「人生100年時代」と言われる現代。20代でも早いうちから資産形成を進めることが求められています。一方で、どのように投資・資産運用の目利き力を磨いていけばいいのか、悩んでいる方は多いのではないでしょうか。
この連載では、20代の頃から仮想通貨や海外不動産などに投資をし、現在はインドネシアのバリ島でデベロッパー事業を、日本では経営戦略・戦術に関するアドバイザーも行っている中島宏明氏が、投資・資産運用にまつわる知識や実体験、ノウハウ、業界で面白い取り組みをしている人をご紹介します。
今回は「オープンマインドなIFAだからできる顧客貢献」をテーマに、現役IFA法人経営者である堀江智生氏(株式会社Japan Asset Management)と福井元明氏(株式会社Wells Partners)による座談会を行いました。
堀江智生氏
福井元明氏
金融領域での顧客貢献事例
――本日はありがとうございます。早速ですが、金融領域で最近の事例があればお教えください。
堀江智生氏(以下、堀江氏):今年の夏のことですが、3名のお客様あわせて40億円ほどの資金をご入金いただき、外債を購入していただきました。3名のうち、お2人は会社のM&Aによって譲渡金が入り、その運用ニーズです。
多くの競合企業からも提案を受けている状況でしたが、短期間に複数回の面談を行い、丁寧にマーケットや商品のメリットをお伝えした結果、ご納得してご契約をいただきました。高格付債券を組み合わせて、お客様のご要望やリスク寛容度に合った提案をしています。
福井元明氏(以下、福井氏):どのような経緯で、そのお客様とは知り合ったのですか?
堀江氏:ご紹介ですね。友人や知人と食事をしているときなどに、「どなたか運用ニーズがあればご紹介ください」と伝えていた結果、今回のお客様をご紹介いただきました。
非金融領域での顧客貢献事例(ワインファンド)
――福井さんは、金融領域の事例もたくさんお持ちだと思いますが、金融領域以外での事例などありますか?
福井氏:金融では、ヘッジファンドや投信、債券などをご提案しています。IFAによって得意な領域は異なるのですが、仕組み債や個別株が得意なIFAもいますので、お客様のご要望に応じて対応しています。
現物資産ニーズに対するご提案では、ワインファンドと現物のワインもご好評いただいています。ワインファンドは、資産を増やしたい・守りたいというニーズです。現物のワインは嗜好品としてですね。
富裕層になればなるほど、お客様のご要望は多岐にわたりますので、金融だけではカバーしきれません。いきなり金融や資産運用のお話をするというよりも、ワインやウイスキーなどのお客様が好きな話からニーズや本音をお聞きするようにしています。
――最近は、ワインNFTを購入すると後からレアな現物のワインが届くサービスや、人気レストランの会員NFTを購入して先行予約や会員限定のイベントなどを企画するサービスも出てきています。NFTの用途は幅広くて、NFT自体はまだ金融商品とは言えないかもしれませんが、金融と非金融を結び付けるサービスやアセットになるかもしれませんね。福井さん、よかったらNFTをサービスに取り込んでWeb3企業になってください。
福井氏:リーガルなど確認しないといけませんが、前向きに考えます。
アフターM&Aの運用ニーズに対応
――堀江さんのお客様は、「M&A後の譲渡金の運用ニーズ」があったとのことですが、M&Aで会社を売却する人は増えていると思います。私もM&Aのご相談はいただくのですが、売り手企業のオーナーは一気にまとまったお金を得ることになりますから、あぶく銭のように浪費してしまったりして、あまりお金が残っていないケースも多いです。今後、M&Aが増えるとなると、その後の運用は信頼できるIFAに任せていくのが良さそうですね。
堀江氏:そのようにお任せいただけると、私たちとしては光栄ですね。M&Aの仲介やアドバイザリーサービスにも対応しているのですが、買い手となる企業様とのお付き合いはあるものの、売却したいというニーズをお聞きして案件化するのはなかなか難しいと感じています。
――M&A仲介会社のなかには、「成長戦略としてM&Aで会社や事業を買いませんか?」というアプローチで企業オーナーと接点を持ち、ヒアリングする過程で「正直に言えば、うちが売りたいくらいだよ」という言葉を企業オーナーから聞き出して案件化している会社もあります。「会社を売りたい」と心では思っていても、なかなか表立っては言いにくいところもあるのではないでしょうか。
福井氏:最近は、スタートアップ企業でもIPOを諦めてM&Aで売却するという出口戦略を描く企業が増えています。すぐに売る理由はないのですが、事業提携や資本提携から始めて関係を深め、何回かに分けて段階的に売却していくケースもあります。
スタートアップ企業でなくても、多角経営していて、子会社を売却したり、事業譲渡したりするケースも増えていますね。M&Aサービスを内製化しているIFA法人はまだないと思いますが、連続起業や多角経営、業種転換などの手段としてM&Aを検討する人も多く、M&Aには財務の知識も欠かせませんから、M&Aの領域でもIFAが活躍できると思います。
――まさにそのとおりですね。M&Aのお手伝いをしていると、不動産のご相談もいただきます。法人で所有している不動産を売却したいというニーズや、M&Aで得た譲渡金で収益不動産や別荘を買いたいというニーズもあります。
堀江氏:私たちも、不動産売買のご要望をいただきますので対応しています。3~10億円ほどのレジデンスが主です。良い物件は限られているとは思いますが、不動産会社の方とのアライアンスを強化することで、物件探しのハードルも乗り越えて付加価値のある良い提案ができていると思います。
オープンIFA戦略で顧客貢献を追求する
――堀江さんや福井さんのお話をお聞きしていると、富裕層の実に幅広いニーズに対応されていて、引き出しの多さに驚きます。お二人ともオープンマインドですが、IFAのみんながみんなそうというわけではないですよね。一匹オオカミのようなイメージがあります。
福井氏:お客様に貢献し続けるためには、常に学び続けて、協力者とのアライアンスを強化し、ソリューションの幅を広げていく必要があります。そうなると、自然とオープンになるのかなと。
M&Aのファイナンスや、不動産のファイナンスのご相談をいただくこともあります。そういうときは、銀行をご紹介します。また、絵画を相続したので絵画の鑑定会社紹介してほしいというときは、信頼できる鑑定会社をご紹介します。ご要望は人ぞれぞれですし、そのときの状況によっても異なります。フィンテックの世界では、「オープンAPI」という言葉がよく使われますが、「オープンIFA」という意識でIFA同士がもっと連携していくことも重要だと思います。そのために、「IFAドットコム」というIFAや金融プロフェッショナルのための会員制SNSで交流も図っています。
堀江氏:M&Aや不動産は、良い案件ほど表には出ません。ですから、IFA同士の連携は欠かせないと思います。連携しないと機会ロスになってしまい、それはつまりお客様にとっても不利益ということになりますから。
千差万別なIFA法人
――ひと口に「IFA法人」と言っても、会社によって社風や方針は異なりますね。堀江さんや福井さんは、社風づくりや社員採用・教育などで工夫していることはありますか?
堀江氏:弊社は社員寮を設けていることもあり、先輩が後輩に教える文化が定着していると思います。弊社の社員は、毎朝の勉強会への出席を義務付けています。具体的には、アナリストやヘッジファンドの方にマーケットの勉強会をしていただいたり、日経新聞を熟読して個別企業の分析をしたりしています。社員同士での情報交換や交流は盛んです。
採用に関しては、向上心や成長意欲、人の役に立ちたいという意志、人の何倍も働きたいという熱意などを見て採用しています。経験は問いませんが、お客様に貢献するためには専門知識は欠かせません。ですから、努力は必要不可欠です。しっかりコミットできるかどうかが重要なポイントですね。採用のミスマッチをなくすため、面接の段階で、仕事の辛さや大変さを伝えるようにしています。
福井氏:弊社の場合は、スポーツ経験を面接で聞くようにしています。チームプレーなのか、個人プレーなのか。向上心や成長意欲については、堀江さんと一緒です。会社としては、お客様のあらゆるニーズにお応えする方針ですから、金融・非金融を問わず幅広く知識を得たい人、そういう向上心がある人を採用するようにしています。
――テクノロジーが発展しても人が介在しないといけない領域は残りますから、今後もIFAのみなさんの活躍の場は広がりそうですね。本日はありがとうございました。