「人生100年時代」と言われる現代。20代でも早いうちから資産形成を進めることが求められています。一方で、どのように投資・資産運用の目利き力を磨いていけばいいのか、悩んでいる方は多いのではないでしょうか。

この連載では、20代の頃から仮想通貨や海外不動産などに投資をし、現在はインドネシアのバリ島でデベロッパー事業を、日本では経営戦略・戦術に関するアドバイザーも行っている中島宏明氏が、投資・資産運用にまつわる知識や実体験、ノウハウ、業界で面白い取り組みをしている人をご紹介します。

今回のテーマは「投資に失敗したときのメンタルヘルス」。

  • 投資に失敗したときのメンタルヘルス

天才でも勝率3割

「投資に失敗して立ち直れません…」というお話を伺うことがあります。確かに、大切な資産を失ったわけですからショックは大きいでしょう。しかし、どんな著名な投資家でも、天才と呼ばれる投資家でも「一度も失敗したことはない」なんて人はいません。投資の回数が増えれば、失敗の回数も増えるものです。徐々に成功確率を上げていきたいところですが、そう簡単ではないのが現実です。

投資に失敗したときに思い出したいのが、アスリートの世界で言えばイチロー選手のような天才でも「打率3割ほど」という事実です。生涯打率となれば、もっと低くなるかもしれません。天才ではない私のような人間なら、さらに低くなって当然です。ですから、10投資して3成功すれば、それだけで十分「勝っている」と言えるのではないでしょうか。

事業投資(起業)の場合、起業して3年後の生存率は約50%、5年後の生存率は約40%と言われています。また、ベンチャー企業の20年後の生存率は0.3%という統計もあるようです。実際は、生存率はもっと低いかもしれません。それだけ「勝ち続けること」「生き残ること」は難しいということです。常に3割勝てているのであれば、十分天才ですね。ここで注意したいのは、3割勝てているからと言っても「自分は投資の天才だ」と錯覚しないことです。錯覚を起こすと、視界がぼやけて決断が鈍ります。

含み損であれば一喜一憂しない

含み損の段階で「損した」「失敗した」「もう終わった」と絶望してしまう人もいらっしゃいます。例えば、ビットコインなどの仮想通貨(暗号資産)は値動きが激しいわけですから、保有していれば日々含み益も含み損も抱えています。

最近は上昇傾向にある仮想通貨(暗号資産)ですが、いつ下降に転ずるかわかりません。また、上昇傾向にあると言っても、日々激しい値動きがあります。ですから、一喜一憂しない方が精神衛生上良いわけです。

「しょせん含み益」「しょせん含み損」と思えば、値動きを気にする必要もないでしょう。トレードで生計を立てているのであれば話は別ですが、投資はあくまでも余力資金(なくなってもしょうがないと思えるお金)で行うものですから、気にしないのが一番です。

私の場合、仮想通貨(暗号資産)の値動き等がわかるアプリケーションはスマートフォンに入れていません。SNSなどの友人の投稿で値動きを知ることの方が多く、「今ビットコインがいくらか」は実はあまり把握していません。もともと長期保有のスタンスで利確することもないわけですから、それくらいの意識の方が私にとっては心地良いです。

失敗体験も活かし方次第でお金は取り戻せる

「投資に失敗した…」といつまでも凹んでいても、失ったお金が戻ってくるわけではありません。反省は必要ですが、気持ちを切り替えて次に進んだ方が精神的にも良いでしょう。第6回の『投資という生き方』でお伝えしたように、体験に投資していればお金は後から取り戻せると私は思います。失敗経験を活かすか殺すかは自分次第です。

成功パターンを見出すのはなかなか難しいのですが、なんとなく「失敗パターン」はあるように感じています。「この手の投資話は、大抵ダメになるな」とか、直感的にわかることもあります。直感でそう思った投資案件は、やはり短期間のうちに消滅しています。

そういう意味では、投資の成功確率は多少上がっているのかもしれません。とは言っても、「自分は投資案件の目利き力がある」と錯覚してはいけないとやはり思います。投資の世界でも、自戒は大切です。