ積も効果で気付いたときからコツコツ貯蓄を始めましょう。
※画像は本文とは関係ありません
村越克子
フリーランスライター。学習院大学文学部心理学科卒業。編集会社を経て、フリーに。主婦を読者対象とした生活情報誌を中心に執筆。家計のやりくりに奮闘する全国の主婦を取材し、節約に関する記事を数多く手がける。執筆協力に『綱渡り生活から抜けられない人のための絶対! 貯める方法』永岡書店など。