ブームは去ったかのようにも感じる「仮想通貨」ですが、その普及は世界中で着実に進んでおり、今後もさまざまなシーンでの活用が期待されています。本稿では、「仮想通貨に興味はあるけれど、なにからどう手を付ければいいかわからない」というような方向けに、仮想通貨に関連するさまざまな話題をご紹介。仮想通貨を2014年より保有してきた筆者の経験から、なかなか人には聞きにくい仮想通貨の基礎知識や歴史、未来像などもわかりやすくお伝えします。

仮想通貨は本来的には価値がない?

仮想通貨は、暗号技術を利用したデジタルな通貨です。そのため紙幣や硬貨のような実物はありません。そういう意味では、手に取ることすらもできませんから、価値を認めることは難しいでしょう。

仮想通貨の代表格であるビットコインの最初の価値は、マイニング(認証作業)に必要な電気代から計算されました。2009年10月5日のことで、このときの価格は、1ドル=1,309.03BTCでした。電気代が算出根拠になったのは面白いですよね。

(第11回の記事参照)

法定通貨も本来は紙や素材の価値しかない

法定通貨も似たようなもので、実物としての価値は、紙幣であれば紙代と印刷代、硬貨であれば素材代と加工代がその価値と言えるのかもしれません。しかし、1万円は1万円として取引されますよね。法定通貨の場合、その国の法律によって定められていることで価値が保証されていると感じるところもあるでしょう。しかし、実態は思い込みです。

お金の価値は共同幻想でしかない

仮想通貨にも法定通貨にも、本来的には価値はないのですが、みんなで価値があると思い込んでいることによって価値が生まれていると言えます。「生まれている」というより、お互いに価値を「確かめ合っている」という表現のほうが正しいのかもしれません。

日本円の場合、日本国内であればどこでも使えます。クレジットカードや電子マネーを使えない店舗や場面はまだまだありますが、現金払いNGというところはほとんどないでしょう。現金払いNGのお店があるのは、スウェーデンなどのようなキャッシュレス先進国くらいだと思います。

日本に住んでいれば日本円で日々支払いをし、日本円で給与や収入を得て、日本円で保管(預金)し、日本円で納税しますので、日本国内での日本円の交換性はますます強くなります。それにより、「1万円には1万円の価値がある」という共同幻想も強化されます。

仮想通貨は相対取引によって価値を確かめ合う

仮想通貨は、仮想通貨取引所などで行われる相対取引によってその価値を確認します。例えば、「1BTCと日本円の交換レートが今日は1BTC=40万円だな」という具合です。

相対取引といっても、一対一ではなく一対複数であることがほとんどですが、「相手が価値を認める」ことで取引が成立しています。つまり、相手が認めさえすれば仮想通貨も価値はあるわけです。逆を言えば、相手が価値を認めなければ無価値ですし、その相手が世界中から誰もいなくなれば本当に無価値になってしまいます。

仮想通貨の価値は誰がつくり、誰が上げていくのか?

仮想通貨の価値をつくり出す、あるいは価値を上げていくのは、その仮想通貨を保有するホルダーと、仮想通貨の発行元や仮想通貨取引所などの関連事業者たちです。

ビットコインの場合、明確な発行元はありませんし、開発当時は取引所もありませんでした。さらに、仮想通貨(暗号通貨)という言葉すらありませんでした。ですので、ビットコインの価値を上げたのはホルダーたちだと言えます。ホルダーたちがビットコイン取引所をつくり、ビットコインを決済で使える仕組みをつくり、またその導入店舗や導入企業を増やしていきました。メディアへの露出やマーケティングも、ビットコインホルダー(ビットコインラバー、ビットコイナーなどとも呼ばれています)による取り組みと言えるでしょう。

同じように、仮想通貨でモノを買える店舗や企業が増え、使える場面が増えれば、交換性が向上し、やがて価値も上昇するでしょう。あまりに価値変動が激しいと決済での利用はしにくいのですが。

仮想通貨が今後普及するためには、仮想通貨での実際の決済量と処理速度が極めて重要です。通貨の価値の構成要素は、「決済利用できる場所と場面の拡大」「手数料の安さ」「決済・送金スピードの速さ」が主なポイントになると思います。仮想通貨の価値やステータスを上げたければ、その答えはシンプルで、自ら広めれば良いだけなのです。

次回は、「トークン」についてご紹介します。

執筆者プロフィール : 中島 宏明(なかじま ひろあき)

1986年、埼玉県生まれ。2012年より、大手人材会社のアウトソーシングプロジェクトに参加。プロジェクトが軌道に乗ったことから2014年に独立し、その後は主にフリーランスとして活動中。2014年、一時インドネシア・バリ島へ移住し、その前後から仮想通貨投資、不動産投資、事業投資を始める。
現在は、SAKURA United Solutions Group(ベンチャー企業や中小企業の支援家・士業集団)、しごとのプロ出版株式会社で経営戦略チームの一員を務めるほか、バリ島ではアパート開発と運営を行っている。
オフィシャルブログも運営中。