ブームは去ったかのようにも感じる「仮想通貨」ですが、その普及は世界中で着実に進んでおり、今後もさまざまなシーンでの活用が期待されています。本連載では、「仮想通貨に興味はあるけれど、なにからどう手を付ければいいかわからない」というような方向けに、仮想通貨に関連するさまざまな話題をご紹介。仮想通貨を2014年より保有してきた筆者の経験から、なかなか人には聞きにくい仮想通貨の基礎知識や歴史、未来像などもわかりやすくお伝えします。

アルトコインってなに?

今回は、「アルトコイン」についてご紹介します。

「アルトコイン」は「オルタナティブコイン(代替コイン)」の略で、ビットコイン以外の仮想通貨のことを指します。アルトコインの多くは、ビットコインが抱えている問題を解決するために生まれました。

仮想通貨の種類は、今では2,000種類あるという話もあれば3,000種類あるとも言われており、正確な数はおそらく誰も把握できません。詐欺コインと呼ばれている仮想通貨も多く存在し、「自由に売買できない」「出資はしたけど現金化できない」「塩漬け状態」などのトラブルが発生しています。こういったトラブルを引き起こす悪意のある人たちが仮想通貨業界に参入することは、とても残念なことです。仮想通貨の普及をジャマしていると思います。詐欺被害に遭わないよう、購入する仮想通貨を見極める目利き力・鑑識眼が私たち一人ひとりに求められています。

ビットコイン以外の仮想通貨にはどんなものがあるの?

ビットコイン以外の仮想通貨は、「リップル(XRP)」「イーサリアム(イーサ)」などが有名です。

リップル(XRP)は、ビットコインの課題であるスケーラビリティ問題や、マイニング(取引の認証作業)に必要とされる膨大な消費電力の問題を解決するために生まれました。ビットコインでは平均10分間かかっていた送金や決済処理を、リップル(XRP)ではわずか数秒に短縮できています。消費電力を抑えたエコな仮想通貨なので、送金手数料も安くすることができました。

リップル(XRP)は、2004年にプログラマーのライアン・フガーが発表した論文がもとになっています。ビットコインは、2008年に発表されたサトシ・ナカモトの論文がもとになっており、実は理論としてはリップル(XRP)のほうが古いのです。

現在のリップル社は、オープンコイン社という社名で2012年にスタートし、2013年にリップルラボ社に社名変更、2015年にリップル社に改めています。リップル(XRP)の開発は、オープンコイン社の頃から進められてきました。

リップルのミッションは、「価値のインターネット」と言われています。世界中のあらゆる価値(お金だけでなく、現物資産や著作権などの知的財産も含む)を、簡単でスピーディーにやりとりできるようにすることで、社会をより良く変えようという思想がベースになっています。

例えば、手紙などの文字情報は、Eメールで全世界へ簡単に送信できます。しかし、価値(主にお金)を送ることは、Eメールのように簡単ではない。そう考えたのが、ライアン・フガーでした。

リップル(XRP)には多くの企業が高い可能性を感じており、出資を行っています。2018年8月時点で、リップル社に出資している主な企業は以下のとおりです。

■グーグル・ベンチャーズ
■アクセンチュア・テクノロジー・ベンチャーズ
■SBIホールディングス
■アンドリーセン・ホロウィッツ
■CMEグループ
■コア・イノベーション・キャピタル
■サンタンデール・イノベンチャーズ
■スタンダードチャータード銀行
■シーゲイト・テクノロジー(SEAGATE)  など

イーサリアムは、ブロックチェーン(仮想通貨を支えるシステム)を応用した「スマートコントラクト」という機能が特徴です。スマートコントラクトとは、仲介者などの第三者が不要で契約を実行できる仕組みのことです。ビットコインの場合、取引履歴には「AさんからBさんに、1BTC送金する(BTC=ビットコインの通貨単位)」というデータしか残りません。ところがスマートコントラクトでは、さらに「BさんはAさんに不動産権利書を引き渡す」という契約内容までデータとして残すことができます。

イーサリアムは、ロシア系カナダ人のヴィタリック・ブテリンによって開発されました。彼がイーサリアムを考案したのは19歳のとき(2013年)。2014年から開発を始め、同年7月にICOプレセールが行われました(ICO=仮想通貨開発のための資金調達)。イーサリアムの名称で知られていますが、正式にはイーサと呼びます。

イーサリアムのスマートコントラクトは、仮想通貨以外のさまざまなシーンで利用が期待されています。スマートコントラクトを利用すると、契約内容を変更した際にその履歴がすべて残されます。そのため、公証役場を利用することなく契約書の公正性が保証されるということになります。これは画期的なことです。現状で想定されているスマートコントラクトの利用方法は、以下のとおりです。

■不動産登記
■住民票管理
■医療カルテ
■サプライチェーン
■シェアリングサービス  など

今後、さまざまな人のアイデアによってスマートコントラクトの活用の場は広がっていくでしょう。

リップルやイーサリアムの他にも、活用や普及が期待されている仮想通貨はあります。次回は、「仮想通貨の普及に貢献するかもしれない新しい仮想通貨」についてご紹介します。

執筆者プロフィール : 中島 宏明(なかじま ひろあき)

1986年、埼玉県生まれ。2012年より、大手人材会社のアウトソーシングプロジェクトに参加。プロジェクトが軌道に乗ったことから2014年に独立し、その後は主にフリーランスとして活動中。2014年、一時インドネシア・バリ島へ移住し、その前後から仮想通貨投資、不動産投資、事業投資を始める。
現在は、SAKURA United Solutions Group(ベンチャー企業や中小企業の支援家・士業集団)、しごとのプロ出版株式会社で経営戦略チームの一員を務めるほか、バリ島ではアパート開発と運営を行っている。
オフィシャルブログも運営中。