ブームは去ったかのようにも感じる「仮想通貨」ですが、その普及は世界中で着実に進んでおり、今後もさまざまなシーンでの活用が期待されています。本稿では、「仮想通貨に興味はあるけれど、なにからどう手を付ければいいかわからない」というような方向けに、仮想通貨に関連するさまざまな話題をご紹介。仮想通貨を2014年より保有してきた筆者の経験から、なかなか人には聞きにくい仮想通貨の基礎知識や歴史、未来像などもわかりやすくお伝えします。
今回のテーマは、「仮想通貨の発行枚数(発行量)」について。
法定通貨と仮想通貨の違いは発行枚数にある?
仮想通貨の話題に触れるとき、「発行枚数」「発行量」「発行上限」(以下、発行枚数)などの言葉を聞いたことのある人も多いと思います。仮想通貨における発行枚数とは、現在発行されている仮想通貨の総量のことです。
「ビットコインの発行枚数」「イーサリアムの発行枚数」「フュージョンコインの発行枚数」といえば、それぞれの特定の仮想通貨の現在発行されている総量のことを示します。
多くの仮想通貨は発行枚数の上限を設けており、これは法定通貨とは大きく異なる特徴です。法定通貨の場合、「日本円はもう発行しきったから、1万円札がほしければ1万1,000円払ってね」なんてことはありませんよね。
法定通貨は、政府や中央銀行が発行枚数を調整し、その法定通貨の価値が下がりすぎないように管理・調整しています。しかし法定通貨でも、通貨の価値が下がりすぎるインフレや、極端に下がるハイパーインフレを起こした国が複数あります。
法定通貨には発行枚数に制限がないため、経済状況によっては発行しすぎてその通貨の価値が下がり、買い物をするたびに大量の紙幣を持たなければならなくなった国もありました。ジンバブエなどの事例が有名ですね。
通貨はどのように発行されるのか
法定通貨の場合、中央銀行などが新規紙幣を発行します。米ドル(正式名称:アメリカ合衆国ドル)は、連邦準備制度の下、連邦準備制度理事会が国内主要都市にある12の連邦準備銀行を統括し、米ドル紙幣を発行しています。
イギリスのポンドであれば、イングランド銀行やスコットランド銀行、ロイヤルバンク・オブ・スコットランド、クライズデール銀行、アイルランド銀行、ファースト・トラスト銀行、ノーザン銀行、アルスター銀行などです。イギリスの場合、歴史的な背景から複数の銀行に発行権があります。
EU圏のユーロは、欧州中央銀行(ECB)にユーロ紙幣の発行権があります。日本円は、日本の中央銀行である日本銀行が発行していますね。
一方、仮想通貨の場合、新規コインの発行はマイニングの報酬として行われます。マイニングについては、第11回の記事をご覧ください。仮想通貨の種類によっては、はじめにすべてのコインが発行されていたり、徐々にコインが減少していくものもあります。
各仮想通貨の発行枚数
仮想通貨の発行枚数は、仮想通貨の種類によって異なります。ビットコイン(BTC)の上限は、2,100万枚です。マイニングによって新規コインが発行されるビットコインは、2140年ごろに上限の2,100万枚に到達すると言われています。
イーサリアム(ETH)には、発行枚数に上限が定められていません。イーサリアムもビットコインと同様、マイニングによって新規コインが発行されます。ビットコインとは異なり、永遠に新規コインを発行できるのがイーサリアムですが、今後はインフレを抑制するために上限が設定される可能性もあります。
リップル(XRP)の発行枚数の上限は、1,000億枚です。すでに上限分のコインが発行されています。リップル(XRP)がコインを発行しきっているのは、マイニングによって新規コインが発行されないためです。リップル(XRP)の場合、送金に必要な手数料分のコインが送金で利用されるたびに破棄される仕組みになっています。利用されるたびに枚数が減少していくため、需要と供給の関係から価値が保たれると考えられます。
ビットコインとリップル(XRP)の特徴を併せ持つフュージョンコイン(XFC)の発行枚数の上限は、3,000万枚です。フュージョンコインはリップル(XRP)と同様、すでにすべてのコインを発行しきっています。ビットコインから分岐したビットコインキャッシュ(BCH)は、ビットコインと同様2,100万枚。オーガー(REP)は1,100万枚。ダッシュ(DASH)は1,890万枚です。
※( )内は仮想通貨の通貨単位
発行枚数が少ないほうが価値上昇しやすい?
「発行枚数が少ない」ということには、どのような意味があるのでしょうか。その仮想通貨の総量に限りがあるということですから、発行枚数の少ない仮想通貨は、将来的に希少価値が高くなる可能性があります。希少価値が高いということは、価値上昇の可能性があるということですね。流通している枚数よりも需要が高くなれば、その分価値も上昇するでしょう。
金(ゴールド)や天然のダイヤモンド、レアメタルなどと一緒で、発掘できる量が限られているにもかかわらず、世界中の人がほしがれば、その価値は上昇します。身近なところでは、「今年の野菜は高い」という現象が起こるのは、気候などによって野菜の収穫量が減り、流通量が減少するからです。供給(流通量)よりも需要が高まれば、価格は高騰しますよね。
とはいえ、イーサリアムのように発行枚数の上限がまだ設定されていない仮想通貨や、リップル(XRP)のように発行枚数が多い仮想通貨も価値は上昇してきました。ですので、発行枚数が少なければ価値が必ずしも上昇するというわけではありません。需要と供給の関係から、その可能性が高いというだけのことです。
仮想通貨の目利きのポイントはいくつかありますが、「今、安いかどうか」「今後、価値上昇するかどうか」「その根拠と信憑性」などの見極めが重要です。「発行枚数が少ないから投資する」というのは、いささか安直ですね。
次回は、「なぜ仮想通貨はボラティリティが高いのか?」というテーマについてご紹介します。
執筆者プロフィール : 中島 宏明(なかじま ひろあき)
1986年、埼玉県生まれ。2012年より、大手人材会社のアウトソーシングプロジェクトに参加。プロジェクトが軌道に乗ったことから2014年に独立し、その後は主にフリーランスとして活動中。2014年、一時インドネシア・バリ島へ移住し、その前後から仮想通貨投資、不動産投資、事業投資を始める。
現在は、SAKURA United Solutions Group(ベンチャー企業や中小企業の支援家・士業集団)、しごとのプロ出版株式会社で経営戦略チームの一員を務めるほか、バリ島ではアパート開発と運営を行っている。
オフィシャルブログも運営中。