私はかれこれ20年近く、家計のやりくりの取材をしてきました。その中には、貯蓄が1,000万円以上ある人も、少なくありませんでした。その人たちが、とりわけ収入が多いというわけではありません。年収300万円台(手取り)というケースもたくさんありました。また、お金を使わないケチケチ生活をして、ギスギス暮らしているわけでもありません。
要するに、お金のやりくりが上手なのです。ということは、そのやりくりの仕方を真似すれば、誰でも1,000万円貯めることが可能というわけです。ぜひ今日から真似してみてください。
お金が貯まらない元凶は急な出費にあり
この連載の第4回で「家計は年間で把握する」というテーマをあげました。今回のテーマは、その内容と少し重複する部分もありますが、家計のやりくりについて取材すればするほど、このことが肝心だと実感するので、再度取り上げました。
最近、取材をさせていただいた方は、6歳と3歳の2人のお子さんのママ。もともと大ざっぱな性格で細かいやりくりは苦手でしたが、下のお子さんが生まれたとき、この先、必要となる2人分の教育費のことを考えて、お金を貯めることを真剣に考えるようになりました。
今までやりくりに無頓着だった人が、お金を貯める目標(彼女の場合は子どもの将来の教育費)をもつと、俄然、やりくりに目覚めるというケースはよくあります。この方も、月収28万円のうち、毎月7万円も貯蓄できるようになりました。
ところが、月のやりくりはうまくいっても、固定資産税、自動車保険、自動車税、長期休暇の旅行代、家族の記念日など月収ではまかなえない大きな出費があると、せっかく毎月コツコツと貯めきた貯金を切り崩すことに。貯めては、おろし、貯めては、おろしを繰り返すだけで預金残高は一向に増えません。
年間でかかるお金の備えと「純粋な貯金」を別の通帳で貯める
そこで彼女は、貯金を切り崩すことになる原因を、通帳を見ながら月ごとに書き出してみました。
例えば、1月はお正月の準備代、2月は夫の誕生日、3月は長男の入園準備代……など。月のやりくりを崩す元凶を書き出して、まずはその合計額を把握。そして、その分をどこから工面するかを考えました。
やったことは2つ。1つは、年間でかかるお金に備えて、毎月3万円ずつ貯金すること。2つ目は、これまで毎月、7万円ずつ先取り貯蓄していたのを5万円に減らすこと。結果的には、毎月の貯金が1万円増えただけなのですが、「年間でかかるお金に備える貯金」と「純粋な貯金」を分けて、それぞれ別の通帳で貯めることに大きな意味があります。
「年間でかかるお金に備える貯金」は1年間のうちに必ず出ていくものです。「純粋な貯金」は、もっと先の将来のための蓄えです。この2つを分ける前は、月収ではまかなえない出費があるたびに、「純粋な貯金」を崩していましたが、これがストレスの元。お金をおろすたびに、後ろめたい気持ちになります。 「年間でかかるお金に備える貯金」は、この先1年の間に出費することが、はじめからわかっているお金なので、おろすときにストレスがありません。計画通りに貯めて、計画通りに出費するというのは気持ちがいいものです。
彼女の場合、毎月の先取り貯蓄額は、以前よりも2万円減りましたが、「純粋な貯金」が確実に殖えている手応えがあり、やりくりが順調になるといういい結果に結びつきました。
こんな一例もありますので、ぜひ参考にして、あなたも実践してみてください。
村越克子
フリーランスライター。学習院大学文学部心理学科卒業。編集会社を経て、フリーに。主婦を読者対象とした生活情報誌を中心に執筆。家計のやりくりに奮闘する全国の主婦を取材し、節約に関する記事を数多く手がける。執筆協力に『綱渡り生活から抜けられない人のための絶対! 貯める方法』永岡書店など。