ブームは去ったかのようにも感じる「仮想通貨」ですが、その普及は世界中で着実に進んでおり、今後もさまざまなシーンでの活用が期待されています。本連載では、「仮想通貨に興味はあるけれど、なにからどう手を付ければいいかわからない」というような方向けに、仮想通貨に関連するさまざまな話題をご紹介。仮想通貨を2014年より保有してきた筆者の経験から、なかなか人には聞きにくい仮想通貨の基礎知識や歴史、未来像などもわかりやすくお伝えします。

貸仮想通貨(レンディング)ってなに?

貸仮想通貨は「Lending」または「Crypto Lending」などと呼ばれ、文字通り仮想通貨を貸し出すという意味の言葉です。ひと言でいえば、仮想通貨の定期預金のようなものです。一定期間、仮想通貨を預ける(貸し出す)ことで、定められた利息のようなものを受け取ることができます。預ける先は仮想通貨取引所で、利息は預ける期間や取引所によって異なります。日本の仮想通貨取引所でも、貸仮想通貨サービスを行っているところがあります。

定期預金のようなものってどういうこと?

普段、日本の銀行を利用していると感じないかもしれませんが、銀行預金も投資のひとつです。資産(お金)を銀行・金融機関に預ける(貸し出す)ことで、利息を受け取っています。

日本の銀行の金利は低いですから、利息で利益を実感できる人は相当な資産家だと思いますが、かつてはゆうちょの定期預金が年利7%台だった時代もありました。元本を2倍にする場合の投資期間を概算で求められる「72の法則」によれば、約10年で元本が倍になる計算です。今は定期預金でも年利0.01%ほどなので、元本が倍になるには7200年もかかりますね。

銀行の定期預金と貸仮想通貨(レンディング)の違いって?

「一定期間、資産を預けて利息を受け取る」という意味では、銀行の定期預金と貸仮想通貨は似ています。しかし、預ける(貸し出す)相手が全く異なります。銀行や金融機関は、国が定める厳しい審査をクリアして設立されていますが、海外の仮想通貨取引所は決してそうではありません。

第12回の記事でも触れたとおり、日本のように仮想通貨取引所を金融庁が管理している国のほうが少ないのが現状です。海外の仮想通貨取引所で貸仮想通貨サービスを利用する場合は注意が必要でしょう。また、日本の銀行・金融機関にお金を預ける場合は、1,000万円までは預金保護(ペイオフ)の対象になります。しかし、貸仮想通貨の場合は元本が保証されるわけではありません。

貸仮想通貨(レンディング)のメリットは?

貸仮想通貨のメリットとしては、以下の2点が挙げられるでしょう。
・仮想通貨取引所に預けるだけで保有している仮想通貨が増える
・毎日トレーディングする必要がない

貸仮想通貨(レンディング)サービスで貸し出せる仮想通貨の種類や最低貸し出し枚数、利率、貸し出し期間は取引所ごとに異なります。ビットコインしか貸し出せない仮想通貨取引所もあれば、その取引所が取り扱っている仮想通貨全てが対象というところもあります。

貸仮想通貨(レンディング)のデメリットは?

反対に、貸仮想通貨のデメリットとしては以下の2点が挙げられます。
・貸出期間中は、その仮想通貨の売買や送金ができない
・仮想通貨取引所の倒産(貸し倒れ)や業務停止などの可能性がある

デメリットというよりは、リスクといったほうが正確かもしれません。仮想通貨の価値は大きく変動することがありますので、価格暴落が起きても放っておくことしかできません。もちろん、長期保有すれば再び回復・価値上昇する可能性もあります。また、取引所の経営破綻や金融庁からの業務停止命令によって、貸し出した仮想通貨が帰って来ずに貸し倒れになることも考えられます。

法定通貨の融資を受けられる仮想通貨ソルト(SALT)

ソルト(SALT)という仮想通貨では、ビットコイン、イーサリアム(イーサ)、リップル(XRP)などの仮想通貨を担保にして法定通貨の融資を受けることができます。SALTは塩という意味ではなく、「Secured Automated Lending Technology」の略です。

ソルトを保有しているソルトホルダーは、保有している仮想通貨に応じて法定通貨の融資を受けることができます。仮想通貨を法定通貨に換えることなく、必要なときに法定通貨を借りることができるサービスです。

今後は、仮想通貨取引所との貸仮想通貨(レンディング)だけでなく、個人向けや企業向けに仮想通貨を担保とする融資サービスや、仮想通貨自体を融資するサービスが普及していくかもしれませんね。

次回は、「ビットコインATM」についてご紹介します。

執筆者プロフィール : 中島 宏明(なかじま ひろあき)

1986年、埼玉県生まれ。2012年より、大手人材会社のアウトソーシングプロジェクトに参加。プロジェクトが軌道に乗ったことから2014年に独立し、その後は主にフリーランスとして活動中。2014年、一時インドネシア・バリ島へ移住し、その前後から仮想通貨投資、不動産投資、事業投資を始める。
現在は、SAKURA United Solutions Group(ベンチャー企業や中小企業の支援家・士業集団)、しごとのプロ出版株式会社で経営戦略チームの一員を務めるほか、バリ島ではアパート開発と運営を行っている。
オフィシャルブログも運営中。