「恋愛とは「幻想」を共有しあうもの」……この言葉はかつて、私が恋愛に悩んでいる頃に、ある作家先生がアドバイスしてくれた言葉です。男も女もお互いにそれぞれの「恋愛幻想」があり、その幻想の物語を共有できるから恋が生まれ、共有し続けることが「恋愛」なのだと。

恋愛とは幻想を共有しあうものという視点で、今、恋愛に効く処方箋を2つお話します。

恋は錯覚

1つ目は「錯誤帰属」というワード。恋は錯誤帰属という一種の「錯覚」が引き金になって、始まります。吊り橋効果などで有名なあの原理です。どんなところが魅力的だったなどの理由は後づけであり、本来はあまり意味をなしません。

「恋愛は一過性の精神疾患のようなものである」というドラマのセリフを借りなくとも、臨床心理学者のフランク・タリス、「愛は4年で終わる」で有名な進化人類学者エレン・フィッシャーをはじめさまざまな学者によって、恋愛状態は「心酔」という精神病的な異常な興奮状態に入ると研究されてきました。恋愛とは、「感情をつかさどる脳の辺縁系領域の活動」なので「思考を司る前頭前野の活動」ではじめようとしても始まりません。

恋とは本来的に、理屈の通用しない本能的な意思決定の産物なのです。今はやりの恋愛病についてみていきましょう。

テクニックを次から次へと求める病
理屈の通用しない意思決定のプロセスに、むやみやたらにテクニックを使ってもうまくいくわけがありません。彼がアヒル口に燃える男性ならば「アヒル口」をすれば、錯覚に火をつけることができるかもしれません。彼が家庭的な所作に燃える男性ならば「サラダをとりわけ」すれば、恋の錯覚が芽生えるかもしれません。テクニックとはこうして、相手の男性の本能的に燃えるPOINTを見つけて、タイミングよく繰り出すことで効果を得るものです。

ときめかない・いいオトコがいない病
「ときめかない」「いい男がいない」のではなくて、感情が思考によってブロックされているのです。それらのブロックの正体は、たいてい「傷つきたくない」「失敗したくない」「周囲に恥ずかしくない(自慢できる)男性を選びたい」という考えです。

昨今相談を受けていても顕著な光景は「絶対に浮気しない男性の見分け方を教えてください」「出世するタイプの男性は? 」「彼はこんな人なんですが、出世できますか? 」と条件にときめこうとしている女性を多くみます。人間の根本に逆らって、条件にときめき、なんとかものにしてみるものの、心が頭についてこず、「ときめかないんで、別れます」「やっぱり不倫の彼が忘れられません」との始末です。

ここから抜け出すには、頭を使うことをやめること。そのためには一番やっかいな「自己防衛」心を手放すことです。

「共有幻想」で好きをひきだせ

私は恋をしている。彼になんとしても振り向いてもらいたい! という女子に、もう一つの処方箋「社会的交換理論」をだしましょう。社会的交換理論とは、「人間は自分の利益が最大化されるように行動する」という考え方です。これを逆手にとると、好きな人と恋愛をはじめる確率が上がります。

人は利己的で自分の利益が最大になるように行動しますが、報酬を与えてくれた相手にはお返しをしようと行動もします。つまり、「利益」の先出しで彼を振り向かせることができるというわけ。それも、従来の押し売り商法ではなく、共有幻想商法を使います。従来の振り向かせテクニックは、自分の素晴らしいところを彼に売り込んで振り向いてもらおうという手法。もしも、彼が魅力に感じることが「自分の素晴らしい」ところなのであれば、振り向いてくれますが、そうでない場合には見事に玉砕します。また、この手法ですと「いいな」と少なくとも男性が思っていないとそもそもアピールにも気づいてもらえないという欠点があります。

万能な共有幻想は「甘えられる女性」
そこで、利益の先出しを行い、好意の返報をひきだす「共有幻想」商法を使うのです。この商法は彼の恋愛幻想を私が叶えられますよ~と報酬を与え、返報性をひきだすもの。ただ、出会ったばかりでは「彼」がどんな幻想を共有したいのかわからないという人には比較的万能な「幻想」をご紹介します。

それは「甘えられる女性」という幻想です。社会学者の山下さんがお話になった有名な言葉があります。「日本の男には3人のママがいる。生みの母親、母親のかわりをする妻、そしてお金を払ってでも甘えたい飲み屋のママ」つまり、子供のような「甘えん坊」なのですよ。女性が男性に甘えたいように男性も女性に甘えたい。

甘えさせてみると、好きな彼を振り向かせられますよ。ただし、振り向かせたら、甘えさせがいつのまにか尽くし過ぎなんてことにはご用心。まずは恋を始めるなら「甘えられる女」を演じてみるのもよいでしょう。

※画像は本文と関係ありません


<著者プロフィール>
塚越友子
東京女子大学大学院卒業後、編集プロダクション、大手企業の広報室長をへて、銀座ホステスに転身。相手の欲求を察知し感情を満たす接客話法で、男女問わず良好な人間関係を築くためのコツを見つけ出し、No.1となる。現在は、大学院での専門性と銀座の経験から、誰もが抱える孤独と不安を解決することで、より良い人生を歩んでもらうよう、感情と人付き合いの悩みを専門に援助を行っている。

ナカイの窓(日テレ)TVレギュラー出演・新聞・雑誌などメディアでも活躍中。著書の代表作は「昼間は心理カウンセラー銀座NO.1ホステスの心をつかむ話し方」(こう書房)がある。

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