私はかれこれ20年近く、家計のやりくりの取材をしてきました。その中には、貯蓄が1000万円以上ある人も、少なくありませんでした。その人たちが、とりわけ収入が多いというわけではありません。年収300万円台(手取り)というケースもたくさんありました。また、お金を使わないケチケチ生活をして、ギスギス暮らしているわけでもありません。要するに、お金のやりくりが上手なのです。ということは、そのやりくりの仕方を真似すれば、誰でも1000万円貯めることが可能というわけです。ぜひ今日から真似してみてください。
ストレスがあるとお金は貯まらない
家計のやりくりの取材で、30代の主婦の方にお会いしました。彼女は、独身時代は気ままにお金を使っていましたが、結婚を機にやりくりに目覚め、お金を貯めようと決意しました。ところが、結婚して2年経ってもちっとも貯蓄が殖えませんでした。
当時を振り返って彼女はこう言います。
「家計のやりくりを特集した雑誌や本を買って、それをお手本に頑張ろうと思ったんですね。でも、もともと料理が得意じゃないから、手の込んだ節約料理は作れない。だいいち1歳と2歳の年子の子どもがいると、特売品を求めてスーパーのハシゴなんてできないし、料理に時間はかけられません。
子育ては手がかかるし、夫は仕事が忙しいと家事も子育ても手伝ってくれないし。毎日、ストレスがいっぱいでした。一番のストレスは、当時住んでいた狭くて家賃が高いアパート。こんなに高い家賃を払っていたら、お金なんか貯まるわけがないと、家賃が口座から引き落とされるたびにイライラしていましたね」
まさに、ストレスはたまるけど、お金は貯まらない状態。ストレス発散のために「衝動買いに走ったり、外食をすることもしばしばだった」と言います。夫に当たることもあり、夫婦仲もギクシャクしがちでした。
こんな危機的状況を救ったのが、彼女の持ち前の前向きな性格。「子ども2人の教育費のためにも、なんとかお金を貯めなくちゃ」と奮起しました。そこで、彼女が最初にしたことが、一番のストレスの原因だった家賃の高い家から引っ越すこと。都心からは少し離れましたが、家賃が安くなっただけではなく、前より間取りが広くなりました。
住まいに対するストレスがなくなったおかげで、やりくりにも前向きに取り組めるようになりました。その甲斐あって、以前は月々の貯蓄がゼロだったのが、毎月4万円も貯められるように。そしてついに、預金残高が人生初の100万円の大台に乗りました。
お金が貯まり始めるとストレスがなくなる
私のこれまでの取材経験で言えるのは「ストレスを抱えている人で貯蓄が順調に増えている人には会ったことがないし、順調に貯蓄できている人でストレスを抱えている人はいない」ということ。人間というものは、お金が貯まり始め、懐具合がよくなると、気持ちにも余裕ができるのでしょう。ストレスもスーッと消えていくようです。
また、日々の小さなストレスを解消するのに、外食や買い物など無駄なお金を使うことではなく、自分でていねいに煎れたお茶やコーヒーを飲む時間をつくったり、朝少し早く起きて走ったりするなど、お金のかからないストレス解消法を実践しています。
お金を貯めようと決意したら、まずは日々のストレスの原因を見つけ出して、そこを改善するのが近道なのかもしれません。
<著者プロフィール>
村越克子
フリーランスライター。学習院大学文学部心理学科卒業。編集会社を経て、フリーに。主婦を読者対象とした生活情報誌を中心に執筆。家計のやりくりに奮闘する全国の主婦を取材し、節約に関する記事を数多く手がける。執筆協力に『綱渡り生活から抜けられない人のための絶対! 貯める方法』永岡書店など。