消費税が上がる前は、少しでもお得に買おうと「駆け込み消費」がされるケースがよくあります。同じ商品を買うにしても、増税前と増税後では財布から出て行く金額が変わるので当然と言えるかもしれません。しかもそれが車のように金額の大きい物だとなおさらです。
そこで今回は、車を買うなら消費税が10%になる前と後のどちらに購入したほうがいいのか考えてみましょう。
車購入時にかかるすべての税金をチェック
単純に考えれば、消費税が8%から10%に上がると消費者の負担が2%増える計算になります。仮に車の価格が200万円なら4万円、150万円なら3万円の負担増です。車のように値の張るものの購入は、3~4万円の消費税増税だけでは簡単に決断を下せませんが、それでもやはり、消費税が10%になってから買うとなると「損をした」気持ちになる人も多いでしょう。
ところが、車を購入する際には消費税以外にもいくつかの税金がかかるため、これらのお金も考慮する必要があります。これらの諸税については、すでに決められている事項がいくつかありますので、まずは現状とともに整理してみましょう。
車の購入時に消費者が払うお金は次のようになります。
「車両本体価格+消費税(1)+自動車取得税(2)+自動車重量税(3)+自動車税(4)」
それぞれの税率は以下のようになっています。
(1)消費税: 車両本体価格およびオプショナルパーツとの合計額から一定の金額を控除した価格(車両取得価額)の8%
(2)自動車取得税: 車両取得価額の3%。軽自動車と営業車は2%
(3)自動車重量税: 自家用乗用車の場合は車両の重さによって税額が変わり、0.5トンごとに年4,100円。軽自動車は車両重量に関わらず年3,300円
(4)自動車税: 自家用乗用車の場合は総排気量により税額が変わり、総排気量1リットル以下で29,500円、1リットル超からは0.5リットル刻みで税額が上がります(最高111,000円)。軽自動車は一律10,800円
そして、これらの諸税は、増税開始予定の2019年10月からはこのように予定されています。
(1)消費税: 8%→10%
(2)自動車取得税: 消費税が10%になると廃止
(3)自動車重量税: 変更なし
(4)自動車税: 消費税が10%になるのに合わせて購入年の自動車税および軽自動車税に上乗せする「環境性能割」を導入。燃費基準の達成度によって税率0~3%になる予定
つまり、自家用乗用車の場合、「2019年10月からは消費税が2%分増えるけれども、自動車取得税が3%分減る。ただし、購入する車の燃費によっては環境性能割が導入されるため、支払総額は1%分下がるかもしれないし2%分上がるかもしれない」ということになります。
環境性能のいい車ならばエコカー減税がお得?
2019年10月からの変更点を見ると、「消費税が上がる前に買うかどうか」も大切ですが、「どんな車を買うか」によって家計への負担が変わってくることがわかります。これからは環境性能の良い車を買うのが税金面ではお得と言えるでしょう。
そこで、現在実施されているエコカー減税について確認してみましょう。
エコカー減税では、国土交通省が定める排ガス基準と燃費基準の達成状況により、上述の(2)自動車取得税が20%~100%、(3)自動車重量税は25%~100%の範囲で減免されます。また、「グリーン化特例」として(4)自動車税が50~75%減税されます。ただし、エコカー減税・グリーン化特例は2019年3月31日までに(重量税は4月30日まで)新車登録を行うことが条件です。
これまで見た、車購入時の諸税をまとめると下の表のようになります。ここでは、自家用乗用車を新車で購入するものとしています。
エコカーを買うのなら、増税前後にこだわらず、2019年3月末までが良さそうです。エコカー減税へのこだわりがなければ、増税後に環境性能の良い車を購入するのもいいでしょう。
税負担はできるだけ少なくしたいものですが、そもそも車両価格の大小も重要です。税制の優遇時や増税時には、ディーラーによるキャンペーンが実施されることもありますし、値引き交渉で車両価格自体を安くできればそれに越したことはありません。一般的に考えると、買い控えが予想される増税後のほうが値引き幅が大きくなるとも思えます。
政府は駆け込み消費や買い控え防止対策も検討しているとの報道もありますから、動向をしっかり見据えることも大切です。そもそも車の購入・買い替えが本当に必要かどうかも考えながら、増税前後の購入を判断するようにしてください。
■ 筆者プロフィール: 續恵美子
女性のためのお金の総合クリニック「エフピーウーマン」認定ライター。ファイナンシャルプランナー(CFP)
生命保険会社で15年働いた後、FPとしての独立を夢みて退職。その矢先に縁あり南フランスに住むことに――。夢と仕事とお金の良好な関係を保つことの厳しさを自ら体験。生きるうえで大切な夢とお金のことを伝えることをミッションとして、マネー記事の執筆や家計相談などで活動中。