ソフトバンクを皮切りに、大手キャリアが相次いで廉価な大容量プランのサービスを開始した。これまでの料金に、1,000円追加するだけで使えるパケット量が4倍近くになるという、話で聞く限りは夢のようなプランだ。
■3キャリアの大容量プラン | |||
キャリア | 大容量プランの名称 | 月間通信量(個人向け) | 月額料金 |
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ソフトバンク | ギガモンスター |
20GB 30GB |
6,000円(20GB) 8,000円(30GB) |
KDDI | スーパーデジラ | ||
NTTドコモ | ウルトラパック |
若いユーザーの多くは5GB/月のプランを契約し、月末が近づくたびに、速度制限がかかり、1,000円で1GBの追加パケットを購入するかどうか迷うのだという。ガマンしきれずに買ったら買ったで次の1,000円を使わずにすむようにパケットを切り詰める。ものすごいストレスだ。特に、自宅に光インターネットなどの環境がなく、朝から晩までずっとスマートフォンにインターネット接続を頼りっぱなしであれば足りなくなるのは当たり前だ。
バイト単価はMVNOより安い
今回の施策によって、いわゆるバイト単価は格安SIMで知られるMVNO各社よりも安くなってしまった。この施策は基本的には賛成だ。モバイルインターネットのパケット料金が実質的に従量制となり、パケホーダイ神話が崩壊して久しいが、現時点でのトラフィックを考えれば、とりあえずはホーダイの復活といってもいい。もっとも、このことは、10%のヘビーユーザーのトラフィックに必要なコストを、残りの90%のカジュアルユーザーが負担するという図式の復活でもある。
5GBで足りないカジュアルユーザーが、毎月1,000~2,000円程度を多めに払うことで、20~30GBを確保しても、結局使っているパケットは10GBに満たないというようなことも起こりうるからだ。その余りを繰り越せたとしても1カ月だ。その試算がなければ、キャリアはこうしたサービスには踏み込まないだろう。
完全従量制にしない理由
30GBを8,000円で提供できるということは、1GBあたりの単価は267円だ。だったら1GBあたり300円の完全従量制にしてしまえばいい。それをしないのは、大容量プランを契約しても使い切れないユーザーを期待してのことと、設備に対する投資予測をしやすくしてキャリアにとってのコストを過不足のないものにするためだ。
それでもこの施策に乗るユーザーは少なくないだろう。少なくとも、今の契約で、ほとんど必ずといっていいほど1カ月に1,000円の追加料金を払ってきたユーザーは、こぞって乗り換えるだろう。だが、そのためには、この施策の存在を広く知らしめなければならないし、広く知ってもらって、一人でも多くのユーザーに乗り換えてもらわなければキャリアの思惑もうまくいかない。できれば、今までデータ通信量を気にしながら使うことで、ギリギリ5GBでおさまっていたユーザーが、これならストレスを感じないですむと乗り換えてくれればと思っているに違いない。そういう試算をした上での料金設定なのだろう。いかにして、そうさせるかは各社のプロモーション手腕にかかっている。
誰もがリーズナブルに思える"ワリカン"を
価格を据え置くか値下げして同じ内容のサービスを提供するのではなく、価格を少し値上げしてサービス内容を大きく向上させることは、ユーザーから見た場合、太っ腹に感じるかもしれないが、冷静になって考えてみるとどうなのか。
もちろん、個人が使うインターネットトラフィックは、まだまだ増えていくだろう。今、5GBで足りているユーザーでも、数年たてば、普通に50GBを使うようになっている可能性は高い。インターネットは壮大なワリカンだ。願わくば、ワリカンに参加する全員がリーズナブルに思えるワリカン方法を、そのころまでに編み出して欲しいと思う。
通話のカケホーダイは1日あたり24時間を超えての利用は無理だから崩壊することはない。だが、インターネットトラフィックは違う。キャリアには「いつか、あたりまえになることを。」「あたらしい自由」としてかなえ、「情報革命で人々を幸せに」してほしいものだ。それがメガキャリアの使命ではないか。
(山田祥平 http://twitter.com/syohei/ @syohei)