12月10日、化粧品大手のコーセーが「グローバル戦略発表会」を実施。同社の小林一俊社長らが登壇し、タイの人気ホリスティックウェルネスブランド「PANPURI」(パンピューリ)を展開する「PURI CO.,LTD.」(ピューリ社)の子会社化について説明した。

■地域に根付いたブランド獲得の第1弾

ピューリ社が展開する「パンピューリ」は、アユタヤ王国時代から記録されているハーブやエッセンシャルオイルなどの植物を使用し、伝統的なウェルネスアプローチを提供するタイ発の化粧品ブランド。

東洋やタイの伝統にインスパイアされた香りを核とする商品群は、「フレグランス」「バス&ボディ」「スキンケア」「ホームフレグランス」の4カテゴリで構成されている。

流通チャネルの多くはショッピングモールや百貨店などの店舗販売で、海外では中国・欧州・日本、直近では香港へと進出。自社マーケットプレイスでのオンライン販売や、ラグジュアリーホテルでのスパサービス事業なども展開する。

そんなピューリ社をグループに迎え入れた背景として、コーセー取締役経営企画部長の原谷美典氏は、コーセーが11月に発表した「新中長期ビジョン」について紹介。外部パートナーとの連携や外部アセットの活用を推進し、多様なニーズに対応やグローバルでの事業成長を加速させる「脱・自前」の方針を、中期戦略の中で掲げていることを説明した。

次なる成長領域としてはASEAN・インドから成るグローバルサウス市場を、中華圏市場などと並行して強化。同地域に根付いたブランド獲得の第1弾として、美容大国・タイのピューリ社をグループに迎え入れることになったという。

経営企画部経営戦略室長の田中健一氏は、すでにタイ国内で確固たるブランド地位を築くピューリ社の子会社化によるシナジーについて説明した。

「コーセーが保有するグローバル販売ネットワークによる、さらなる売上アップサイド効果。コーセーの確立されたものづくり機能が加わることによる、開発や製造におけるコスト削減。パンピューリのウェルネス価値の高いスパの施術サービス、当社が長年培ってきた皮膚科学・ビューティーテック領域の研究成果などが掛け合わさることによる、新しいビジネス価値の創出が期待されます」

■ウェルビーイング領域への事業拡大を目指す

近年、劇的な急成長を遂げているピューリ社の今年の売り上げは11億タイバーツ(約48億円)の見込み。

12月10日に株式譲渡契約が締結され、コーセーは議決権の79.89%(106万2702株)を取得する。取得価格は120~130億円程度とのことで、株式の譲渡実行は年内を予定しており、残る株式の全ても3~5年を目途に取得する予定だという。

コーセーの小林社長は、「おもてなしやホスピタリティの文化が根付いている点でタイと日本には共通点があります。タイはアユタヤ王国時代から植物オイルで香りを楽しむ文化が存在する美容大国であり、歴史ある日本の化粧文化にも通じる部分です」とコメント。

ものづくりに対する深いこだわりなどにおいて両社間の共通点も多いとし、その親和性が高さを強調した。

「機能側面だけではなく香りや感触といった官能品質にも強いこだわりがある点は、当社との大きな共通点です。また、当社グループの新中長期ビジョンでは化粧品を核としながら、ウェルビーイング領域への事業拡大を掲げています。ウェルネス価値の提供を中心とするブランド事業をピューリ社が展開している点は、当社グループの今後の方向性とも一致しており、私もこれからの展開を楽しみにしている次第です」

ピューリ社のウォーラウィト・シリパーク(Vorravit Siripark)CEOは、2003年にブランドを創業した自身の原体験について語った。 「タイで生まれ育った私は幼い頃、祖母が庭から摘んだジャスミンの花を水に浮かせて、その香りをよく楽しんでいました。また、夏場にはジャスミンを浮かばせたジャスミン水を飲み、熱を冷ますといった楽しみ方もしていました」

こうした経験などもあり、「パンピューリ」ではジャスミンの香りを中心に据え、様々な商品やサービスを展開してきたという。

「コーセーブランドの一員に加わったことは、パンピューリのマイルストーンの中でも非常に大きなステップ。体・心・魂の調和を重視したラグジュアリーな香りを、世界中の皆様のお手元へ届けられることを楽しみにしております」