「人生100年時代」と言われる現代。20代でも早いうちから資産形成を進めることが求められています。一方で、どのように投資・資産運用の目利き力を磨いていけばいいのか、悩んでいる方は多いのではないでしょうか。
この連載では、20代の頃から仮想通貨や海外不動産などに投資をし、現在はインドネシアのバリ島でデベロッパー事業を、日本では経営戦略・戦術に関するアドバイザーも行っている中島宏明氏が、投資・資産運用にまつわる知識や実体験、ノウハウ、業界で面白い取り組みをしている人をご紹介します。
今回は、生成AIを社会に実装し、産業の再構築を目指す一般社団法人生成AI活用普及協会(Association to Generalize Utilization of Generative AI、以下:GUGA)の企画室 室長・三浦康平氏に、「生成AIとリスキリング」をテーマにお話を伺いました。
※本記事は2024年2月28日時点の情報です
今、リスキリングすべきスキルとは
――昨年の2023年頃から、「生成AI」や「リスキリング」という言葉に注目が集まるようになりました。愚問かもしれませんが、やはり今リスキリングするなら「生成AI」に関連するスキルということになるのでしょうか?
三浦康平氏(以下、三浦氏):今こそ、生成AI活用のスキルを身につけるべきで、これはビジネスパーソンに限らず、学生さんも今から身につけておくと将来必ず武器になると思いますね。そう確信して、GUGAは活動を推進しています。
一言に「生成AI活用」と言っても、多種多様です。今は「答えのない模索フェーズ」にいて、常に変化していく世界だと考えています。GUGAには、生成AIの専門家、機械学習の専門家、メディア関係者、マーケティング会社……などなど多様性に富んだ、幅広い分野の専門家が集まっています。生成AIは産業との掛け算によって可能性が広がるため、幅広い知識・経験を結集し、GUGAとしても、常に生成AIのさまざまな可能性や活用方法を模索しながら活動しているところです。
日本企業は、とにかく人が足りない、慢性的な人手不足に陥っています。少子高齢化は今後も進むことが予測されているわけですから、少人数で今まで以上のパフォーマンスを出す必要があります。DXや生成AI活用を推進し、社会課題の解決や新たな価値創造につなげていきたいと考えています。
最近は、業務効率化を中心とした生成AI活用の事例が生まれつつあります。「どの業務プロセスで生成AIを使えば良いのか」「安全に使うためにはどんなルールが必要か」「利用率を高めるためにはどんな導入プロセスが適切か」など、課題が多様化している様子も伺えます。会社によって課題ややりたいことは異なるわけですから、それぞれにフィットするツール選びや使い方、組織づくりを模索する必要があります。さらには業務効率化だけでなく、品質向上や価値創造のためにも生成AIが有効である視点も忘れてはいけません。
また、具体的な活用方法や事例を知ることだけでなく、リスクについても学ぶ必要があります。つまり、スキルだけではなくAIリテラシーもリスキリングの対象として重要です。ChatGPTが話題になってまだわずかな期間ですが、すでに「AI格差」は広がっています。使っている企業・人は毎日のように活用しているわけです。遅れをとっている企業・人は、ますます離されてしまうことになります。「知っていたら使ったのに…」という人を一人でも、一社でも減らすことが重要で、GUGAとしてはその一役を担えればと思います。
GUGA設立の背景と生成AIパスポート
――AI格差は、確かに広がっていますね。私もAI活用に関する勉強会を頼まれることがあるのですが、「AIって、ChatGPT以外にもあるんですね」と言われることもあります。GUGAの活動は、そんなAI格差を解消することにつながりそうですね。GUGAについて、設立した背景も含めて紹介をお願いします。
三浦氏:GUGAは、生成AIの社会実装を通じて産業の再構築を目指す、国内有数の生成AIプラットフォームです。AI初心者のための、生成AIリスクを予防する資格試験「生成AIパスポート」や、AIツール導入時の「IT導入補助金」の申請支援を強化する「GUGA生成AIコンソーシアム」などをご提供しています。法人会員様は90社(2024年2月時点)を超え、誰もが知っているような大企業にも加入していただきました。行政との連携なども強化し、歩みを進めています。
設立したのは2023年5月で、毎日のように生成AI関連のニュースが報じられていた頃です。まだ一年も経っていないのですが、変化や進歩のスピード感が凄まじく、ひと昔前のようにさえ感じます。
「日本社会のために生成AIでなにができるか」を議論している中で、「新しいものを活用・推進しようという盛り上がりがあるのとは裏腹に、企業での生成AI導入は進んでいない」という現実に着目しました。可能性よりもリスクの方に意識が行きがちで、危険視している。特に日本企業はそうで、これは大きな機会損失だと感じました。「失われた30年がまた続くのではないか」という危惧もあり、自分たちでなにかできないかと考えました。
企業の生成AI導入が進まない理由の根底にあるのは、「なんとなく危なそう」という漠然とした不安が原因なのではないかと感じます。インターネットが誕生した頃もそうで、最近でいうweb3も同じだと思います。「なんとなく危なそう」、だからとりあえず静観する。事例を待っているがゆえに動き出しが遅く、気づいたときには大きな格差になっている印象があります。確かに、リスクをはらんでいるのは事実なのですが、リスクを把握して適切にマネジメントすることが大切なのではないでしょうか。どんなものにでもリスクはありますし、メリットもあります。例えば自動車には事故のリスクが存在しますが、移動手段としての利便性が高いから普及しているわけです。まずはリスクやデメリット、メリット、可能性を知って理解することが重要です。
このような考えのもと、GUGAの立ち上げメンバーとさまざまな議論をしていくうちに、「企業の生成AI導入を推進するためには、資格制度が有効ではないか?」という仮説にたどりつきました。それで生まれたのが、生成AIリスクを予防する資格試験「生成AIパスポート」で、資格を発行することを第一歩としてGUGAを立ち上げました。
「AIをつくるための資格制度」はすでにあったのですが、GUGAの生成AIパスポートは「AIをより良く使うための資格制度」です。自動車に例えると、車を作れなくても乗りこなせれば良いわけです。そのため、生成AIパスポートは非エンジニア、AI初心者のための資格制度とも言えます。近い将来、みんなが当たり前にAIを使う時代が来ます。そんなAI時代に適応するためにスキルアップできる環境をつくっていければと思います。英語のスキルを英検やTOEICで証明できるように、AIを安全に使いこなすためのリテラシーを生成AIパスポートで証明できればと考えています。
生成AIパスポートを取得するメリット
――昨年の生成AIパスポート試験では、どれくらいの方が取得されたのですか?また、生成AIパスポートを取得すると、どのようなメリットがあるのでしょうか?
三浦氏:1,031名の方々に受験していただき、合格者は760名でした。試験には、コンテンツ生成の方法や事例などの活用方法だけでなく、企業のコンプライアンスに関わる個人情報の取り扱い、著作権など、生成AIを安全に活用するためのリテラシー向上に関する内容も含まれています。
試験を通じて、生成AIに関する知識を体系的に学ぶことができます。また、活用する際のリスクを正しく把握できますから、「なんとなく危なそう」という漠然とした不安を払拭することができ、結果的に企業の生成AI導入も進めやすくなると考えています。
生成AIパスポートを取得することで、個人の方でしたら「安全に生成AIを活用できる人材であること」をPRできますし、法人でしたら「安全に生成AIを活用できる人材が業務を行う企業であること」をPRできます。企業様が福利厚生として社員の生成AIパスポート取得を推奨していただき、人事評価に反映するなど、さまざまな活用事例も出てきています。例えば、プレスリリースで「何名の社員が生成AIパスポートを取得した」「生成AIパスポートの受験費用を会社が全額負担」とPRしていただいています。GUGAとしては、この生成AIパスポートを普及させて、「採用活動にも有効」「転職活動にも有効」な資格に育てていきたいです。今はアーリーアダプターの方々の受験が多い印象ですが、今後は「生成AIを安全に活用できる人材になるためには、まずは取得しなきゃ」という存在になっていければと思います。
――生成AIはこれから普及し、成長していく余地しかないと思いますので、GUGAさんの活動が楽しみですね。後編では、「生成AI人材採用プロジェクト」や「AI時代に生まれる新たな職業」についてお聞きできればと思います。
(後編に続きます)