「人生100年時代」と言われる現代。20代でも早いうちから資産形成を進めることが求められています。一方で、どのように投資・資産運用の目利き力を磨いていけばいいのか、悩んでいる方は多いのではないでしょうか。

この連載では、20代の頃から仮想通貨や海外不動産などに投資をし、現在はインドネシアのバリ島でデベロッパー事業を、日本では経営戦略・戦術に関するアドバイザーも行っている中島宏明氏が、投資・資産運用にまつわる知識や実体験、ノウハウ、業界で面白い取り組みをしている人をご紹介します。

今回のテーマは前回に引き続き、最近注目を集めているWeb3(Web3.0)について。本連載の第31回第32回でインタビューさせていただいた、ビットバンク株式会社 代表取締役CEOの廣末紀之氏への取材を交えながらお伝えします。

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ビットコインのペイメントユースの未来

ビットコインの時価総額は一時100兆円を超え、アセットとしての価値が認められつつあります。2022年4月下旬時点でも87兆円ほどの時価総額です。ビットコインなどのネイティブトークンは決済利用も可能なため、今後はペイメントユースがさらに拡大していくでしょう。

スケーラビリティ問題を抱えているビットコインですが、ライトニングネットワークによってその問題も解消されていくはずです。ライトニングネットワークとは、ブロックチェーンの外で取引を行うオフチェーン取引によってビットコインの送金速度の向上や少額決済に対応した安価な送金手数料を実現するために考案された送金方法です。

廣末さんは、「アセットとして地位を確立しつつあるビットコインを裏付けにした、兌換可能なステーブルコインが生まれる可能性があります。金本位制の歴史をトレースすることはできるでしょう。金本位制ではなく、ビットコイン本位制です。プロトコルを分けるなどの工夫をする必要はありますが、デジタルの世界でもできるでしょう」と語ります。

最近は、地方の数代続く優良企業が資産の約10%をビットコインにするなど、法人のビットコイン保有も増えてきています。しかし、ビットコインはデフレ構造で価値が上昇していくため、使うモチベーションが湧きません。

ところがWeb3時代になり、国境という概念のないメタバース上で決済する際には、ビットコインなどのデジタル通貨は利便性が高いでしょう。また、人間ではなくAIが少額決済するようになれば、そのときどきでベストな決済手段を自動で選び、ビットコインなどのデジタル通貨で決済するケースも増えるかもしれません。

「ビットコインに関してニュースになるのは、価格が上がった下がったという話題ばかり。正直、そんな現状に不満があります。もっと深い根底にある、本質的なことを伝えていきたい。ビットコインがもたらした分散型という概念は、国家のガバナンスに行き着きます。価値観や人間の在り方、会社の在り方、社会の在り方、国家の在り方まで変革していくのがビットコインであり、Web3だと思うのです」(廣末氏)。

Web3第一世代としてWeb3第二世代に貢献していく

ビットバンク社は、Web3起業家向けにアクセラレーター事業及び支援事業を行うNext Web Capital(NeW)に出資したことでも話題になりました。Next Web Capitalは、Web3領域において第一線で活躍し、世界を舞台に事業を展開する日本人起業家 7 名によって設立されたアクセラレーターです。廣末さんに、出資背景についてもお聞きしました。

「Web3の流れを、インターネットの変遷と重ねて見ている面があります。プロバイダーの民間開放があり、インターネットに接続できる人が増えました。ウインドウズ95が発売され、インターネットが一気に普及しました。1997年にインターネットのペネトレーションは5%になり、暗号資産のペネトレーションも5%ほどです。そして2000年代にはIT起業家が増えました。現在の楽天やGMO、ライブドアなどの企業です」

「私は、暗号資産、Web3でも同じことが起こると考えています。大量のWeb3起業家が現れるでしょう。もちろん失敗するケースもあると思いますが、業界全体の発展のためには、それら起業家が活躍できるよう、リスクマネーを投じる必要があるわけです」

「リスクマネーの供給やトークンの流動性の確保、そして法改正の動きなどによってWeb3起業家が活躍しやすい環境づくり、日本にいても世界で活躍できるコンディションを整えることが私たちのようなWeb3第一世代の役割だと思います。私が20代の頃、『おじさんたちは出しゃばらないでほしい。自分たちのやり方で挑戦させてほしい』と常々考えていました。自分がそんな年齢になり、若いWeb3起業家たちが生まれてきた。それなら、彼ら彼女らが活躍しやすい環境をつくることが私たちの役割でしょう。経済規模を大きくしていくことで、結果的に三方よし、六方よしになっていけば良いと考えています」

肩書きを持たず複数のDAOに参加し貢献するスタイル

NeWのようなWeb3起業家は今後も増え、産業や社会の発展に貢献してくれるでしょう。私もなにかを書くことを通じて、社会に貢献できればと思います。私(筆者)は学生時代、ゼミ室で「どんな人材が今後求められるのか」という議論をしたことがありました。

早稲田大学創設者の大隈重信は、東京専門学校の得業式で「諸君は法律を学んだから法律家になるとか、政治を学んだから官僚になるとか、そんなケチなことは望んでいない。天下国家に有為の人材となり、自由に羽ばたいてほしいのである」といった演説をしています。

メタバース上で過ごす時間が増えれば、オンラインのコミュニティで過ごす時間が増えるでしょう。映画好きが集まるコミュニティ、音楽好きが集まるコミュニティ、文学好きが集まるコミュニティ、ブロックチェーン好きが集まるコミュニティ、ビットコイン好きが集まるコミュニティ…など数多のコミュニティが生まれ、国境を越えて世界中の人々、あるいはAIとつながるようになります。

そんな時代に活躍できる人材は、だれにも負けないくらい専門特化したオタクになるか、複数のコミュニティを越えて価値をつくり出せる人材だろうというのがゼミ室での結論でした。

コミュニティはDAOであり、なにかビジョンやミッションを持ったDAOかもしれません。会社に所属するよりも、DAOを活用して仕事などの経済活動をしていく人も増えるでしょう。

廣末さんは「『どこどこの社員です』ではなくなるでしょうね。肩書きはいりません。有機的に、そのときどきで複数のDAOで活動すれば良いのです。1つに限らず、自分に合ったDAOに参加して、それぞれのコミュニティに貢献していくようなワークスタイルで良いのではないでしょうか。コミュニティは小さな単位から徐々に変革し、会社という単位が変わり、だんだんとDAO化される領域は広がって、やがてはデジタル国家をDAOで実現するような動きも出てくると思います」と仰っています。

Web3やDAOは、まだまだ発展段階ですから目が離せませんね。