VAIO株式会社がWindows 10 Mobile搭載スマートフォン「VAIO Phone Biz」を発表した。4月の発売が予定され、法人に対してはドコモとダイワボウ情報システム、個人向けには直販サイトのVAIOストアをはじめ、MVNO各社のほか、一部の量販店で入手できるようになるという。
同社社長大田義実氏は、PCとしてのVAIOに付加価値を提供するためにスマホは欠かせないとし、Windows OSとともに歩み続けてきたVAIOとして、Windows 10 Mobileを採用することで、Windowsの世界を拡大するとした。
日本は、Windows 10 Mobile搭載機が8社(ACER、FREETEL、geanee、NuAns、VAIO、ドスパラ、マウスコンピューター、ヤマダ電機)ものベンダーから提供されるという世界でも希有な国になる。なかでもVAIO Phone Bizは、一般的なブランドの知名度としては真打ち登場といったところだろうか。
発表会には日本マイクロソフトから平野拓也代表執行役もゲストとして登壇、協業の喜びと法人市場盛り上がりへの期待を語った。また、ドコモの高木一裕法人ビジネス本部長(「高」の字ははしごだか)は、この6月に同社の企業向けサービス「ビジネスプラス」においてMicrosoft Intuneをラインアップすることを表明、ドコモの4バンドにフル対応し、CAもサポートするVAIO Phone Bizを自信を持っておすすめするとした。
今のWindows 10 Mobileを取り巻く状況は、NECのPC-9800シリーズパソコンが国民機として普及していた1990年代に、多くのホワイトボックスベンダーが登場した当時を彷彿とさせる。
最終的にホワイトボックスベンダーは、安いPCではなく、そこにソリューションを組み合わせることで活路を見いだしたわけだが、そんな状況で、大手ベンダーは模索の中で、差異化されたPCを高付加価値商品として提供するという道をたどった。ソニーのVAIOやパナソニックのLet's noteは、その代表的なパターンではなかっただろうか。
独自のワンモアシングも欲しかった
今回のVAIOは、あの当時とちょっと違う。もちろん、ソニーからスピンアウトしたという事情もあるが、最初から企業向けソリューションを前面に打ち出した製品訴求は、今後、同社がビジネス路線へ向かうことを示すもののように感じられる。
まだ、海のものとも山のものともわからないWindows Mobileという新参OSを、AndroidやiOSといった既存OSが猛威をふるうなかで企業向けに提案していくためには、きちんとしたソリューションをあわせて提供する必要がある。8社もの参入ベンダーがひしめく中で、他社との差別化をアピールするには、その部分が重要だということを同社はわかっている。
ただ、VAIOならではの技術的付加価値など、ハードウェア的な訴求、提案がもっとなくてもよいのだろうかという疑問も残る。発表会でアピールされた提案は、Windows 10 Mobileそのものの可能性を訴求するものばかりで、同じセリフをマウスコンピューターの発表会で繰り返されてもまったく違和感がないようなものにも感じられた。
もちろんドコモのお墨付きや、Office 365サービスでのMicrosoftとの強力なタッグは他のベンダーとは一線を画する。Windowsとともに歩み続けてきた20年はさすがだ。でも、それに加えたVAIOならではのワンモアシングが欲しかったところ。より多くのVAIO PCを売るためには、Continuumを声高にアピールしている場合ではないとも思うのだ。
(山田祥平 http://twitter.com/syohei/ @syohei)