「人生100年時代」と言われる現代。20代でも早いうちから資産形成を進めることが求められています。一方で、どのように投資・資産運用の目利き力を磨いていけばいいのか、悩んでいる方は多いのではないでしょうか。

この連載では、20代の頃から仮想通貨や海外不動産などに投資をし、現在はインドネシアのバリ島でデベロッパー事業を、日本では経営戦略・戦術に関するアドバイザーも行っている中島宏明氏が、投資・資産運用にまつわる知識や実体験、ノウハウ、業界で面白い取り組みをしている人をご紹介します。

今回は、金融教育の領域で独自の活動を続ける「株のトラ組織委員会」の名古屋大学4年生・神田華栄氏(学生代表)、名城大学3年生・岡凌央氏、名城大学2年生・片野源也氏の3名にお話を伺いました。

金融や経済を深く知ることができる学生大会「株トラカップ」

――本日はありがとうございます。「株トラカップ」や上場企業レポートなどの活動を拝見しています。まずは、「株トラカップ」について教えてください。

神田華栄氏(以下、神田氏):「株のトラ」は、資産形成について学ぶきっかけを提供するために、学生を中心に活動しています。株のトラが主催している「株トラカップ」は、株の取引という実践的な体験を通して社会や経済について知り、自分たちを支えてくれている企業に興味を持ったり、さまざまな業界や世の中の動きを捉えるようになることで自分の視野を広げていくことを目指してスタートしました。

バーチャル取引なので実際に売買するわけではなく、スマホやPCで簡単に参加することができます。金融知識を深めることが目的で、中・高・大学生の学生に特化した大会です。大学院生や、休学中でも参加可能としています。

「株トラカップ ~Season1~」を2021年の10月~12月に、「株トラカップ ~Season2~」を2022年の10月~12月に開催してきました。Season2からは、大学生だけでなく中高生向けもスタートしています。今はちょうど、Season3の準備を進めているところです。

  • 「株トラカップ」表彰式の様子 写真提供:株のトラ組織委員会

――どんな経緯で「株トラカップ」を始めたのでしょうか?

神田氏:新型コロナが流行り出した頃に株のトラを発足し、ちょうどその頃に金融教育についてもメディア等でよく報じられるようになっていました。

金融について学んでから社会に出る人と、学ばずに社会に出る人との格差に危惧を感じたことと、投資自体に関心があったので「金融教育について、自分でもなにかできないか?」と考えたのがきっかけです。最初から「株トラカップ」の案はなかったのですが、「投資は危険」「投資をやっているだけで怪しい人」というバイアスをすごく感じたので、授業形式ではなくてもっと気軽に参加できるようにしようとイベント形式を検討しました。それで、「株トラカップ」の案が出てきました。

Season1のときは正直まだまだ怪しまれていて、新しい物好きというか少し変わった人たちが参加してくれたと思います。Season1を終えると自治体からご好評をいただき、衆議院議員の池田佳隆様(文部科学副大臣)からは「株のトラ組織委員会」と大会入賞者のご招待をいただいて表敬訪問も実現しました。名古屋市教育委員会へも表敬訪問をさせていただいて、 Season2からは正式に後援についていただいています。昨年からは名古屋の栄を走るトラックTVでも「株トラカップ」を取り上げていただいており、「株トラカップ」の認知度は徐々に上がっています。Season3ではどんな人が参加してくれるのか、今からとても楽しみです。

  • 栄を走るトラックTV 写真提供:「株のトラ組織委員会」

学生と上場企業の懸け橋となる「MIRAKIN」

――「株トラカップ」Season1の後には多くの反響があったようですが、ほかにも面白い取り組みを始めていますよね。

神田氏:学生向け上場企業レポートとして、「MIRAKIN(未来金融研究部)」もスタートしました。Season1大会後に、上場企業約3700社のうち約100銘柄しか取引されなかったという事実を受け、学生向けにもっとわかりやすい情報が必要だと感じたからです。

BtoC企業は、SNSやメディア、ニュース等でもよく見聞きする企業ですから、自然と情報が入って来ます。しかし、BtoB企業は学生にとっては縁遠い存在です。すごくレベルの高い技術を持っていたり、世界トップクラスの業界シェアを持っていたりするのですが、学生はその事実をほとんど知りません。それで、「小中学生でもわかる四季報」のような学生向け上場企業レポートができないか?という案が出てきました。

実際に取材に行かせていただくと、どんな企業でどんな事業をしているのか、どんなところに強みや特徴があるのか、どんな人が経営しているのか、どんな人がどんなところで働いているのか、現場の雰囲気まで知ることができました。「新幹線って、JRがつくっているわけじゃないんだ」とか、身近で普段は意識しないことや社会に興味を持つきっかけになったと思います。企業様も歓迎ムードで取材に応じてくださり、本当に嬉しいですし、始めて良かったですね。

学生にとって上場企業は高嶺の花というか、憧れの存在なのですが、有難いことに経営層や経営企画の方々に取材させていただく機会を得ることができ、レポート記事には書けないこともお話してくださるので、とても貴重な経験をさせていただいています。

正直、投資の観点からは「トレンドを押さえている企業が伸びる」と思っていたのですが、「日本を支えているのは、そういう企業だけじゃない」と気づくことができました。ニュース等では話題にならないけど、地道に着実に事業を伸ばしている企業もたくさんあることを知って、社会に見方も変わったと思います。チャートや四季報を読むことが投資や経済の勉強だと思っていたのですが、その考えも変わりました。

(後編に続きます)