ブームは去ったかのようにも感じる「仮想通貨」ですが、その普及は世界中で着実に進んでおり、今後もさまざまなシーンでの活用が期待されています。本連載では、「仮想通貨に興味はあるけれど、なにからどう手を付ければいいかわからない」というような方向けに、仮想通貨に関連するさまざまな話題をご紹介。仮想通貨を2014年より保有してきた筆者の経験から、なかなか人には聞きにくい仮想通貨の基礎知識や歴史、未来像などもわかりやすくお伝えします。
仮想通貨の「ウォレット」ってなに?
今回は、仮想通貨の保管方法についてご紹介します。
まず、仮想通貨の「ウォレット」について説明しましょう。
ウォレットとは、仮想通貨を管理・保管する銀行口座のようなものです。銀行口座の口座番号に相当するものが「アドレス」で、暗証番号に相当するものが「秘密キー」です。ウォレットには、主に次のような4つのタイプがあります。
■デスクトップウォレット(ソフトウェアウォレット)
デスクトップウォレットは、デスクトップにソフトウェアをダウンロードして、ローカル環境やオフラインで使用するウォレットです。完全型と簡易型の2種類があります。
・完全型(フルノード型) 例) Bitcoin Core
仮想通貨の取引履歴をすべてダウンロードして参照するのが特徴です。PCに負担がかかるというデメリットがあります。
・簡易型 例) Copay、Airbitz、Breadwalletなど
保管や送金に必要な最低限の履歴のみをダウンロードして参照するのが特徴です。一般的にデスクトップウォレットは、簡易型のほうが多いと言えます。
完全型も簡易型も、ともにオンラインではないためハッキング被害に遭うリスクは少ないのですが、PCの故障や盗難などのリスクは残ります。
■オンラインウォレット(ウェブウォレット)
オンラインウォレットは、その名の通りウェブ上にあるウォレットです。ネットワークにつながったオンラインの状態でしか使うことができません。オンラインウォレットには、売買・保管ができる仮想通貨取引所のウォレットと、個人用のウォレットがあります。
・取引所のウォレット 例) 各仮想通貨取引所のウォレット
・個人用のウォレット 例) Blockchain.info、Coinbaseなど
仮想通貨を購入したばかりの人の多くは、仮想通貨取引所のウォレットに保管していると思います。ここで注意したいのは、取引所のウォレットがどのように管理されているかです。ユーザー毎に個別のウォレットをつくっているのか、全ユーザーの仮想通貨を一括で管理しているのか。一括で管理している場合は、その取引所がハッキング被害に遭った場合、すべての仮想通貨が消失するリスクが高まります。
オンラインウォレットは、デスクトップウォレットに比べればPCの故障や盗難などのリスクはありません。しかし、取引所のハッキングや倒産などのリスクは残ります。
■ハードウェアウォレット 例) TREZOR、Ledgerなど
ハードウェアウォレットは、USBのような端末に仮想通貨の秘密キーを保管する方法を採用しています。仮想通貨そのものをハードウェアウォレットに保管しているわけではありません。仮想通貨を送受金するには、公開キーと秘密キーを一致させる必要があります。ハードウェアウォレットには、この秘密キーがオフラインで保管されています。ちなみに公開キーとは、暗号化された取引のデータを復号化するためのものです。南京錠が公開キー、それを開けるための鍵が秘密キーとイメージするとわかりやすいかもしれません。
ハードウェアウォレットは、オフラインであるためハッキング被害に遭うリスクはほとんどなく、セキュリティーは強固と言えるでしょう。ハードウェアウォレットが故障・紛失しても、パスフレーズを把握していれば復元することができます。
■ペーパーウォレット
ペーパーウォレットは、アドレスと秘密キーを紙にプリントする保管方法のことです。ペーパーウォレットは、オフラインですのでハッキング被害などのリスクはないのですが、プリントした紙自体を盗まれたり、紛失したりするリスクは残ります。
オンラインよりはオフラインでの管理がオススメ
さまざまな保管方法がある仮想通貨ですが、オンライン管理にはハッキングリスクが付きまといます。オフライン管理でも紛失や盗難、破損などのリスクは残りますが、オンライン管理よりは損害リスクを軽減できるはずです。
日本の弁護士法人「みなと法律事務所」では、法律事務所として日本で初めて「仮想通貨用ハードウェアウォレット設定代行サービス」をリリースしました。ハードウェアウォレットの設定方法がわからないという人のために、設定代行サービスを提供しているそうです。
また、海外でもさまざまな仮想通貨保管サービスの準備が進められています。FUSION COINを運営するFUSION PARTNERSでは、銀行業への参入準備が進められており、銀行の貸金庫でペーパーウォレットを管理するコンシェルジュサービスも発表されています。ペーパーウォレットだけでなく、ハードウェアウォレットメーカーのTREZORやLedgerと提携し、ハードウェアウォレットの保管も銀行で可能になる見通しです。
今後もより安全な保管方法が考えられ、ハードウェアやソフトウェアの改良、サービスの提供が世界中で行われていくでしょう。
次回は、ハッキング以外で仮想通貨の課題とされている「ハードフォークとスケーラビリティ問題」についてご紹介します。
執筆者プロフィール : 中島 宏明(なかじま ひろあき)
1986年、埼玉県生まれ。2012年より、大手人材会社のアウトソーシングプロジェクトに参加。プロジェクトが軌道に乗ったことから2014年に独立し、その後は主にフリーランスとして活動中。2014年、一時インドネシア・バリ島へ移住し、その前後から仮想通貨投資、不動産投資、事業投資を始める。
現在は、SAKURA United Solutions Group(ベンチャー企業や中小企業の支援家・士業集団)、しごとのプロ出版株式会社で経営戦略チームの一員を務めるほか、バリ島ではアパート開発と運営を行っている。
オフィシャルブログも運営中。