「人生100年時代」と言われる現代。20代でも早いうちから資産形成を進めることが求められています。一方で、どのように投資・資産運用の目利き力を磨いていけばいいのか、悩んでいる方は多いのではないでしょうか。
この連載では、20代の頃から仮想通貨や海外不動産などに投資をし、現在はインドネシアのバリ島でデベロッパー事業を、日本では経営戦略・戦術に関するアドバイザーも行っている中島宏明氏が、投資・資産運用にまつわる知識や実体験、ノウハウ、業界で面白い取り組みをしている人をご紹介します。
今回は、「Eat & Education」を軸に、子ども向けに特化した給食食育サービスと、企業向けソリューションサービスを提供している株式会社ベジリンクのfounder・塚田祥世氏にお話を伺いました。
都会生まれ都会育ちだから感じた農体験の価値
――本日はありがとうございます。まずは、ベジリンクさんの事業について教えてください。
塚田祥世氏(以下、塚田氏):ベジリンクは保育園や学校向けの給食食材配達&食育サービスの他に、「農業体験サービス」や、マンション事業者向けの「ソリューションサービス」などを展開しています。
農業体験や農家さんとの交流ができる畑ツアーを10年以上前から続けており、畑ツアー等で得た収益を子ども食堂の運営資金にする「チャリティ畑ツアー」は、今年の9月末に初開催しました。おかげさまで多くの方々にご賛同をいただき、子ども食堂は、学習支援の機会も提供する目的でNPO法人テラコヤの協力を得て開催します。(※取材時は子ども食堂の開催前でしたが、同年11月19日に豊島区にて開催)
――なぜ食や農業の世界に関心を持たれたのですか?
塚田氏:大学卒業後は会社員として仕事をしていたのですが、二十代半ばのときにふと、このままでいいのか?と思うようになりました。たまたま畑に行く機会があり、そこにはピーターラビットの世界観が目の前に広がっていて。自分が感じた畑の感動を、都会の人に伝えたいという思いが強くなっていきました。ニンジンに葉っぱが生えているという当たり前のことも、池袋生まれ池袋育ちの自分には新鮮で。野菜そのままの姿を知らなかったんです。
最初はコミュニティカフェで起業しようと考えていたのですが、当時まだ20代で経験もなかった私たちにはお金も場所も貸してもらえませんでした。これなら、「あるものやできることから始めよう」ということで、農家さんの顔が見える野菜を家庭に届けようと給食食材配達・食育サービスをスタートすることになりました。
「自然欠乏症候群」を農体験・触育で解消したい
――塚田さんが仰るとおり、食卓に出てくる状態の食べ物の見た目は知っていても、畑にどんな風にできているのかって案外知らないですね。オクラとか、意外な生え方をしてますよね。
塚田氏:そうなんです。そういう畑の光景を子どもたちにも、都会育ちの親御さんたちにも知ってほしいなって思っています。夏休みなどに帰省することがあっても、おじいちゃんおばあちゃんの家も都会化していて、なかなか畑に行ったり泥にまみれる経験はできなくなっています。子どもたちに農体験をしてもらい、農家訪問をして交流してもらいたいと思って、農家さんとの関係づくりを始めました。
最近は「自然欠乏症候群」という言葉も取り上げられるようになり、農体験の必要性を改めて実感しています。自然欠乏症候群は、自然との関わりが少ないほど、生活習慣病や慢性疲労、不眠など、さまざまな病気の発症率が高くなるという症状です。よくわからないけど常に不調だったり、なんとなく元気がなかったり。都会の子どもはストレスフルで、ぼーっとする時間もありません。共働き家庭が増え、大人と同じような生活サイクルで日々を過ごしている。そんな環境では、教育的にも良くないと思います。
私たちは、「食育」を「触育」と表現しています。それは、触れて体感してもらうことを大切にしているからです。農業や食物を五感で体験して、畑で土にまみれたり、育てたものを収穫して食べてみたり…そんなちょっとした農に触れる体験をぜひしてもらいたいなと思います。
――私もどちらかと言えば都会育ちで田舎らしい田舎もないのですが、バリ島に住んでいたときに友人の田んぼや畑に連れて行ってもらったことがあります。バナナの木とか、マンゴスチンとか。日本ではなかなか見られない貴重な体験でした。田んぼに落ちたのも良い思い出ですし、ヤゴを食べたのも良い思い出……。
「体験格差」をどう解消するか
――では次に、チャリティ畑ツアーについてもぜひ教えてください。
塚田氏:「農体験に子どもを行かせたいけど、農家の知り合いがいない」というお声も多くいただいており、ツアー参加の募集を始めると1日2日でいっぱいになるくらいです。農体験へ関心やニーズをとても感じています。 畑ツアーは今年で15年目になっていて、年に何回かですが農家さんとも交流できています。
地方で企画することもできるのですが、都会から参加する場合はどうしても遠出なってしまい参加へのハードルが上がります。そのため、千葉や東久留米などで開催しています。
社会問題としてある、子どもたちの「体験格差」をどうやったら解消できるのかを考えていて。できる限り多くの方に参加していただけるようにしていきたいなと。1日体験ですと、BBQなどの費用も含めると参加費は一人5500円。家族全員だと2万円ほどになり、ご家庭によってはかなりの負担感です。そうすると、どうしても格差が生じてしまうことになります。習い事や旅行などもご家庭の経済状況によって体験格差ができていて、子どもたちの将来に影響を及ぼすのではないかと言われています。
――会社の福利厚生で一部でも負担できたら良いのかもしれませんね。
塚田氏:そうですね。参加者の方々からは、「楽しかった」「リラックスできた」というご感想もいただいており、参加者同士の交流も生まれてリピーターの方も多くいらっしゃいます。「来ればだれか知り合いがいる」という環境で、安心感もあると思います。
畑ツアーをスタートした当時はまだ独身だった人がご家族で参加されるようになったり、まだ幼稚園児だったお子さんが反抗期になっていたりと時間の流れも実感しています。いずれはお孫さんと三世代で、という日も来るのかもしれませんね。
食物に対する感謝の芽生えは健康資産にもつながる
――コロナ以降はリモートワークの普及が進み、ストレスフルな状態が続いている親御さんやお子さんもいると思います。ワーケーションや週末農業が流行ったりもしましたが、メジャーとは言い難いですよね。農作業は運動にもなりますから、ジムより良いのではないかと個人的には思います。
塚田氏:農作業を行うことで、食物に対する感謝が芽生えると思います。実際に農体験をすると、子どもが苦手なものも「食べてみよう」となり、ひと口は食べてくれるんです。農作業をして、そこで採れたものを食べることで体がつくられ、農体験が健康にもつながります。
子どもたちには、農家さんの顔に見える野菜を食べてほしいですし、農業がもっと身近になってくれたらと思います。今は関東圏だけの活動なのですが、今後は福岡や全国でも展開していきます。そんな積み重ねが将来につながり、子どもたちの明るい未来につながると信じています。