「人生100年時代」と言われる現代。20代でも早いうちから資産形成を進めることが求められています。一方で、どのように投資・資産運用の目利き力を磨いていけばいいのか、悩んでいる方は多いのではないでしょうか。

この連載では、20代の頃から仮想通貨や海外不動産などに投資をし、現在はインドネシアのバリ島でデベロッパー事業を、日本では経営戦略・戦術に関するアドバイザーも行っている中島宏明氏が、投資・資産運用にまつわる知識や実体験、ノウハウ、業界で面白い取り組みをしている人をご紹介します。

今回は、2024年5月末にコンラッド東京で行われた「ビットバンク創業10周年パーティー」の様子をお伝えします。

  • ビットバンクCEO・廣末紀之氏によるあいさつ

ビットコイナーが集まるビットバンク

当日の参加者に贈られた冊子には、2014年1月24日につくられた現ビットバンク社の「設立趣意書」が掲載されています。その中に、「電子マネーの出現と普及という不可逆的/必然的な歴史現象の実現を信じ、我が国における電子マネー関連事業のパイオニアにならんと発足します。」「日本のbitcoinユーザーを育成するさまざまな事業を構想し、実行してゆきたいと考えています。その健全な普及は国際社会のなかで生き抜く必然をもつ日本に大いに貢献できると信じております。」という内容があり、同社CEOの廣末氏がビットコインに出会ったときの熱量や確信を感じさせる一文です。

  • 創業前から現在までを振り返るトークセッション(廣末紀之氏、後藤淳氏、加藤順彦氏)

2024年5月で創業10周年を迎えたビットバンク社は現在、コア事業である暗号資産交換業(取引所・販売所)の他、カストディ事業のJADAT(日本デジタルアセットトラスト設立準備株式会社)、GameFiにおけるスカラーシップ制度のマッチングサービスFiKNOTS(ビットバンクエンターテイメント株式会社)を展開し、着実に事業領域を広げています。

預かり資産総額は約3,838億円(2024年3月末時点、※「貸して増やす」は除く)を超えて4000億円を突破する勢いとなり、取扱銘柄数は国内最多の38種類(2024年2月時点)、アプリのダウンロード数は約140万、2014年には7名だった社員数は159名に拡大しています。

10周年記念パーティー当日は、廣末氏によるあいさつや来賓あいさつ、創業前から現在までのさまざまなエピソードが聞けたトークセッション、動画で振り返る感動的な10年の軌跡、そして終盤では今後の未来像を廣末氏が語っていました。

筆者が特に印象に残ったのは、「ビットバンクにはビットコイナーが集まる」という株式会社セレス・代表取締役社長の都木聡氏の言葉です。暗号資産を含むweb3業界は、ICOやDeFi、NFT、メタバース…などなど、そのときどきで流行りがあります。そんな流行に乗っかるのが上手な企業も多い中、ビットバンクは「派手さやヤンチャさはなく、手堅く、着実に」成長を続けてきた企業と言えるでしょう。都木氏の言葉のとおり、それができたのはビットコイナーが集まっているから。そして、廣末氏自身や創業メンバーがみんなビットコイナーだからにほかなりません。流行りとしてのビットコインではなく、ビットコインが生まれた背景や思想、文化、系譜をしっかり理解し、共感し、その未来に可能性を感じているからこその10年なのではないでしょうか。

  • 創業前から現在までを振り返るトークセッション(廣末紀之氏、野田直路氏、山崎大輔氏)

AI×暗号資産のweb3経済圏

終盤で廣末氏が示したのは、「AGIで加速する、人が介在しないweb3経済圏」。今はまだ、暗号資産を法定通貨に換金して使用するケースが多いと思いますが、暗号資産のような電子マネーはもともとインターネットと相性が良く、インターネット上(メタバースも含む)でAIによる決済の自動化が進めば、暗号資産のユースケースはますます増えていくことが予想できます。

AGIは、Artificial General Intelligence(人工汎用知能)の略で、人間のような汎用的な知能を持つ人工知能のこと。AGIは、人間と同様の知識や能力を持ち、独自の学習や問題解決ができる能力を持っています。特に「汎用的な能力」「学習能力」「意思決定能力」が強化されれば、生身の人が介在しない世界の誕生も近いでしょう。人間の1秒は1秒でしかありませんが、AIの1秒は永遠とも言える時間です。人には実行できない、あるいは人には発想もできない暗号資産のユースケースが増え、ヒューマンレスな経済圏が生まれるのかもしれません。

廣末氏の言葉で印象に残ったのは、「10年までは、生き残る敗者のゲーム戦略。今後は、勝ちに行く勝者のゲーム戦略」というフレーズです。この言葉に鼓舞された役員・社員の方も多かったのではないでしょうか。今後、同社がどんな戦略を実行するか楽しみです。

「イングランド銀行以来の発明」と改めて感じた夜

ビットコインの生みの親であるサトシ・ナカモトが2009年1月3日にGenesis Blockをマイニングしてから2024年で15年が経ち、同年5月5日にはビットコイン・ネットワークが10億件目のトランザクションを処理しました。2009年の時点で、ここまでビットコインが世界中に普及すると予測していた人は、ごくわずかでしょう。ビットコイン、あるいはブロックチェーンによる壮大な実証実験は今も続いており、歴史を振り返ったとき2009年(または、サトシ・ナカモト論文が投稿された2008年)は大きな転換期となるはずです。

歴史をさかのぼると、イングランド銀行が設立されたのは1694年。主に対仏戦争のために発行された多額の国債の管理を行う商業銀行として、ロンドンで生まれました。さらにさかのぼって1450年頃、近代印刷術の祖といわれるドイツの金細工師ヨハネス・グーテンベルクが、活字の開発とそれを使った活版印刷術を発明しました。印刷技術の発展とイングランド銀行の誕生は、無関係ではないと感じます。筆者がビットコインを知ってしばらく経った頃、テクノロジーの発展とビットコイン(ブロックチェーン)の誕生も無関係ではなく、「ビットコインは、イングランド銀行以来の大きな発明なのかもしれない」と感じたものでした。その後マウントゴックス事件があり、「なんだかすごそう」程度だったビットコインの認識が確信へと変わります。今回のビットバンク創業10周年パーティーでさまざまな方々と交流でき、その確信を改めて感じた夜でした。