ブームは去ったかのようにも感じる「仮想通貨」ですが、その普及は世界中で着実に進んでおり、今後もさまざまなシーンでの活用が期待されています。本連載では、「仮想通貨に興味はあるけれど、なにからどう手を付ければいいかわからない」というような方向けに、仮想通貨に関連するさまざまな話題をご紹介。仮想通貨を2014年より保有してきた筆者の経験から、なかなか人には聞きにくい仮想通貨の基礎知識や歴史、未来像などもわかりやすくお伝えします。
仮想通貨は、しょせん投資や投機目的だけのもの?
2017年は、「仮想通貨ブーム」とも呼べる年でした。ビットコインなどの仮想通貨の存在を昨年に初めて知ったという人も多いでしょう。主に投資・投機の手段として広まり、「億り人」や「ビットコイン長者」という言葉も生まれました。
仮想通貨は、第1回の記事で書いたとおり、貨幣(法定通貨)と同じ機能を持っています。貨幣の機能とは、「決済」「送金」「利殖」のことです。投資や投機、資産運用、資産保全は、このうちの「利殖」に当てはまり、仮想通貨で大きな利益を生み出したいという人も多いと思います。しかし、利殖は仮想通貨が持つ機能の一つにすぎません。
意外といろいろなところで使える仮想通貨
仮想通貨が持つ利殖以外の機能には、「決済」があります。決済とは、支払いのことです。仮想通貨で、モノやサービスを購入することができます。例えば、ビットコインでの決済を利用できるお店は、「coinmap(コインマップ)」というサイトで探すことが可能です。同サイトでは、スマートフォンの位置情報からビットコインが使える店舗を検索できるのです。
コインマップを見ていただくとわかりますが、ビットコイン決済ができるお店は、アメリカとヨーロッパに多いです。例えばアメリカでは、ニューヨーク、サンフランシスコ、ロサンゼルスなどの個人経営のレストランやピザ屋、カフェ。さらに、スターバックスなどの大手チェーン、ホテルなどでもビットコイン決済が可能です。お店には、ビットコイン決済に対応した支払い端末やiPadが置かれていて、スマートフォンなどで「ピッ」と簡単に決済できます。使い心地は、「100億円あげちゃうキャンペーン」で話題になったPayPay(ペイペイ)やLINE PayなどのQRコード決済と極めて似ています。
オンライン決済でも使える仮想通貨
実店舗以外ですと、日本ではありませんがアマゾンや楽天のアメリカ版などのオンラインショップでもビットコイン決済を利用できます。仮想通貨決済を導入する企業は、国内外で今後も増えていくでしょう。他にも、アメリカのマイクロソフトやエクスペディア、日本ではビックカメラなどの大手企業もビットコイン決済を導入しています。
仮想通貨に対応したデビットカードも
ビットコインなどの仮想通貨に対応したデビットカードも発行されています。例えば、Wirexカード(イギリス)、XAPOカード(香港)、Shiftカード(アメリカ)、TenXカード(シンガポール)などがあります。手数料や年会費、チャージ上限額、使用上限額などはカードによって異なりますが、仮想通貨を手軽に決済に利用できるのは便利です。
銀行口座を持っていない国民の多い新興国などでは、仮想通貨のウォレットを作り、そのウォレットとデビットカードを紐付けることで決済に利用できる、といったサービスも始まっています。
治安の悪い国では、現金を持つこともリスクになりますし、偽札などの問題もあります。仮想通貨の普及やキャッシュレス化の流れは、そのような社会問題を解決する手段にもなり得るでしょう。今後も、仮想通貨を取り入れたさまざまな各種カードが発行されていくかもしれません。
スイスでは仮想通貨で納税もできちゃう
仮想通貨決済を導入しているのは、個人商店や企業だけではありません。スイスのキアッソという町では、2018年からビットコインで納税することが可能になりました。納税額のうち、250フラン(1フラン=113.08円/12月20日レート)まではビットコインで納税できるそうです。
またドイツのハノーファーという都市では、電気やガスの供給を行うドイツ最大のエネルギー会社・エナーシティーがビットコイン決済を導入しています。住んでいる町の支店で、QRコードを使ってビットコイン決済ができるとのことです。
このように、実店舗やオンラインショップでの決済、デビットカード、納税など、仮想通貨決済は世界中で徐々に普及し始めています。日本でも、仮想通貨を決済に利用することが一般的になっていくかもしれません。
今回は主に仮想通貨の「決済」機能について取り上げました。次回は「送金として利用する仮想通貨」についてご紹介します。
執筆者プロフィール : 中島 宏明(なかじま ひろあき)
1986年、埼玉県生まれ。2012年より、大手人材会社のアウトソーシングプロジェクトに参加。プロジェクトが軌道に乗ったことから2014年に独立し、その後は主にフリーランスとして活動中。2014年、一時インドネシア・バリ島へ移住し、その前後から仮想通貨投資、不動産投資、事業投資を始める。
現在は、SAKURA United Solutions Group(ベンチャー企業や中小企業の支援家・士業集団)、しごとのプロ出版株式会社で経営戦略チームの一員を務めるほか、バリ島ではアパート開発と運営を行っている。
オフィシャルブログも運営中。