「人生100年時代」と言われる現代。20代でも早いうちから資産形成を進めることが求められています。一方で、どのように投資・資産運用の目利き力を磨いていけばいいのか、悩んでいる方は多いのではないでしょうか。

この連載では、20代の頃から仮想通貨や海外不動産などに投資をし、現在はインドネシアのバリ島でデベロッパー事業を、日本では経営戦略・戦術に関するアドバイザーも行っている中島宏明氏が、投資・資産運用にまつわる知識や実体験、ノウハウ、業界で面白い取り組みをしている人をご紹介します。

今回は、プライベートバンカーとして活躍する株式会社Wells Partnersの福井元明氏にお話を伺いました。

株式会社Wells Partners代表/福井元明氏

慶應義塾大学経済学部卒業後、株式会社みずほ銀行に入社。リテール、超富裕層(企業オーナー及び地権者等)、国内外のファミリー・オフィス、事業法人向け資産運用助言及び融資・ローン業務等に従事。入社直後から数々の社内表彰を受賞。税理士法人やスイス現地プライベート・バンキング拠点への出向経験から、国内外の金融商品や幅広い金融知識に精通。欧米同様に日本でも、中長期的に真にお客さまの立場に立ち、ワンストップで自由度の高い金融サービスを提供したいとの想いから、株式会社Wells Partnersを設立。

世代を超えて課題を解決するプライベートバンカー

――本日は、ありがとうございます。最初に、福井さんのご経歴をお教えください。

みずほ銀行に入社し、リテールや国内外のファミリー・オフィス、相続対策、事業法人向け資産運用助言などの業務を担当しました。出向先の税理士法人では税務会計を経験し、スイスのチューリッヒではグローバルなプライベートバンキング業務を経験することができました。

日本に帰ってきてからは、上場企業オーナーを中心に資産運用などの業務に従事しました。その後、2019年に独立して株式会社Wells Partnersを設立して今に至ります。

――まだ設立して間もないですが、すごい成長スピードですよね。

現在、東京に2拠点と大阪、広島にも拠点があり計4拠点です。正社員とパートナーを合わせて40名弱のメンバーで業務を行っています。年内には50~60名にしたいと考えているところです。

――素晴らしいですね。プライベートバンキングの業務は、チームで行っているのでしょうか?

そうですね。基本は生涯担当制としていますが、それぞれ得意としている領域がありますから、顧客満足の最大化や課題解決のためにチームで取り組んでいるお客様も多くいらっしゃいます。ファミリー(一族)の悩みはお金や相続のことだけではなく、結婚や離婚、教育、留学、健康など幅広くありますから、「相談したらなんでも解決してくれるファミリー(一族)の番頭さん」のような存在がプライベートバンカーだと思います。

――やはり、スイスで見てきたことが影響されているのでしょうか?

影響は受けていますね。スイスでは、スイス人とイギリス人の上司がいたのですが、彼らは世代を超えてファミリー(一族)をみることを前提に物事を考えていました。一方日本は断続的で、お客様がお亡くなりになるとその後はファミリーとの関係性が切れてしまうことも多いです。スイスでの経験から、私は長期的な視点で最適解をご提案したい。世代を超えたご提案をしたいと考えるようになり、それを日本で再現したいと思っています。

担当者がコロコロ代わってしまうと、人間関係をゼロからまた構築することになり、顧客の不利益です。また、ノルマがあるとノルマ達成のために相応しくない商品をご提案することになり、中長期的で最適なご提案ができなくなります。IFAは中立公平な立場ですから、ポジショントークをする必要はなく、長期的な観点でお客様のメリットになることをご提案できます。お客様の課題やお悩み、不安なことを1つでも解決することがプライベートバンカーの役割です。

結婚相手をお探しすることもありますし、離婚相談やお子さんの留学の手配、教育相談、インターナショナルスクールの選別、医師のご紹介、旅行の手配、レストランの手配など、本当に幅広いご相談をいただきます。

――留学先の相談などはよく聞く話ですが、想像以上に幅広いですね。

プライベートバンカーが考える投資対象

――資産運用には様々な選択肢がありますが、福井さんはどのようなものを投資対象としてご提案するのですか?

アセットクラスによって投資対象は変わりますが、「1億円あって、それを3億円や10億円に増やしたい」という場合は、上場株と未上場株に分散して運用されている方が多い傾向にあります。「すでに100億円あり、どう資産を残していくか」という場合は、資産を減らさない守りの戦略になりますので、不動産以外の現物資産も一部では投資対象になり得ます。具体的には、絵画やアンティークコイン、飛行機、ロレックスの腕時計などです。

――過去にあった富裕層からのリクエストには、どのようなものがありましたか?

「クラシックカーを買いたい」「お城を買いたい」「島を買いたい」「銀行を買いたい」「ワイナリーを買いたい」などもありました。他にも、「南米の不動産を買いたい」というお客様もいらっしゃいましたし、「希少な高級ブランドバッグを買いたい」というお客様もいらっしゃいました。それで、古物商許可を会社で取りました。

――それはすごい。「飛行機を買ったけど、停めるところに困ったから航空会社ごと買った」なんて話も聞きますね。そういうこともあるのですか?

そうですね。「自動車販売会社ごと買う」というようなケースもありますよね。

――本当の富裕層ですね。福井さんのお客様は、どのような方が多いのでしょうか?

経営者の方や、代々資産家という方もいらっしゃいます。アスリートの方、芸能人の方、事業法人や学校法人の方など、幅広くいらっしゃいます。

――アスリートや芸能人の方々ですと、引退後のセカンドキャリアなどの課題もあるでしょうから、資産運用のニーズも高いのでしょうね。福井さんのような方が身近にいれば、これほど心強い存在はないですね。

スイスのプライベートバンカーはオープンアーキテクチャー

――スイスで得たことで、もっとも大きく影響していることは何でしょうか?

オープンアーキテクチャーのスタイルですね。どんなオーダーにでも応える姿勢が基本となっており、最適解や妥協案を考えてご提案します。

日本では、「自社で取り扱っていない商品はダメ」となるのですが、自分のビジネスにならなくても対応します。商品ありきではなく、お客様ありきの姿勢です。必要であれば、直接ファンドに電話してヒアリングすることもあります。必要に応じてどんなオーダーにもお応えしています。

――スイスの金融と日本の金融では、どのような違いがあると感じますか?

金融の自由度が違いますね。現在はインターネットバンキングが普及して来ていますが、例えば書類ひとつ取ってみても違いが表れています。日本の場合、銀行それぞれが振込用紙などに決まったフォーマットがあります。当然銀行によっても違いはあるかと思いますが、スイスのプライベートバンキングの拠点では決まったフォーマットがありませんでした。形式ばっていないので、どんな紙に書いても良いわけです。必要な情報さえ書かれて署名されていれば、それで振込や送金手続きが可能でした。

――些細なことかもしれませんが、書類ひとつにも姿勢や体質が表れていますね。用紙を取りに行くのも面倒ですから、どんな紙でも良いならその方が利用する側としては嬉しいです。

優秀なプライベートバンカー輩出企業になりたい

――福井さんはチームで対応してくださるので、お客様にとっても安心感があるでしょうね。生涯担当制というのも、安心感につながりますね。

フルオーダーメイドな商品提供力が強みですので、柔軟な対応が可能です。ソリューションの幅の広さや、ご提供するまでのスピードには特に自信があります。

――優秀なプライベートバンカーになるには、どのようなことが必要なのでしょう?

「人脈と経験、ソリューションの幅」ですね。この2つは、本を読むことや多くの人と出会うことで身につけることができます。私自身、20代の頃に「もっと本を読んでおけば」「もっと海外の文化やビジネスに触れておけば」「もっといろいろな業界の人と接点をもっておけば」と思うことがあります。まだ20代の方には、ぜひ本を読み、旅行など海外の文化に触れ、多くの人と出会ってほしいですね。それらが糧になって、人脈と経験、ソリューションにつながると思います。

――経験のすべてが糧になりますよね。最後に、福井さんの今後のビジョンをぜひ教えてください。

「日本で一番多く優秀なプライベートバンカーを輩出できるようになること」がビジョンです。金融業界におけるプライベートバンカーのステータスを底上げしたいですね。日本では、まだまだ社会的にステータスが低いと感じています。それと、代表格のプライベートバンカーが不在です。人のために努力できる人はプライベートバンカーに向いているので、そういう人を優秀なプライベートバンカーに育てて輩出したいです。会社の意向ではなく、自分が良いと思った商品をご提案するために「自分の正義を貫けること」もプライベートバンカーには必要だと思います。

――自分の正義を貫くことって、人生においてとても重要ですね。本日はありがとうございました。