「人生100年時代」と言われる現代。20代でも早いうちから資産形成を進めることが求められています。一方で、どのように投資・資産運用の目利き力を磨いていけばいいのか、悩んでいる方は多いのではないでしょうか。
この連載では、20代の頃から仮想通貨や海外不動産などに投資をし、現在はインドネシアのバリ島でデベロッパー事業を、日本では経営戦略・戦術に関するアドバイザーも行っている中島宏明氏が、投資・資産運用にまつわる知識や実体験、ノウハウ、業界で面白い取り組みをしている人をご紹介します。
前回に引き続き、「ブロックチェーンの技術を利用し、経済を『共通の規格』で扱えるようにする」という理念の下、ブロックチェーン、ゼロ知識証明を主軸とした最先端技術を活用してブロックチェーン技術の普及を推進するNextmerge株式会社(代表:杉田真也)の共同創業者・飯島春樹さんにお話を伺いました。
XRとweb3の可能性
前編では主に「web3とウォレット」についてお伝えしましたが、後編ではより広い視点からweb3の可能性についてお聞きしました。飯島さんは、「XR、特にAR(拡張現実)とweb3、ブロックチェーンの可能性を感じる」と言います。
「今はまだ、NFTを持っていると言っても端末に入っているだけです。保有している実感、送ってもらった実感は薄いのではないでしょうか。
しかしARが普及すれば、メタバース空間でNFTを見たり、アバターで触れることができるようになります。さらに、NFTを保有している人だけに特定のARを見せることもできます。また、メタバース上でNFTアイテムを装備できれば、NFTを保有している実感も増すのではないかと思います。メタバース上だからできる新しいファッション性が生まれたり、新しいユーティリティーが生まれる可能性もあります。
DAOなどのコミュニティーで行われるユーザー同士の投げ銭も可視化されるので、応援している/応援されているという実感も得やすいと思います。リアルで例えると、路上ライブの投げ銭がわかりやすいかもしれません」と、飯島さんは言います。
ビットコインにせよNFTにせよ、「儲かる儲からない」という点ばかりに注目が集まりがちですが、もともとビットコイン等の暗号資産には、「国境のない世界共通通貨」という高い利便性の側面もあります。国境のないメタバース上での決済と暗号資産の決済利用は、相性が良いでしょう。
さらに飯島さんは、「web3の課題には、暗号資産がないとブロックチェーンを利用できない(ガス代)という問題もあります。
ユーザーに合った広告をストレスのない方法で表示し、広告を閲覧することで、ガス代をフリーにすることも今後実現していきたい点です。
ブロックチェーン情報を利用して、より価値のある広告を作ることができます。 XR空間で、広告の内容や言語・音声を最適化して表示することも可能です。広告の在り方も、変化していくと思います」と語ります。
今後は、web3やメタバース、AIネイティブ世代が増えていくことになりますから、広告モデルやビジネスモデル、生活スタイルなどにも変化が起こりそうです。
コミュニティー内で小さな経済圏をつくる
今回、飯島さんのお話を伺っていて特に印象に残ったのは、「今までの資本主義社会だと価値がなかったものでも、小さなコミュニティー内だと価値がつくことがあります。もしかすると、そんな些細なことが人間にとって幸せなのかもしれないと思います。
社会全体では評価されなくても、おにぎり一個買えるくらいの価値がつく。ひとつの価値観や既存の価値観、マジョリティの価値観に縛られない独自の幸せを追求、探究できることは、人間の本質的な幸せにつながるのではないでしょうか。
法定通貨に交換できないトークンがあっても良くて、コミュニティー内で小さな経済圏をつくれれば、その中で完結できると思います」という言葉です。
筆者は、ビットコインなどの暗号資産の誕生を「通貨の多様化」と言っています。日本円だけで生活していると「通貨の好き嫌い」を感じることはありませんが、複数の通貨を持つと好き好みも出てきます。
「ビットコインやイーサリアムの世界観が好き」になったり、「中央集権的な通貨は嫌い」になったりするわけです。企業や行政、コミュニティー、DAOが独自通貨を発行するようになれば、ますます通貨の多様化が起こります。通貨と経済圏はセットであり、日本円はある意味では「日本円経済圏の地域通貨」です。
通貨毎や経済圏毎に特徴のある働き方や生活スタイルが生まれ、働き方や生活スタイルも多様化し、ますます幸福も多様化していくでしょう。
そんな社会になると、自分の価値観の軸とも言える哲学が重要になりそうです。哲学は、日々の思考や体験、自己や他者との対話から生まれ、構築されます。日々の積み重ねが大切ですから、どんなコミュニティーに参加するにせよ真摯でありたいものです。