「人生100年時代」と言われる現代。20代でも早いうちから資産形成を進めることが求められています。一方で、どのように投資・資産運用の目利き力を磨いていけばいいのか、悩んでいる方は多いのではないでしょうか。
この連載では、20代の頃から仮想通貨や海外不動産などに投資をし、現在はインドネシアのバリ島でデベロッパー事業を、日本では経営戦略・戦術に関するアドバイザーも行っている中島宏明氏が、投資・資産運用にまつわる知識や実体験、ノウハウ、業界で面白い取り組みをしている人をご紹介します。
今回は、資産形成コンサルティングサービスの「ライフマネートレーニング事業」や企業向け福利厚生サービス「ウェルビーイング推進事業」、伴走型プロデュースの「人財事業」などを手掛ける株式会社クレア・ライフ・パートナーズの代表取締役社長 工藤将太郎氏にお話を伺いました。
「資産運用」の基礎から応用まで
――クレア・ライフ・パートナーズは、「ライフマネートレーニング事業」や「ウェルビーイング推進事業」「人財事業」の他に、「ウイスキー・カスク・オーナーシップ事業」「Bar Dining FIVE Arrows」「Co-Creation-team事業(個人向けの資産形成コンサルティングサービスを同業・類似業者向けに提供)」など幅広く手掛けられていますね。最近はNISAに関する書籍も出版されていますが、どのような事業・サービスなのでしょうか?
工藤将太郎氏(以下、工藤氏):ライフマネートレーニング事業はこれまで、個人のお客さまが2,500名超、30社以上の企業に福利厚生サービスとしてもご利用いただいている資産形成コンサルティングサービスです。メインは投資初心者の方からのご相談ですが、年収や資産規模も幅広いため、「基礎から応用まで」、投資に明るい方からもご相談をいただいています。30代・40代の方々が中心ですが、50代の方の退職金の運用のご相談も承っており、そんな弊社の背景から、今回のNISA本の出版にもつながりました。
これまでも何冊か資産運用に関する本を出版していますし、NISA関連の本は世にたくさんあるのですが、50代・60代向けに書かれたNISAの本はまだ少ないと思います。
この世代は、「過去に投資をしたものの、何らかの理由でやめた」という方も多くいらっしゃいます。投資・資産運用は一度やめると再挑戦が難しい世界ですので、「投資・資産運用からしばらく遠ざかっていたけど、それでも気になる」という方向けに、NISA制度の説明ではなく銘柄選びや、「結局、NISAを活用すると得なのか損なのか」「簿価はどうやって計算されるのか?」「出口戦略を考えた上で、どのように銘柄を選ぶのか」など、買い方だけでなく、NISAの特徴である非課税という出口のメリットも詳しく書いています。
大切にしている3つの価値観
――資産形成コンサルティングサービスを提供する上で、大切にしていることはどんなことですか?
工藤氏:「未来を可視化する独自メソッド」「多角的な視点でワンストップ」「クライアントファーストの精神」という3つの価値観を掲げています。
「未来を可視化する独自メソッド」には、マネーパズル(R)やハイブリット・プランニング(R)があり、まずは人生に必要なパズルのピースを埋めていき、限られた財源を効果的に活用するためにプランニングしていきます。どんな人生を歩みたいのか、どんな夢があるのか、生活防衛費はいくら必要なのか、どんなライフイベントが想像できるか。そして、今ある資産を棚卸して可視化し、目標から逆算して必要なお金や必要になる時期なども可視化します。
弊社では「多極分散」「目的別分散」という言葉を使っており、金融資産と実物資産を組み合わせてポートフォリオを組んでいます。金融資産だけに偏ると、金融危機のときに資産を減らすリスクが高まるからです。そのため、実物資産も持つ必要があり、ゴールドやアート、アンティークコイン、不動産などの幅広い実物資産も取り揃えています。
また、お客様が取っても良いであろうリスク率を4段階に分けてご説明します。「コア資産」は、教育資金などの守る資産と、守りながら安定的に殖やす資産。「サテライト資産」は、積極的に殖やす資産と投機的に殖やす資産です。リスク寛容度や守るべき資産は人によって異なりますので、最適解をプランニングするようにしています。
「多角的な視点でワンストップ」では、「オールアセットワンストップ」という言葉を用いており、前述のように金融資産も実物資産も弊社で取り扱うことで、お客様の負担を軽減しています。
――不動産屋さんに「物件は買った方が良いですか?」と相談すれば「今が買い時です」と言われるわけですし、保険屋さんに「保険は入った方が良いですか?」と相談すれば「入らないとリスクです」と言われるわけですし、一人ひとりの夢や目標を聞くところから営業トークではない適切な提案をしてもらえると、とても助かりますね。
工藤氏:仰るとおりで、特定の事業者に相談に行った時点で「買うこと」が決まってしまうわけです。それでは後々後悔することも少なくありませんので、まずはヒアリングからスタートし、金融資産や実物資産への投資・資産運用だけでなく、例えば「福利厚生で支出を減らし、使える資金を増やすアドバイス」もしています。
「クライアントファーストの精神」は、手数料に依存しない報酬体系で、お客様にとってのベストが弊社スタッフのゴールとしっかり重なるようにしています。そのため、社員報酬は完全固定給で歩合給はありません。お客様と利益相反関係にならず、お客様に多くの選択肢を知っていただき、伴走しながら一緒に悩み考えるという姿勢です。「お金を払っても良いから、適正な情報を知りたい」という声が多くあり、そのためにこのサービスを形にしました。理念だけですと崩れてしまうところがありますから、しっかりと仕組みにしています。
個人の資産運用でもっとも大切なこと
――工藤さんは、個人の資産運用におけるもっとも大切なことは、どんなことだと思いますか?
工藤氏:機関投資家の場合は利回りが大切ですが、個人の場合は利回りよりも「ライフプランの達成」がもっとも大切だと思います。コンサルタントでもなく、コンシェルジュでもなく、ドクターでもない。あえて言うなら、なりたい身体になるために、パーソナルトレーナーをつけてトレーニングや食事、サプリメント、メンタルマネジメントをするジムのようなイメージです。それで、「ライフマネートレーニング」としています。
ご本人が気づいていない不安、言葉にならない将来を可視化して言葉にすることも、私たちの役割だと考えています。例えば、「老後2000万円不足問題」がありますが、「そもそも2000万円なのか?」を、お客様と一緒に考えます。投資・資産運用の選択肢、リスクをしっかりと伝え、一緒に悩み続けるのが私たちです。
「あったらいいな」を自分たちでつくる
――御社は、本当に幅広い投資商品を取り扱っていますが、工藤さんがご自身で開拓されたのですか?
工藤氏:はい。自分の足を使い、自分のお金も使って開拓してきました。特に、私たちが売主になる商材は厳選し、取引先の与信も徹底しています。投資でこういう世界観が「あったらいいな」というのを自分たちで開拓し、つくり、形にしてきました。
金融資産の他に、実物資産としてウイスキーやアンティークコインなども取り扱っていますが、タックスマネジメントや為替分散や地理的な分散の観点でもあります。また、「投資のエンタメ性」「教養としての投資」という面からも、ウイスキーの歴史を知ることができたり、コインの歴史を知ることができたりと、造詣を深められると人生の深みにもなるのではないでしょうか。