ウェスタンデジタルがコンシューマー向けSSDの新製品を発表した。6月に台湾で開催されたCOMPUTEXの際に発表されていた製品が日本でも発売されることになったわけだ。64層3D NANDテクノロジーを採用したSSDは、コンシューマー向けとしては初となるそうだ。
2つのブランドで同じ製品を展開
この製品の興味深いところは、まったく同じものが2つの製品として発売される点だ。ひとつは「SanDisk Ultra 3D SSD」、もうひとつが「WD Blue 3D NAND SATA SSD」だ。ウェスタンデジタルが持つブランドは、HGST、サンディスク、WDなどがあるが、そのうちの2つで展開されることになる。
WDとサンディスク、どちらのブランドもPCシーンでは知らない人がいないくらいに著名だ。メーカー製のPCに内蔵されているものや、OEM製品を含めれば、いつかどこかで、あるいは今この瞬間も、ウェスタンデジタルの製品を使っている可能性は高い。
PCシーンにあまり興味を持たないユーザーであってもサンディスクと聞けば、SDメモリーカードの高級ブランドとして名前くらいは聞いたことがあるだろう。その一方で、WDは自作市場の中で圧倒的な知名度を誇る。
今回の製品は、写真愛好家などに訴求するイメージング用途向けがサンディスクブランド、PC DIY向けがWDブランドで展開されるそうだ。それぞれのブランドで流通チャネルも異なるため、可能性としては店頭で同じ製品が2つのブランドで並ぶようなことも期待されているという。たとえば、2TB SSDをアマゾンで検索したときに、両方のブランドの製品がリストアップされれば、目に触れる機会も高まるというわけだ。ただし、ディストリビューターが異なることから、実売価格についても異なる可能性はあるとのことで、そのあたりは8月末から9月とされる発売日以降に明らかになる。
ブランドにおけるパッケージングの意義
異なるブランドで同じ製品を提供するというのは無駄が多いようにも感じる。いわゆるSKUと呼ばれるパッケージの数は少ないほうが在庫管理も容易になり、コストを抑制することができるはずだからだ。
今回、サンディスクブランドはイメージング向けとされているが、実際の製品はSSDのベアドライブだ。SDカードでサンディスクを信頼しているカジュアルユーザーが、このドライブを購入しても、どうやって使えばいいのかにっちもさっちもいかない可能性は高い。カメラのスロットにカチッと装着するだけというわけにはいかないからだ。使っているパソコンに換装したくてもノートPCでは難しいだろうし、デスクトップパソコンでもシステムドライブの入れ替え作業は、一般のユーザーにはハードルが高すぎる。
一方、WDブランドは自作市場向けとされているが、DIYのスキルを持つユーザーは2.5インチ7ミリ厚のベアドライブではなく、M.2フォームファクタに食指が動きそうだ。もちろん同社もそれはわかっていて、WDブランドではM.2の製品も提供される。
外から見えないSSDをどう差別化していくか
個人的にはサンディスクは、さらに付加価値の高いパッケージング、WDは性能とシンプルを訴求したパッケージングの方がいいのではないかと思う。たとえば、USB Type-CでカンタンにMacbookに接続できるようなポータブルケースとのカップリング製品を用意できれば、購買層の裾野は一気に広がるはずだ。そして、その中味と同じものがパーツとしてWDブランドで手に入る的なソリューションがあればよかったのではないか。
SSDというのは画期的な製品で、換装すれば数年前のパソコンでも蘇るくらいの威力がある。外部からUSB接続するにしても、大容量と高速と回転機構のない安心感が一挙に得られる。そんなパーツの存在をより広い層に知って欲しいと思うし、サンディスクというブランドならそれができるんじゃないだろうか。
ほとんど同じものを別のブランドで売る手法は、OEM製品ではよくあることだが、クルマの業界の双子車でもよく知られている。クルマの場合は外観の違いを与えることができるのでわかりやすいが、パーツとしてのSSDは普段は隠れてしまうだけに差別化が難しい。そのあたりをどう訴求していくのか。ウェスタンデジタルがWDとサンディスクというブランドをこれからどうしていきたいのか、今、どういう状況にあるのかがなんとなく見えてくる新製品だ。業界関係者としては興味深い。
(山田祥平 http://twitter.com/syohei/ @syohei)