消費税が8%から10%に上がる際、消費者にかかる2%の負担増は、購入する物の金額が大きくなればなるほど増えてしまいます。消費税10%の前と後のどちらに購入した方がお得なのか、前回記事では車の購入についてみましたが、マイホームとなればまた金額の桁が違います。
ちょっとのタイミングのズレで家計へのインパクトが大きく変わる可能性がありますから、マイホームの購入を検討している人は、さらに慎重に考えたいですね。
マイホームにかかる税金は
ひとくちにマイホーム購入といっても、その取り引きには消費税がかかるものとかからないものがあります
仮に購入に必要な総額が4,000万円だとしても、課税対象となる価格が2,000万円ならば、実際に支払う消費税は「4,000万円×8%=320万円」ではなく、「2,000万円×8%=160万円」になります。少し安心しましたか? それでも、10%に増税されると「2,000万円×10%=200万円」となり、消費税負担が40万円増えることになってしまいます。
このほかにも、マイホーム購入時には印紙税や不動産取得税、固定資産税などさまざまな税金や費用がかかります。頭金の支払いや今後の住宅ローンなどで家計に大きなインパクトを与えますから、削れるものはできる限り削りたいものです。
購入のタイミングには注意が必要
このような状況をみると、がんばって増税前に購入したいと考える人もいるかもしれません。ただし、予定通りに2019年10月1日から消費税が10%になるとしても、「2019年9月30日までに購入すればいい」というわけではないので注意が必要です。
消費税が8%のときに購入するためには、タイムリミットが2つあります。
(1)2019年9月30日までの「引渡し」
(2)2019年3月31日までの「工事請負契約の締結」
マイホームのような買い物は、ブティックの店頭で洋服を買うように「お金を払ったらすぐに現物をもらえる」というわけではありません。
すでに不動産売買契約も締結し、手付金も払っているという場合でも、残金決済、不動産登記などの手続きがあります。契約してからすぐに引渡しを受けられるものではなく、完成物件でも早くて1カ月、注文物件だと6カ月程度かかると言われています。駆け込み購入が増える時期には、引渡しまでの期間をさらに要する可能性も出てきます。
一方、注文住宅を建てる場合は、天候などのさまざまな事情で完成時期がずれるケースもあるため、経過措置が講じられています。2019年3月31日までに請負契約を締結すれば、引渡しが2019年10月以降でも8%が適用されます。
どちらの場合も「増税までに約1年ある」と思いがちですが、実際には今から半年程度で購入を決定しなければならない計算になります。「すでにマイホーム購入を検討していて、購入資金も準備している」「半年以内に納得いく物件(建築場所)にめぐり合った」などの条件に該当する人は、増税前のできるだけ早い時期に決定するのがいいでしょう。
消費税アップを待つという選択もアリ
そもそも住宅は、「人生のなかで最も大きい買い物」とも考えられるだけに、税制や政府措置などもさまざまに講じられています。
例えば、両親や祖父母などからの「住宅取得資金等の贈与の非課税制度」。平成30年現在、700万円までの住宅取得資金贈与に対しては贈与税がかかりません。これが消費税が10%に上がった場合、700万円だった非課税枠は2,500万円(平成31年度中の贈与)へ一気に上がります。
また、詳細は公表されていませんが、政府は消費税増税後の買い控えを防ぐための対策案を検討している様子。住宅については、現在の住宅ローン減税の拡充や、「すまい給付金」の上限額の引き上げなどが検討されているとの報道もあります。
数千万円といわれるマイホームですから、ほとんどの人は住宅ローンを組んで購入するでしょう。長期間にわたってお金を借りることになりますから、購入時期を検討するには「金利」も重要な要素です。
今後の日本経済や金利環境がどう動くのかは誰にもわかりませんが、ずっと低金利が続いている昨今、住宅購入を検討している人が多いのも確かです。予定されている消費税増税と合わせてマイホーム購入の判断材料にするのもいいでしょう。
その際には、家族の将来のライフプランや住宅ローン減税なども含め、しっかりとした住宅ローン計画を立てることが何より大切です。
■ 筆者プロフィール: 續恵美子
女性のためのお金の総合クリニック「エフピーウーマン」認定ライター。ファイナンシャルプランナー(CFP)
生命保険会社で15年働いた後、FPとしての独立を夢みて退職。その矢先に縁あり南フランスに住むことに――。夢と仕事とお金の良好な関係を保つことの厳しさを自ら体験。生きるうえで大切な夢とお金のことを伝えることをミッションとして、マネー記事の執筆や家計相談などで活動中。