日本のレノボの勢いが鮮烈だ。ThinkPadでもなく、LAVIEでもないもうひとつのレノボが着実に階段を登りつつある。
先日、東京の国立新美術館で開催された「Lenovo X1 Premier Collection」では、ThinkPad X1シリーズとして、TABLET、YOGA、Carbonなどが一気に発表され、同社代表取締役の留目真伸氏はレノボが26四半期連続でシェアを伸張し、利益においても過去最高を達成していることを明らかにした。
日本でも過去最高のシェアを更新し、成績はワールドワイドと同様に好調であり、まさに、ハードウェアビジネスの基盤を確立していることを数字が物語っている。
もちろん、1992年に一号機ができたThinkPadはレノボの中でも主力製品だ。この製品は日本人の手によってエンジニアリングされて世に出され、究極のツールとしての進化をとげてきた。レノボの製品群の中でもThinkPadが特別な存在感を持って受け入れられているのはそのためだ。誤解を怖れずにいえば、ThinkPadは「レノボ製品であってレノボ製品ではない」と消費者に受け入れられている雰囲気もある。
拓ける市場はまだまだある
留目氏は、日本のものづくりの強さを今も信じていると述べるものの、ThinkPadが累計出荷台数1億台を2014年に突破しているにもかかわらず、現状には満足していないという。
留目氏は壇上で「パーソナルコンピューティングはまだまだ実現していない。パソコンは普及しているが、コンピューティングパワーが人々をサポートしている時間はまだまだ短い。これから第2章が開けていく」と宣言した。
そしてそれは、コンピューターメーカーだけでできるわけではなく、他の業界、スタートアップ、生活者とのコラボレーションが必要で、そこでの共創を目指さなければならないというのだ。そこに留目氏の狙いがある。
これからのデジタルワークは、常時、コンピューティングパワーが人をサポートするようになる。さらに、これから団塊ジュニアが両親の介護をしなければならなくなる。そのとき、オフィスでしか働けないのは問題だと留目氏。
さらに、イノベーションのためには、ひとつの企業の中だけにとどまっていてはならない。発想のタネ、ビジネスのタネは、他者とのコラボレーションの中でこそ生まれる。IoTの進化によって、そのスピードは高まる一方だ。今こそ自分自身のアップデートが必要であり、そのためのモビリティだと留目氏はいう。つまり、これから拓ける市場はまだまだあるはずだと氏は確信している。
ThinkPadのレノボからの脱却
ここのところの留目氏は、コンピュータメーカーの社長らしからぬプレゼンスを見せ続けている。ありとあらゆる業界に対してアプローチし、レノボの製品を売り込むというよりも「レノボ」という形のないブランドの認知度を上げるために、そのブランドが人々の暮らしや働き方を豊かにすることをコミットしようとしているように見える。
ThinkPadは特別でも、他のレノボ製品は違うというイメージを払拭するには、これまでリーチすることができていなかった新たな市場に対して、日本のレノボを強く印象づけることが必要だ。
若者向けにスノーゲレンデやビーチでイベントを開催するなど、その方面での活動にも熱心なレノボ。新たな市場を拓き、ThinkPadのレノボを知らなかった層にレノボを知らしめる。そのためにはなりふり構わず何でもやる。その崖っぷち感が危ないようでこれから先の世の中を見据えてもいる。
(山田祥平 http://twitter.com/syohei/ @syohei)