ブームは去ったかのようにも感じる「仮想通貨」ですが、その普及は世界中で着実に進んでおり、今後もさまざまなシーンでの活用が期待されています。本連載では、「仮想通貨に興味はあるけれど、なにからどう手を付ければいいかわからない」というような方向けに、仮想通貨に関連するさまざまな話題をご紹介。仮想通貨を2014年より保有してきた筆者の経験から、なかなか人には聞きにくい仮想通貨の基礎知識や歴史、未来像などもわかりやすくお伝えします。

  • 仮想通貨取引所ハッキング事件

仮想通貨取引所ってなに?

今回は、「仮想通貨取引所ハッキング事件」についてご紹介します。

まず「仮想通貨取引所」について説明しましょう。
この言葉は、「マッチングサイト」と言い換えることができます。

つまり、「仮想通貨を買いたい人」と「仮想通貨を売りたい人」が集まる、オンライン上のサイトのことを指しています。オンラインですから、どこかにリアルな場所が存在するわけではありません。世界初の仮想通貨取引所は、2010年2月6日に公開された「Bitcoin Market」です。ちなみに日本では、仮想通貨取引所のことを「仮想通貨交換業者」とも呼んでいます。

仮想通貨取引所は、誰でも始められるの?

日本で仮想通貨取引所を始めるためには、金融庁に「仮想通貨交換業者」として登録する必要があります。2017年4月に施行された改正資金決済法によって、登録が必須になりました。

2017年9月29日には、11社の取引所が金融庁に登録されました。当時登録された取引所は、以下のとおりです。

・株式会社マネーパートナーズ
・QUOINE株式会社
・株式会社bitFlyer
・ビットバンク株式会社
・SBIバーチャル・カレンシーズ株式会社
・GMOコイン株式会社
・ビットトレード株式会社
・BTCボックス株式会社
・株式会社ビットポイントジャパン
・株式会社フィスコ仮想通貨取引所
・テックビューロ株式会社(Zaif)

このほかに、「みなし業者」として19社が登録されました。
みなし業者とは、法律が施行される前から仮想通貨交換業を行っていて、かつ金融庁への申請手続きを始めている業者のことを指します。

アメリカのニューヨーク州では、ニューヨーク金融サービス局が2014年7月16日にビットコイン関連事業者のライセンス制度「ビットライセンス」を発表し、2015年8月に施行しました。

ビットライセンスは、ビットコインやその他の仮想通貨関連事業に関する法律です。法定通貨と仮想通貨の両替、仮想通貨の送受金、仮想通貨の管理や発行を行う場合は、ライセンスが必要になると定められています。2018年6月までに、以下の7社が同ライセンスを取得しました。

・ビットフライヤーUSA
・コインベース
・ザポ
・ジェネシス・グローバル・トレーディング
・XRP II
・サークル
・スクエア

日本とアメリカでは、監督官庁の許認可や登録が必要になった仮想通貨取引所ですが、世界の多くの国ではまだルールがありません。そのため、マッチングサイトさえ作れば誰でも仮想通貨取引所を始められるのが現状です。

日本の仮想通貨取引所は金融庁への登録が必須だから安心?

残念ですが、全くそんなことはありません。
2018年1月に、「コインチェック」という仮想通貨取引所で約580億円分の仮想通貨・ネム(NEM)がハッキングされた事件は記憶に新しいと思います。このハッキング事件は、金融庁による仮想通貨取引所の登録制が施行された後のことです。

コインチェックは、ユーザー毎にウォレット(銀行でいう口座のようなもの)を管理せず、1つのウォレットでユーザー全員分の仮想通貨を管理していたそうです。この場合、1つのウォレットがハッキングされれば、ウォレット内の仮想通貨すべてを盗まれてしまいます。また、コールドウォレットといったオフラインでの管理を行わず、ハッキングリスクの可能性があるオンラインだけで管理していたことも問題です。これは、極めてずさんな管理体制と言えるでしょう。「政府公認だから安心」というのは幻想に過ぎません。

実は世界中で起きている!? 仮想通貨取引所ハッキング事件

仮想通貨取引所のハッキング事件で最も有名なのは、マウントゴックス事件でしょう。同事件は2011年6月19日に発生し、75万BTC(BTC=ビットコインの単位)を超えるビットコインのほか、購入用の預り金28億円が消失しました。

ほかには、2012年9月のビットフロア事件(2万4,000BTCが消失)、2014年3月のポロニエクス事件(消失数は未公開)、2015年1月のビットスタンプ事件(1万9,000BTCが消失)、2016年8月のビットフィネックス事件(12万BTCが消失)なども発生しています。

2011年に起きたマウントゴックス事件によって、日本でのビットコインの知名度は急激に上がりました。ネガティブなニュースによってビットコインが有名になったため、今でもビットコインに対して悪い印象を持っている人は多いでしょう。

当時のニュースでは、「ビットコイン倒産」という見出しをよく見ました。ビットコインは特定の会社が運営しているわけではありませんが、その当時はそれだけビットコインの情報が少なく、理解されていなかったということです。カタカナで「ビットコイン」と検索しても、私がビットコインを知った2013年の終わり頃は、ほとんど情報がヒットしませんでした。

世界中で発生している仮想通貨取引所のハッキングですが、ハッキングされているのは仮想通貨の仕組み(ブロックチェーン)そのものに問題があったからではなく、各取引所のセキュリティーに問題があったからです。ブロックチェーン自体がハッキングされたことは、一度もありません。

次回は、ハッキング被害に遭わないための「仮想通貨の保管方法」についてご紹介します。

執筆者プロフィール : 中島 宏明(なかじま ひろあき)

1986年、埼玉県生まれ。2012年より、大手人材会社のアウトソーシングプロジェクトに参加。プロジェクトが軌道に乗ったことから2014年に独立し、その後は主にフリーランスとして活動中。2014年、一時インドネシア・バリ島へ移住し、その前後から仮想通貨投資、不動産投資、事業投資を始める。
現在は、SAKURA United Solutions Group(ベンチャー企業や中小企業の支援家・士業集団)、しごとのプロ出版株式会社で経営戦略チームの一員を務めるほか、バリ島ではアパート開発と運営を行っている。
オフィシャルブログも運営中。