「名進研」という塾をご存じだろうか。関東・関西圏の方にはあまりなじみがないかもしれない。それもそのはず、名進研は東海地方のみに展開する塾なのだ。しかし、この地域の私立中学の合格者数では圧倒的な強さを誇っている。
近年、日能研、浜学園などの大手塾が進出する中、2016年の入学実績では、愛知県内の男子トップ校・東海中学では163名(募集定員400名)、女子トップ校・南山中女子部では77名(募集定員200名)の合格者を輩出。合格者数ナンバー1の座を獲得し続けているのだ。
今回は、名進研について2回に分けてご紹介する。1回目は、圧倒的な合格者数を生み出す秘密について同社取締役 教育事業本部の金澤篤部長にうかがった。
地域密着型の塾、情報力が合格へ導く
昭和59年(1984)に設立し、30年以上前から私立中学と一緒に東海地方の中学受験の土壌を開拓してきたという同塾。一番の強みはやはり、「地域密着型を貫いていること」だ。その強みがわかるサービスの1つとして、私立中学の先生を招いて開く学校説明会がある(毎年5月中旬に開催)。「保護者の方に事前に中学校への質問事項を書いてもらい、先生にその内容を踏まえて話をしていただくようお願いしています」と金澤さん。これにより、保護者は自分が今聞きたい、レアな情報が得られる。
もちろん、この説明会に参加できるのは同塾の基本コースとなっている「練成教室」に通う家庭のみ。"よくぞここまで語ってくれた"という内容の話が聞けることもあり、利用者の魅力になっているという。これは、学校と塾との信頼関係がなければできないことだろう。
また名進研が実施する公開模擬試験でもその情報力が如何なく発揮されている。たとえば小学6年生が秋以降に受験する「志望校別プレ入試」。これは東海地区最難関校の東海中学、南山中学女子部をはじめとした学校別の模擬試験である。金澤さんは「それぞれの模擬試験は各中学校の出題傾向を綿密に分析検討したうえで作成されています。まさに来春の入試予想問題といえます」と、その特長を語ってくれた。この模擬試験の受験者数は実際の各中学校の受験者数の50%以上にあたるとのことだ。
中学生レベルの記述力を育てる仕組み
東海地方の中学入試は上位校に限らず記述問題の出題が多い。そのため指導面では、記述力をつけることを重視しているという。圧巻なのは練成教室の小学6年生全員が、中学生レベルの記述問題を扱ったテキストを学習するということ。結果として、先程紹介した「志望校別プレ入試」の記述問題の正答率を名進研生とそれ以外の受験生で比べると、名進研生の正答率の方が高いというデータもあるそうだ(2014年11月実施「東海中プレ模試」など)。また、早期に記述力を鍛えることができるように小学4年生には「計算・記述特訓講座」も用意されている。
これらの学習を指導する講師の育成も抜かりがない。講師としての採用内定者には、入社に向け8月以降、半年間の研修を実施。入社後も厳しい研修は継続され、講師としての力量を高められるよう徹底して鍛えられるそうだ。その上で各講師の授業の様子は毎回ビデオカメラでチェックがなされ、生徒や保護者によるアンケートでも評価を行う。
一般的な大手塾では、1人の講師が複数の校舎で指導を掛け持ちしていることもあると言うが、同塾では1校舎専任制をとっているという。金澤さんは「その校舎の専属教師として指導にあたることで生徒の学習状況も熟知でき、また保護者とのコミュニケーションも深まるので、信頼関係が築かれます」とその意義を語ってくれた。
どっかり地元に根を下ろし、私立中学受験界をリードする名進研。次回は、同塾のカリキュラムや指導内容について紹介する。