「人生100年時代」と言われる現代。20代でも早いうちから資産形成を進めることが求められています。一方で、どのように投資・資産運用の目利き力を磨いていけばいいのか、悩んでいる方は多いのではないでしょうか。

この連載では、20代の頃から仮想通貨や海外不動産などに投資をし、現在はインドネシアのバリ島でデベロッパー事業を、日本では経営戦略・戦術に関するアドバイザーも行っている中島宏明氏が、投資・資産運用にまつわる知識や実体験、ノウハウ、業界で面白い取り組みをしている人をご紹介します。

今回は8月に開催されたWebセミナー、「住友生命『Vitality』のDX推進組織づくりの 5年にわたる実践と工夫 ~向く人を選ぶ、やらせてみる、必要な課題を与えて育てる、組織として強くする~」のレポートをご紹介します。

  • ※画像はイメージです

住友生命の「Vitality」とは

「健康になりたいけど、習慣を変えられない」という人にぴったりの保険が、住友生命のVitalityです。Vitalityは、健康増進型保険と呼ばれる新しいタイプの保険で、運動や健康診断といった健康増進活動に取り組むことで、保険料の割引や豊富な特典を得られる仕組みがあります。

Vitalityの特徴は、人間の心理を科学する「行動経済学」に基づいていること。人は目先の利益や損失に敏感で、自分に都合の悪い情報を無視しがちです。そこでVitalityでは、以下のような工夫をされています。

保険料は15%割引からスタートし、2年目以降は健康増進活動のポイントに応じて毎年変動します。「手に入れた割引率を手放したくない」という心理から、健康増進活動を継続させてくれます。また、健康診断やがん検診などをポイント化し、自身の健康状態を可視化。自分のリスクを客観的に把握することで、健康増進への意識を高めてくれます。さらに、運動を始めやすくするために、スポーツウェアやジム会員権などの特典も提供してくれます。このような新しい価値を取り入れることが、環境や自身の行動を変えるきっかけになるでしょう。

Vitality には、1週間サイクルで運動目標を設定し達成すると特典がもらえる「アクティブチャレンジ」というプログラムもあります。メリットのためにがんばることで、結果的に楽しく運動習慣を身につけることができます。

Vitalityは、一個人だけでなく社会全体にもメリットがあると筆者は感じます。健康増進活動によって生活習慣病やがんなどのリスクを減らし、健康寿命を延ばすことができるということは、医療費等の削減やウェルビーイングにつながるからです。また企業であれば、従業員の健康管理や福利厚生に活用することで、生産性やモチベーションの向上につなげることができます。地域であれば、住民同士でVitalityを通じて交流することで、コミュニティの活性化や孤立防止につながるでしょう。

Vitalityは、「リスクに備える」というリスクマネジメントだけでなく、「リスクを減らす」という予防をサポートする新しい保険です。

DXに成功公式はあるのか

そんなVitalityは、2018年にリリースされて以降、約5年で150万ものユーザーを得ています。バナナマンのCMを見たことのある人も多いのではないでしょうか。

8月に開催されたWebセミナーでは、Vitalityの人財・組織開発事例を、住友生命保険相互会社のエグゼクティブ・フェロー/デジタル共創オフィサーである岸和良氏が赤裸々に解説してくださいました。

岸氏は、「DX人材の育て方 ビジネス発想を持った上流エンジニアを養成する(翔泳社)」や「実践リスキリング(日経BP)」など、多数の書籍も執筆されていますので、DX人材の育成や組織づくり、ビジネスモデルに関心のある人はぜひ読んでみてください。

  • DX人材の育て方 ビジネス発想を持った上流エンジニアを養成する(翔泳社)

  • 実践リスキリング(日経BP)

DXは新型コロナウイルスの流行前後からよく耳にするようになりましたが、DXには一つの正解や決まった方法はなく、多くの企業が試行錯誤しています。DXを成功させるためには、どのようなステップやポイントが必要なのでしょうか?

セミナーでは、DX推進組織づくりのステップとして、「向く人を選ぶ」「やらせてみる」「必要な課題を与えて育てる」「組織として強くする」という4つのポイントについて解説がされました。これらは、人や組織のマインドセットやカルチャーを変えるために必要な要素でしょう。人材の選出は、「イノベーティブ度の高さ(新しいこともの好きか、新しいことに関心があるか)」と「能力点数の高さ(プロジェクトマネジメント力)」が重要だったと岸氏は仰います。

また「DX崩れのパターン」として、以下の3つが挙げられました。

DX崩れのパターン1は、やりたいこと決まらず、ツール導入や実証実験で終わってしまうケース。DX崩れのパターン2は、個別最適でバラバラに導入してしまうこと。「ベンダでやってください」となり、システムがバラバラで重複していることも多いそうです。DX崩れのパターン3は、要件定義能力・システム選定力が弱いこと。ベンダが何でもできると過信してしまったり、できたものが要件に合わず大幅なカスタマイズが必要で追加コストが高すぎて使ってもらえなかったりすることがあるそうです。

では、DXに成功するためには、どのような公式があるのでしょうか? 岸氏は、DX成功公式として以下の要素を挙げています。

人材がデータ・デジタル・ビジネスの仕掛け・顧客価値に強くなる

何をやるかが明確 × 経営層の意欲(経営判断や金)×組織 ×人材能力

•「何をやるか」が具体的で絞れているほど成功する
•経営層の意欲が高いほど成功する
•組織が適切であるほど成功する
•人材の能力が高いほど成功するので意識変革+教育が必要

「DXに成功公式はあるのか」という問いの答えは、人材にあるのでしょう。しかし、DX人材を育成するのは簡単ではありません。

DX人材を育成するためのステップ

岸氏は、DX人材を育成するステップとして、「経営戦略を決める」「デジタル戦略を決める(データ、デジタルを使ってどのようなビジネスを行うか)」「組織と人材の役割を決める(人材能力を定義し、足りない能力を明らかにする)」「人材を選定する・教育カリキュラムを考える・教育を実施し評価する」を挙げました。

セミナーに参加して筆者が特に印象に残ったのが、

「ピクチャーはビッグに、施策は具体的に、価値を明確に」
「最初からスケールを求めない。しかし、スケールしないものも×」
「失敗を許容する、学ぶことを大事にする」
「失敗も学びも必ず後に繋がるようなスキルを身に着ける」

などの言葉です。企業規模を問わず失敗を許さない風潮がありますが、新しいことに失敗はつきものです。だれよりも早く挑戦し、だれよりも早く失敗し、だれよりも早く再び立ち上がることが大切なのではないでしょうか。経験や教育に投資をしていれば、後からそれが糧になります。

岸氏は、「DX企画人材向け研修」「顧客価値向上力研修(2023年から社内外に提供)」「DXマインドセット研修(2019年から社内外で5年にわたって900人に実施)」「ビジネス発想力研修(2019年から社内・協業先で5年で延べ100人に実施)」「生成AI活用研修(2023年度公開予定)」などの研修にも取り組まれています。DXに関心があり、自社のビジネスに取り入れたい方は参加してみてください。