ブームは去ったかのようにも感じる「仮想通貨」ですが、その普及は世界中で着実に進んでおり、今後もさまざまなシーンでの活用が期待されています。本稿では、「仮想通貨に興味はあるけれど、なにからどう手を付ければいいかわからない」というような方向けに、仮想通貨に関連するさまざまな話題をご紹介。仮想通貨を2014年より保有してきた筆者の経験から、なかなか人には聞きにくい仮想通貨の基礎知識や歴史、未来像などもわかりやすくお伝えします。
今回のテーマは、「ビットコインの「ゼロ承認(ゼロコンファメーション)」ってなに?」。
ゼロ承認(ゼロコンファメーション)とは
ビットコインは、取引情報を記録するブロック生成に約10分かかります。そのため、決済や送金の処理スピードが遅いという欠点があります。そこで、取引情報がブロックに記載される前に、取引を成立させてしまう「ゼロ承認(ゼロコンファメーション)」が採用されるようになりました。
本来、ビットコイン取引における承認は、取引情報がブロックチェーンに書き込まれることで完了します。ブロックチェーンに取引履歴が記録されることで、二重支払いや改ざんがないことを証明できるわけです。しかし、ブロック生成には約10分かかってしまいますから、ゼロ承認はその時間を省くために、ブロック生成前に取引成立を可能とする仕組みなのです。
ゼロ承認のメリットは?
ゼロ承認のメリットは、決済や送金の処理スピードが速くなることです。現金で支払うよりも仮想通貨で支払う方が時間がかかる、ということになったら、誰も仮想通貨で決済しません。仮想通貨を使う意味がなくなってしまいます。
例えば、ビットコインで買い物をしようとしたときに、支払いに10分もかかっていたら不便ですよね。世界中でビットコインの取引量が増えれば、もっと時間がかかってしまうかもしれません。支払いをしているうちに閉店時間に……なんてことになったら、誰も支払いにビットコインを使わないですよね。
デメリットはあるの?
メリットがある一方、デメリットもあります。ゼロ承認で決済を行った場合、過去の取引記録との照合ができないため、二重支払いのリスクがあるのです。
例えば、ビットコインを店頭で決済に利用した後、すぐに同じビットコインをより高額な手数料でほかの人に送金したとします。すると、手数料が高額の取引の方が先に承認されてしまい、先に取引したお店はビットコインを受け取れなくなってしまいます。ビットコインでは取引手数料をユーザーが設定することができ、手数料が高いほど早期に決済されるため、二重支払いのリスクが生じてしまうというわけです。
ゼロ承認派とRBF派
ゼロ承認に対抗して、RBF(Replace by Fee) という仕組みも生まれました。RBFとは、未承認のトランザクション(取引・処理)を、手数料を引き上げた新しいトランザクションに置き換えることを言います。
RBFという仕組みが生まれた背景には、ゼロ承認による取引を不可能にするという目的があります。ゼロ承認は二重支払いのリスクが高いため、決済方法としては適切でないと考える人がおり、RBFを実行してゼロ承認取引を阻止しようとしているわけですね。
RBFのメリットは、承認に時間がかかるときに、未処理のトランザクションを早急に処理できることです。一方デメリットとしては、RBFの実行によってゼロ承認が完全にできなくなると、決済時に不便になることが予想されます。ゼロ承認取引を行わず、店頭での決済に10分以上かかるようでは、決済手段としてのビットコインの価値が低下してしまいます。結果的には、ビットコインの価値も下がってしまうかもしれません。
より優れたアルトコインが普及する?
ゼロ承認は、利便性は高いものの二重支払いのリスクがあるため、まだまだ改善が必要です。ゼロ承認のリスクを指摘するために、公開攻撃が行われたこともあり、二重払いが現実的に可能であることが証明されてしまいました。今後は、ゼロ承認を使わなくてもスピーディーな決済が可能になる技術が必要になるでしょう。
ビットコインよりも処理スピードの速い仮想通貨はたくさんあります。今後はビットコインに代わって、リップル(XRP)やイーサリアム(ETH)、フュージョンコイン(XFC)などの、処理スピードが速いアルトコインが普及する可能性があります。むしろ、決済や送金手段としてはこちらが普及する方が速いかもしれません。
リップル(XRP)やフュージョンコイン(XFC)の処理スピードは最短で約4秒ですから、店頭でも十分使える速さですよね。また、イーサリアム(ETH)は最短で約15秒のスピードです。このようなアルトコインが普及すれば、仮想通貨の利便性はより高まるでしょう。
一方、ビットコインも処理スピードの改善に向けてなにもしていないわけではありません。ビットコインの処理スピードは、今後ライトニングネットワークという技術が実装されれば、改善する可能性があります。
ライトニングネットワークとは、ブロックを生成する過程を省略し、処理スピードを速める技術のことです。ライトニングネットワークを利用することで、将来的には決済スピードを上げ、二重支払いを防ぐことが可能になるかもしれません。取引手数料が安くなれば、少額取引でもビットコインを使いやすくなりますよね。
次回は、「仮想通貨投資でやってはいけない投資方法」についてご紹介します。
執筆者プロフィール : 中島 宏明(なかじま ひろあき)
1986年、埼玉県生まれ。2012年より、大手人材会社のアウトソーシングプロジェクトに参加。プロジェクトが軌道に乗ったことから2014年に独立し、その後は主にフリーランスとして活動中。2014年、一時インドネシア・バリ島へ移住し、その前後から仮想通貨投資、不動産投資、事業投資を始める。
現在は、SAKURA United Solutions Group(ベンチャー企業や中小企業の支援家・士業集団)、しごとのプロ出版株式会社で経営戦略チームの一員を務めるほか、バリ島ではアパート開発と運営を行っている。
オフィシャルブログも運営中。