私はかれこれ20年近く、家計のやりくりの取材をしてきました。その中には、貯蓄が1000万円以上ある人も、少なくありませんでした。その人たちが、とりわけ収入が多いというわけではありません。年収300万円台(手取り)というケースもたくさんありました。また、お金を使わないケチケチ生活をして、ギスギス暮らしているわけでもありません。要するに、お金のやりくりが上手なのです。ということは、そのやりくりの仕方を真似すれば、誰でも1000万円貯めることが可能というわけです。ぜひ今日から真似してみてください。

節約テクの効果って、本当はどうなの?

先日、ある雑誌の編集部から「貯蓄を殖やすための節約テクを集めた企画をつくりたいので、テクを紹介してください」という仕事のオファーがありました。

節約テクとは、スーパーのタイムセールを利用して見切り品を買う、安いときにまとめ買いした食材で作りおきおかずを作る、スマホのプランを見直して基本料を安くする、公共料金をクレジットカード払いにしてポイントを貯める……など。こういった節約テクを集めたムック本も出版されていますし、それなりに売れています。また、節約テクも、もちろん効果はありますから、1000万円貯めた人が実践しているものもたくさんあります。

でも、長年、家計のやりくりを取材してきた私は、節約テクの積み重ねだけでは、お金は貯まらないと思っています。というのは、雑誌などで取り上げられた話題の節約テクに飛びつくのは、どちらかというと貯め下手さんに多いからです。貯め下手さんは「お金が貯まらなくてもいい」と思っているわけではなく、その反対に「なんとかして貯めたい!」と必死に思っている人の方が多いのです。ですから、雑誌で目についた節約テクや貯めテクに、すぐに飛びつきます。でも、長続きしない……挫折してリバウンド……の繰り返しです。

その原因は、貯め下手さんの生活が、そもそも貯まらないライフスタイルになっていることにあります。

貯蓄を成功させるには、ライフスタイルそのものを変える必要あり

私は、つねづねお金を貯めることとダイエットには、共通点があると思っています。3日坊主では成功しませんし、自分に合った方法でないと長続きしません。話題の○○ダイエットを始めたものの、一生懸命だったのは最初のうちだけ、1カ月もたたないうちに挫折。これを繰り返すだけでは、健康的で美しいボディとは一生、無縁かもしれません。ライフスタイルそのものを、健康的にダイエットできる生活習慣へと変えることが、成功のポイントだからです。

お金を貯めるのも同じ。

1000万円貯蓄を成功させた人の多くは、かつてはムダ遣いのし放題だった人が少なくありません。それが、なにかのきっかけで将来のことを考えて「貯めなきゃ!」と気づきます。そこから試行錯誤しながら、これまでのお金の使い方を見直し、自分なりの貯め方にたどり着くのです。もちろん、その間、雑誌や書籍の節約テクを参考にすることもありますが、そういったやりくりに関する情報よりも、ライフスタイルを取り上げた書籍から影響を受けることのほうが多いようです。

今あるモノを整理して、少ないものでシンプルに暮らす、他人と比べるのではなく自分らしい暮らしを大切にするなど、お金やモノから気持ちが解放された人たちこそ、1000万円貯蓄の成功者になるのです。

<著者プロフィール>

村越克子

フリーランスライター。学習院大学文学部心理学科卒業。編集会社を経て、フリーに。主婦を読者対象とした生活情報誌を中心に執筆。家計のやりくりに奮闘する全国の主婦を取材し、節約に関する記事を数多く手がける。執筆協力に『綱渡り生活から抜けられない人のための絶対! 貯める方法』永岡書店など。